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だるまさんがころんボ! 09

FILE.9 パイルD-3の壁

 事業計画の中止を迫り、建築家マーカムと激しく対立していた事業家ウィリアムソンが行方不明となった。彼はすでに殺されているのではないかと睨んだコロンボは、容疑者マーカムが講義を行なう大学へと赴く……。

「ホントなんですか? ピラミッドの設計者まで埋められたっていうのは」
 講義の内容について、壇上のマーカムに尋ねるコロンボ。
「ええ。資料も残ってます」
 机の上に散らかった資料をかたづけながら、ぶっきらぼうに答えるマーカム。
「そうですか。面白いなあ。とくにあたしのような仕事をしているものには」
「どうして?」
「ピラミッドの下なら、ものの隠し場所としては最高でしょう? 同じ手口を犯罪に使われたら、まずお手上げですな」
 しゃべりながら、コロンボはマーカムに近づいていく。
「ピラミッドの中には、そう簡単には入れないよ」
「ピラミッドとは限りませんよ。似たような場所は、ほかにもあるでしょう? なんていうのかなあ。ビルディングの……」
「ビルの底──つまり、基礎工事かな?」
「それそれ。なんでも隠すにはうってつけじゃないですか。大きなビルの下に埋め込んでしまえば、百年経っても見つからんでしょう。いや、そうでもないのかな。死者の怨念ってヤツは、すさまじいエネルギーを持ってますからねえ。たとえパイルの中へ埋め込まれても、誰かに自分の遺体を見つけてもらいたいと願って、必死の思いで這いずり出してくるかもしれません」
「まさか。君は、そんな非科学的な話を信じているのかい?」
「しかし、これは本当にあった事件なんですよ。妻の遺体を地中深くへ埋めた男が、一年ぶりに現場へ戻ってきたところ、そこには五十階建てのビルができあがっていたんだそうです。これなら、絶対に遺体が見つかることはない。安心した男は最上階のレストランで祝杯をあげようと、エレベーターに乗り込みました。『上へまいります』──綺麗なエレベーターガールの案内で、男は最上階へ向かいました。しかし、最上階まであと少しというところで、突然エレベーターが停まってしまったんです」
 おどろおどろしい口調でコロンボは続ける。
「『一体、どうしたんだ?』と尋ねると、エレベーターガールは『下へまいります』と無表情のまま答えました。その途端、エレベーターは動き出し、今度はなぜか急降下を始めたんです。『どうして下へ行くんだ? 俺は最上階へ行きたいんだぞ』といっても、エレベーターガールは『下へまいります』と繰り返すばかり。しかも、そのビルは地下二階までしかないのに、地下三階、地下四階と、どこまでも下っていくんですよ」
 ごくりと生唾を呑み込むマーカム。
「それで、どうなった?」
「地下七階で、ようやくエレベーターは停まりました。そこはちょうど、男が遺体を埋めたあたりだったんですね。ドアが開くと、遠くのほうに殺したはずの妻が立っていました。足をひきずりながら、ゆっくりとこちらへ近づいてくるんです。『うわあああああっ!』恐怖におののく男に向かって、エレベーターガールがひとこと呟きました。──『死体まいります』」
「怪談話と思ったら、単なる駄洒落オチかよ!」

▼マーカムに頼まれて、黒板消しの手伝いをするコロンボ。話に夢中なのはわかるけど、もうちょっときちんと消しましょう。こういったずぼらな一面を見ていると、ついつい「名探偵モンク」と比較したくなっちゃいますね。
▼元妻と現妻の確執を見て、ついワクワクしちゃう僕は、昼ドラとか女性週刊誌のゴシップ記事が大好きです。

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