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だるまさんがころんボ! 06

FILE.6 二枚のドガの絵

 叔父を殺した美術評論家のデイルは、彼のコレクションの中から二枚のドガの絵を盗み出し、それを共犯者トレーシーに預ける。数日後、トレーシーを殺害し、ようやく絵を回収したデイルだが、自宅へ戻ると、そこにはコロンボが……。

「あ、それ、掘り出しものですか?」
 デイルの持ち帰った紙袋を指差して尋ねるコロンボ。
「いやあ、たいしたものじゃありません。友人から鑑定を頼まれたくだらん水彩画ですよ」
「水彩画?」
「ええ」
「今、水彩画を見てたとこなんですよ。マチスの」
 テーブルの上に放り出された美術書を指し示し、顔をほころばせる。
「素晴らしい。ぜひ、あなたの批評をお聞きしたいですなあ。ちょっとでいいから見せてもらえませんか?」
 デイルの持っていた紙袋に、右手を差し込むコロンボを、
「警部、いい加減にしてもらえませんか」
 デイルは怒鳴りつけた。紙袋の中身は、叔父の屋敷から持ち出した二枚のドガの絵だ。絶対に見られるわけにはいかない。
「……疲れているんですよ」
 デイルは平静を保とうと必死になりながら、コロンボに言い訳する。
「今夜はしゃべる気力もないんだ。またにしてください」
「ああ、どうも失礼しました。少し美術の本を読んだものだから、急にいろんな絵を見たくなってしまって……」
「僕も怒鳴ってすみませんでした。わかってくださればいいんです」
「……でも、ちょっとだけ見せてくれません?」
「しつこいな、あんたも」
「なんか怪しいんですよねえ。もしかしたら、その紙袋の中身は……」
 コロンボの鋭い視線に、デイルの心音は高まる。
「紙袋の中身は……ブルセラショップで購入したセーラー服だったりするんじゃありませんか?」
「そうそう──そうなんです。いやあ、私の趣味がばれると恥ずかしいんで、ついムキになっちゃって、どうもすみません」
 紙袋の中からセーラー服を取り出すデイル。
「ボケたつもりだったのに、ホントに持ってたんだ……」
「夜中に鏡の前でセーラー服を着て、うっとりするのが私の趣味なんですよ。いやあ、一度やるとクセになりますよ。警部もどうですか?」
 セーラー服を身につけると、デイルはくねくねと腰を動かし始めた。
「紙袋の中にはほかにもなにか入ってるみたいですけど……おや、これは素晴らしい絵画だ」
「だから、勝手に見るなといってるだろうが! いうこと聞かないと、ぶち殺すぞ!」
 デイルは戸棚から機関銃を取り出すと、セーラー服姿のまま、あたりかまわず乱射した。
 呆然とするコロンボに向かって、ひとこと呟くデイル。
絵画だけに、カイガ……ン

▼本作は、新・旧コロンボひっくるめて、もっとも僕の気に入っている作品。驚愕のラストシーンに向けて、複数のエピソードが集結していく様は、実に美しい。
▼大好きな作品なのに、こんな醜悪な物語に改変してしまって、どうもすみません(激しく反省)。いまさら説明する必要もないと思うけど、薬師丸ひろ子主演「セーラー服と機関銃」のパロディです。

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