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MAD LIFE 170

12.危険な侵入(3)

「フェザータッチオペレーション? 知ってますよ」
 洋樹の部下のひとり――立川はあっさりと答えた。
「え? 本当か?」
 洋樹は目を輝かせ、身を乗り出す。
「ええ。喫茶店のことでしょう?」
「喫茶店?」
 洋樹と中西は互いに顔を見合わせた。
「そんな名前の喫茶店があるのか?」
「ええ。〈山王〉ってご存知ですか?」
「ああ」
 洋樹が頷く。
 瞳のアパートのすぐ近くにあるビジネスホテルだ。
「〈山王〉の裏にありますよ。あんまり流行ってないみたいですけど、コーヒーは美味しいです」
「そうか……ありがとう」
 洋樹は礼を述べると、立川の前を離れた。
「あの……その喫茶店がどうかしたんですか?」
 立川が尋ねる。
「いや、コーヒーが美味しいって薦められたからさ」
 洋樹は適当にごまかして、自分の席に着いた。
 ばらばらに散らばった記憶の断片を、パズルのように組み合わせていく。
 長崎は今まで脅迫し続けてきた瞳の兄に、「フェザータッチオペレーション」といい残そうとした。
 中部警部は「フェザータッチオペレーション」がなんであるかを知っている様子だったが、それを洋樹たちに隠そうとした。
 真知という大会社の社長令嬢は、「フェザータッチオペレーション」と呼ばれる暴力団まがいの組織に尾け回されているらしい。
 彼女は丸買証券の社長の息子と政略結婚させられそうになっているのだとか。
 洋樹は息を呑んだ。
 頭の中に現れたひとつのワードが気になって仕方がない。

 (1986年1月29日執筆)

つづく

この日の1行日記はナシ


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