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だるまさんがころんボ! 02

FILE.2 死者の身代金

 女性弁護士レスリーは、殺害した夫を誘拐されたように偽装し、自らは悲劇のヒロインを演じる。身代金の入ったバッグを、空のものとすり替え、まんまと誘拐犯に持ち去られたように見せかけるのだが……。

「今度の事件でも、大いに気になることがあるんです」
 レスリーのオフィスに現れたコロンボは、しかめっ面のまましゃべり始める。
「こまかいことですが……」
「たとえば?」
「まず、第一にバッグ」
「どっちの?」
 自宅に隠したバッグのことが気にかかるレスリーは、ついうっかりそんな言葉を口にしてしまった。
「ほら、飛行機から落としたでしょう? 身代金を入れて」
 意外そうな表情で、レスリーを見るコロンボ。
「あなた、どっちっていいました?」
「いいえ。いわなかったわ」
「そうでしたか? そう思ったんですがね」
「どっち? じゃなくて、グッチ? って訊いたのよ」
 慌ててごまかすレスリー。
「グッチ?」
「そう、グッチ」
「裕三? あたし、ダイヤとジャーニーの人形、持ってますよ」
「誰がハッチポッチステーションの話なんかしてるのよ。そうじゃなくて、あたしはグッチのバッグかって訊いてるの」
「ほお。グッチのバッグをお持ちですか」
「ほかにも、ルイ・ヴィトン、シャネル、クリスチャン・ディオール。なんでも持ってるわ」
「そりゃ、すごい。いや、私の姪がね、『エルメスの鞄を買ったから見に来てくれ』としつこくいうもんで、カミさんと一緒に出かけたんですけど、行ってみてびっくり。全身に疱疹のできたカバが、庭のプールで泳いでるじゃありませんか。エルメスの鞄を買ったんじゃなくて、ヘルペスのカバを飼ってたんですよ。いやあ、あのときはホント驚きましたねえ。おかしいと思ったんです。貧乏な姪に、ブランドものなんて買えるわけがないんですから」
「カバを飼ってることのほうが、なにげにすごいと思うけど……」
 レスリーの呆れ顔に気づく様子もなく、
「いやあ、それにしても奥さん、バッグをたくさんお持ちなんですねえ」
 淡々と話を続けるコロンボ。
「ええ。あまりにもたくさんありすぎて、置き場に困っています」
「だったら、そんなにも買わなきゃいいのに」
「仕方がないんです。鞄にはまったく興味なんてないんですけど、仕事の都合で、どんどんと増えてしまって……」
「仕事の都合? そりゃまた、どうして?」
 コロンボの質問に、レスリーはにっこり笑って答えた。
出世するためには、強力なバックがたくさん必要ですからね

▼パイロット版として製作されたシリーズ2作目。
▼加工されたへんてこな映像が、なかなかいい味出してます。崖下に放り投げた遺体を見つめるレスリーの瞳が、車のヘッドライトと重なってピカリと光るシーンは、さすがに笑っちゃったけど。
▼高所恐怖症のくせに、無免許で飛行機を運転しちゃうコロンボ。すごいなあ。
▼娘のマーガレット。かなり短気で、ちょっと怖いです。継母だけに辛辣なのかと思ったら、コロンボまで殴ろうとしてたもんなあ。だからあんまり、彼女に同情できなかったような……。もう少し、娘が可愛らしく描かれていれば、ラストの印象もかなり変わったかも。

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