だるまさんがころんボ! 38
FILE.38 ルーサン警部の犯罪
TVドラマ『刑事ルーサン』の主演を務めるウォード・ファウラーは、強盗の仕業に見せかけて番組プロデューサーであるクレアを殺害する。コロンボとルーサン――二人の名刑事の推理合戦が始まるが……。
「……そしてさらに、玄人といわれる人ほど、銃の扱いに慣れているものだ。きっと、その場合にも逆上はしないだろう」
ルーサン警部になりきって、事件の真相を推理するウォード。彼の話に、熱心に聞き入るコロンボ。
「お見事です。まったく理路整然たる推理ってヤツ。これだから難事件も次々と解決なんですね。……お、いけね」
コロンボは突然、眉をひそめる。
「まずいことがありました。忘れてた」
「なにを?」
「ドレスです」
「ドレス?」
「えっと……口で説明するより、実際にお目にかけましょう」
コロンボはチョークを取ると、それをウォードに手渡す。
「お手数ですがね。心臓のあたりにひとつ、丸を描いてくれませんか」
「あ、ああ」
戸惑いながら、チョークを受け取るウォード。
「軽くお願いしますよ。コートが弱ってるもんで」
両手を上げたコロンボの背中に、いわれたとおり丸を描く。
「……それで?」
「そこで手を下ろします。丸がどうなるかおわかりでしょう? 両手を下ろすと丸も下がるんです」
「…………」
「初めてクレアさんのご遺体を見たときにね、弾のあとの位置がどうも変なことに気がついたんです。つまり、ドレスに残った弾の痕は、実際の傷より三センチも下にあったんですよ。ってことは、撃たれたときには両手を上げていたわけで。走って逃げようともしていなかったってことです。両手を上げたまま、突っ走れるわけがありませんからね」
「いや。君は知らないかもしれないが、今、巷では両手を上げて走るのが流行っているのだよ」
苦しまぎれにでまかせをいうウォード。
「へ? そうなんですか?」
「アフリカの陸上選手が編み出した走法でね、両手を頭上高く上げると、ものすごいスピードで走れるんだそうだ。どうやら、そうすることでダチョウの気持ちになれるらしい」
「確かに、両手を上げた姿はダチョウに似ていなくもありませんが……ダチョウの真似をしたくらいで速く走れるものですかねえ? それよりもあたしはこう推理します。クレアさんは裸になろうと思って、ドレスを引っ張り上げた。その直後に撃たれたんです」
「なぜ、裸に?」
「素早く逃げるためです」
ウォードは失笑を漏らす。
「意味がわからない。そりゃあ確かに、ドレスを脱いだら多少は速く走れるかもしれないが、そんなものはたかが知れている」
「いいえ。裸になれば、音速を超えることだって可能ですよ」
「どういうことだ?」
「実際に、やってみせましょうか?」
いきなり全裸になるコロンボ。
「♪マッパGO!GO! マッパGO!GO! マッパGO!GO!GO!」
大声で歌いながら、ものすごい速さでウォードの前を走り去っていく。
▼36話に続いて最新(しかし、今では時代遅れ)機器が登場。ハイテクトリックは、やはり陳腐化も早いですね。ラストの決め手も含め、ミステリ的には少々残念な出来映え。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?