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MAD LIFE 362

24.それぞれの行動(13)

6(承前)

「さあ、我々も行くぞ」
 中部と富岡、そして浩次は乗用車に乗り込むと、徹の車のあとを追いかけた。
 小崎邸の前に残ったのは洋樹、中西、江里子、そして瞳の四人。
「俺たちもついていきましょう」
 中西がひどくそわそわした様子でいう。
「やめておけ。俺たちになにができる? 警察の邪魔になるだけだ」
 洋樹はそう口にした。
「そんなことありませんよ!」
 中西はムキになって叫ぶ。
「誘拐犯なんて俺がやっつけてやりますよ! ああ……真知にもしものことがあったら……」
 頭を抱え、その場にうずくまる。
「真知……真知……」
 明らかに様子のおかしい中西を、洋樹は呆然と見下ろした。
「おまえ……まさか社長の娘のことを?」 
「そうです! 好きですよ。俺は真知を愛しています!」
 中西はそう叫んだあと、はっとした表情で瞳のほうを向いた。
 瞳はじっと中西を見つめたまま黙り込んでいる。
「瞳……すまない。俺は自分の中に蓄積された鬱憤を解消するために君と付き合っていたんだ……」
「中西!」
 彼の無神経な発言に、洋樹は声をあげた。
「おまえ……なんてことを」
「いいえ、いわせてください」
 中西は瞳を見据え、さらに続けた。
「俺にとっていつまでも大きかった母親の存在。マザコンの自分がイヤでイヤで仕方なかった。母親の呪縛から逃れたいと俺は焦っていたんだ。だから俺は……君と付き合い始めた」

  (1986年8月9日執筆)

つづく

1行日記
書き遅れましたが学校対抗試合、200背3位、100背2位でした。

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