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KUROKEN's Short Story 21

国語の教科書に載っていた星新一の「おーい でてこーい」にいたく感動した中学生のころ。ちょうど〈ショートショートランド〉という雑誌が発刊されたことも重なって、当時の僕はショートショートばかり読みあさっていました。ついには自分でも書きたくなり、高校時代から大学時代にかけて、ノートに書き殴った物語は100編以上。しょせん子供の落書きなので、とても人様に見せられるようなシロモノではないのですが、このまま埋もれさせるのももったいなく思い、なんとかギリギリ小説として成り立っている作品を不定期で(毎日読むのはさすがにつらいと思うので)ご紹介させていただきます。
※中学生のときに書いた作品をいくつか発見しましたので、本日はそちらをご紹介。そのままではまともに読めないシロモノなので、文章にちょっとだけ手を加えております。

地球最期の日

 男はため息をついた。
 地球へ近づくにつれて、ますます平常心を保てなくなってきている。
 男は八年前、たったひとりきりで地球を飛び立ち、大マゼラン雲での調査を終えて、今ようやく太陽系内へ戻ってきたところだった。
 居ても立ってもいられないのは、家族との再会を待ち焦がれていたからではない。
 不安ばかりが募った。
 地球からの音信が途絶えて半年以上。
 まさか……。
 頭に浮かんだ最悪の光景を、男は懸命に追い払った。

 男を乗せた宇宙船は月をかすめるように前進した。
 操縦室のレーダーは地球までの距離が三十八万キロであることを示している。
 しかし、目の前に〈青い地球〉は見当たらなかった。
 どこまでも暗黒の空間が広がっている。
「はは……嘘だろ?」
 男は無表情のまま笑い、その場にがっくりと跪いた。
「地球はどこだ? どうなっちまったんだ?」
 発狂しそうになるのを必死でこらえ、男は思考を巡らせた。
「宇宙人の襲来か? 敵はどこだ? 畜生。絶対に許さないぞ。心配するな、かたきはとってやる。にっくき宇宙人め。俺がひとり残らずやっつけてやる!」
 男は操縦席に座ると、戦闘用ミサイルのボタンを連打した。
 惑星を一気に吹き飛ばすくらいの威力を持つ強力な兵器だ。宇宙人の殲滅などたやすいことだった。
 前方にまぶしい閃光が走る。
 地球があったはずの空間で、なにかが爆発して粉々に砕け散った。
 それが電波さえも跳ね返してしまう真っ黒な汚染物質に包まれた地球だとわかるまでに、たいした時間はかからなかった。
「あは……あはは……」
 男は笑いながら髪をかきむしる。
 そして、ついに発狂した。

(1982年10月執筆)

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