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だるまさんがころんボ! 05

FILE.5 ホリスター将軍のコレクション

 退役軍人であるホリスター将軍は、横領の発覚を恐れるがあまり、ダットン大佐を殺害してしまう。事件を目撃したヘレンの証言から、将軍に疑いを抱いたコロンボは、彼の船に同乗させてもらうのだが……。

「閣下、そろそろ引き上げていただけないでしょうか?」
 すっかり船酔いしてしまったコロンボ。息も絶え絶えに、将軍に頼み込む。
「ああ、そうしてもいいな。これだけ走れば、テストとしても充分だ」
 船を港へ向ける将軍。
「しかし、わからんな。コロンボといえば、コロンブスの子孫じゃないのか? これしきで酔うとは、だらしがないぞ」
「……きっと劣性遺伝なんでしょう」
 コロンボは苦しそうに答える。
「うちの家系は、劣性遺伝を受け継ぐ奴がやたらと多いんです。たとえば、あたしの二番目の兄貴。ずいぶんと強欲な人間でしてね、ほしいものはなんでも手に入れないと気がすまないタチなんです」
「よいではないか。男なら、それくらいの野心を持つべきだ」
「いいえ。手に入れたいものっていうのが、実にくだらないものばかりでして。たとえば、モーニング娘。がコンサートで身につけていた衣装──」
「おお、素晴らしい!」
「最後まで聞いてください。モーニング娘。がコンサートで身につけていた衣装……を盗もうとしたおたく青年の眼鏡をコレクションして喜んでいるんです」
「なんだかわけがわからんな」
「でしょう? ところで、閣下はモーニング娘。のファンですか?」
「いや、どちらかといえば、優香や深田恭子のほうが好きだ。ほかには山瀬まみ、榊原郁恵、和田アキ子……」
「ホリプロのタレントばかりですね」
「ホリプロのスターが大のお気に入りなんだ。なぜなら、私は──」
「ああ、説明しなくて結構です。あなたの硬派なイメージが、どんどんと崩れていってしまいますから」
「ところで、劣性遺伝の話はどうなった?」
「すみません。忘れるところでした。そんなわけで、あたしの兄貴ってのは、とにかく人一倍強欲な男なんですが、なぜかその息子は、とても禁欲的なんです。父親とはまるで正反対」
「よいことではないか。しかし、それが劣性遺伝とどういう関係がある? 父親は強欲なんだから、劣性遺伝はなんの関係もないだろう?」
 将軍の問いに、コロンボは頭を掻きながら答えた。
「ああ、すみません。間違えました。強欲な兄貴の中に、ほんの少しだけ存在した節制の心が、甥にすべて遺伝したんでしょうな。これは劣性遺伝というより、節制遺伝ですね

▼物語はそれなりに面白いのだけれど、コロンボが犯人を追いつめる手がかりが、ほとんど皆無に等しく、最後の決め手もあまりに唐突すぎるため、個人的なミステリ的評価はかなり低い作品。
▼「コロンボ」といえば、16世紀イタリアの解剖学者マテオ・レアルド・コロンボが有名。もしかしたら、コロンボはこの人の子孫なのかも? ちなみに、丸山才一氏のエッセイ集『絵具屋の女房』収録の「あのボタン」によると、マテオさんはクリトリスを発見した人でもあるらしい。
▼素朴な疑問。将軍が、「ほら、ここからだと窓が光ってしまって、部屋の中なんてなにも見えないだろう?」と、ヘレンを洗脳するシーン。どうしてあのときだけ、窓が光って見えたんでしょう?

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