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MAD LIFE 043

3.危険の海へと飛び込んだ!(15)

6(承前)

 倉庫の扉のすぐそばで息をひそめていた洋樹は、扉が開いて長崎が入ってきたことを確認するとすぐに腹を殴り、前のめりに倒れた彼の頬にナイフを押し当てた。
 酒くさい。
 相当、酔っぱらっているようだ。
 こんな奴に負ける気はしなかった。
 倒れた拍子に、長崎の胸ポケットから鍵の束がこぼれ落ちる。
 洋樹はそれを素早く拾い上げ、瞳に放り投げた。
「すぐに美和さんを助けにいけ!」
 瞳は強く頷くと中西と共に倉庫から出ていった。
「うう……」
 苦しそうに唸った長崎の頬を殴る。
「恐喝なんてのはなあ、人間のクズがやることだ」
 彼に向かってそう吐き捨てた。
 ナイフを持つ手に力がこもる。
 少女の平和を脅かす悪魔め!
 このままこいつを殺してやろうかと、洋樹は本気で思った。

 中央の倉庫の重たい扉を開く。
「母さん!」
 中西は壁のスイッチを押して照明を点けると、美和の元へ駆け寄った。
「大丈夫? 怪我はない?」
 美和の手首に巻かれた縄をほどきながら、美和の様子を確認する。
 多少やつれてはいるものの、顔色はさほど悪くない。
「望。おまえこそよく無事で」
 美和は立ち上がると、中西に抱きついた。
「母さん、歩ける?」
「ああ。大丈夫」
「急ぎましょう」
 瞳はふたりを急かした。
 寄り添って歩く彼らの姿に、なぜか胸が痛くなる。
 今もまだ両親が元気だったら、私もこんなふうに支え合うことができたのだろうか?
 三人が倉庫を出たタイミングで、いきなり爆音が轟いた。
「まさか銃声?」
 中西が目を見開く。
 その音は隣の倉庫から聞こえたような気がした。
「おじさん!」
 洋樹がいるはずの倉庫に向かって走ろうとしたところで、
「長崎さん。今の銃声はなんです?」
 小屋から三つの人影が飛び出してきた。
「まずい! 伏せろ!」
 中西が瞳の頭を押さえる。
 だが、少し遅かったようだ。
「あ、おまえら!」
 人影がこちらを向いた。

「今のは脅しだ。次はおまえの胸に大きな穴が空くぞ」
 長崎は洋樹に銃口を向け、にやりと笑った。

(1985年9月24日執筆)

つづく

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