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だるまさんがころんボ! 39

FILE.39 黄金のバックル

 美術館館長のルース・リットンは、警備員ミルトンと弟エドワードを銃殺。おたがいに撃ち合って死んだように見せかけるため、現場を偽装する。殺害現場へやって来たコロンボと話をするうちに陽が暮れて……。

「もう出ましょうか。暗くなってきましたわ」
 薄暗くなった館内を見渡しながら、そう提案するルース。
「そうしますか。お宅までお送りしましょう」
 部屋から出ようとしたコロンボは、そこではたと足を止める。
「あ、これだ」
「なんですの?」
「今、おっしゃったでしょう? 暗くなってきたって」
「もう七時近くですもの」
「それですよ。八時にはとっぷり暮れて真っ暗だ。だからゆうべ、あれが起きたときも暗かったはずです」
「もちろんですわ」
「あたしが来るまで、現場には全然手をつけてなかったんですよ。そっくりそのままになってたんです。ね、おかしいでしょう? よごさんすか? あたしの部下はあたしの言いつけを守って、スイッチにも手をつけず、真っ暗なままの部屋にいました。つまり、ゆうべも明かりは消えていたはずなんです。でも、二人の男がですよ、真っ暗な中で一発ずつ撃ち合って殺すなんて、まずできるわけがありません」
「…………」
「明かりのスイッチはどこです?」
「こっちですわ」
 動揺を隠しつつ、照明をつけるルース。
「それそれ。そんなふうにやったんですよ」
「誰が?」
「弟さんたちを殺した人物です」
「お話が飛躍しすぎててよくわかりませんわ。二人のどちらかがつけたんじゃありません?」
「つけるのはね。でも、二人とも死んでしまったあと、誰が消したんでしょう?」
「……もったいないオバケじゃないかしら?」
「はあ?」
「ご覧のとおり、この美術館には古いものが数多く陳列されていますわ。奇妙なものが紛れ込んでいても不思議はありません」
「二人が死んだあと、古い美術品にとり憑いたもったいないオバケが、照明を消したというんですか?」
「ええ。だって、死人しかいない部屋の明かりをつけっ放しにしておくなんてもったいないでしょう? エネルギーの無駄遣いですから」
「…………」
「あら。私の言葉を疑ってるんですか?」
「いや、いきなりもったいないオバケといわれても、にわかには信じ難くて……」
「これまでにも何度か出没したことがあったんですよ。あそこに聖徳太子の肖像画が飾ってあるでしょう? 見回りにやって来たガードマンが、あの絵が宙にぷかぷか浮いている様子を目撃しているんです。おそらく、もったいないオバケの仕業でしょうね。聖徳太子の肖像画を抱えていたのが、浮いているように見えたんだと思います」
「よくわかりませんなあ。もったいないオバケがどうして、聖徳太子の肖像画を抱えたりするんです?」
「省エネに聖徳太子は効果的ですから」
「はあ?」
「あら、ご存知ありませんの? クラーク博士もおっしゃってるでしょう。『省エネよ、太子を抱け!』って」

▼ドラマ重視のラストシーンはかなりのお気に入り。しかし、この邦題はどうにかならなかったのかなあ。

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