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MAD LIFE 333

22.歯車は壊れた(14)

6(承前)

 洋樹はすぐに家を出た。
 友恵……友恵……友恵……
 その名前が頭の中でぐるぐると渦を巻く。

 若者はときに
 青春という「日記」にむかい
 ひとり死を語ってみたりする
 ある者は
 まっ白なページにおとした
 ひとつの汚点(しみ)に苦しみ
 ある者は
 永遠にその純白を汚すまいとして

 五階建てのマンションの前で立ち止まり、上を見る。
 屋上には高いフェンスが張り巡らされていた。
 まさか……
 いや、俊に限ってそんなことあるわけない。
 しかし、もしかしたら……
 洋樹は動揺していた。
「俊!」
 激しい胸騒ぎを感じ、建物の中へ飛び込む。
 その直後、背後に人の気配を感じた。
 振り返ると、そこには瞳が立っていた。
「……瞳」
「おじさん……私……私ね……」
 瞳は洋樹を見据え、なにかを訴えようとしていたが、しかしそれ以上、言葉が出てこないらしい。
「おい……どうした?」
「私……死にたい……」
 彼女はひとことそう口にすると、マンションの階段を駆け上り始めた。

 (1986年7月11日執筆)

つづく

1行日記
明日は水泳の試合だよーん。

途中に出てくる詩は僕のオリジナルではありません。誰の作ったものなのか、検索してみましたがわかりませんでした💦 どなたか教えていただければ。


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