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だるまさんがころんボ! 17

FILE.17 二つの顔

 歳の離れた女性との結婚を目前に控えた老富豪クリフォード。しかし、甥のデクスターがお祝いに立ち寄った直後、彼は遺体となって発見される。捜査にやって来たコロンボは、デクスターが怪しいと睨むのだが……。

「窓もドアも異常ありませんね。細工したり、いじった形跡は見られません。しかし、ペックさんの部屋の窓の外に足跡がありました」
 捜査の結果をコロンボに報告するマーレイ刑事。
「あたし、テレビを見ていたんで、なんにも気づきませんでした」
 家政婦のペックは不安そうな面持ちで答える。
「警部。その足跡なんですが、裸足なんです。しかも、それが扁平足なんですよ」
「警官には扁平足が多いと誰かがいってたが……」
 マーレイ刑事の報告に、反論するデクスター。
「いやあ、そりゃ、伝説。扁平足の刑事なんて見たことないですよ」
 靴を脱ぎ、足の裏を見せながらコロンボはいう。
「たとえばあたしだが、いい曲線でしてね。医者は特別製だっていってますよ。あなたも脱いでごらんなさい。あたしのと較べてみたら納得がいきますよ。さあさあ、ご遠慮なく」
 そうやって皆の足を調べるつもりなのだと悟ったデクスターは、コロンボに近づき、
「コロンボさん、手数を省いてあげましょうか?」
 と囁きかける。
「なんです?」
「僕は扁平足だ」
「本当ですか?」
「大真面目だ」
 笑いながら答えるデクスター。
 と、そこへ新たな人物が現れる。
「コロンボさん。こちら、兄のノーマンです」
 デクスターとうり二つの容姿を持つノーマンに、驚きを隠しきれないコロンボ。
「我々は一卵性双生児でね。兄のノーマンも扁平足なんだ」
「警部! 新たな手がかりを見つけました」
 再び、マーレイ刑事が報告を始める。
「窓の外で見つかった足跡ですが、重度の水虫であることがわかりました」
「ほお。そりゃ、大きな手がかりだ」
「それだけじゃ犯人を特定することはできないな。僕も兄も、水虫で悩んでいる」
 ぼりぼりと足を掻きながら答えるデクスター。
「それから、ものすごくくさい足であることもわかりました」
「お二人さん。失礼ですが、ちょっとにおいを嗅がせてもらいますよ」
 コロンボはその場にひざまずき、デクスターとノーマンの足を嗅ぐ。
「ぐあっ! く、くっさああああっ!」
 強烈な悪臭に、鼻を押さえてのたうち回るコロンボ。
「一体、なにをどうすれば、こんなにもくさくなるんですか?」
「足だけじゃないよ。僕たちは口臭もわきがも殺人的なにおいだ」
「どうして?」
「一卵性双生児だからだよ」
 にっこりと笑って続けるデクスター。
「昔からいうだろう? 『くさいものにはふたご』って」

▼コロンボにおける絶対的なルールが破られた記念すべき最初の作品。じりじりと犯人を追いつめていくいつものスリル感は味わえませんでしたが、犯人を指し示す手がかりが実にわかりやすいところに転がっており、真相を知ったときは、「ああ、そうか!」とギリギリ歯ぎしりすることしきり。
▼一人二役に挑んで、見事に成功している犯人役も素晴らしいけど、一番の名優はやはりお手伝いのオバチャンでしょう。最初から最後までいい味出してます。シリーズ中の名脇役ナンバーワンかも。

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