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1996ベストミステリを語る 03

やっぱり京極?(96 12/2)

「じゃ、次のアンケートメールを見てみましょう。Mさんからのお手紙。よく励ましのメールくれる方なんです。どもありがとね」
「ベストに『姑獲鳥の夏』を挙げているわね。どーでもいいことなんだけど、あたし、今の今まで『うぶめ』って『姑獲烏』だと思ってたわ。鳥じゃなくて烏ね。どうしてかしら」
「あ、そういえば、鳥口君のことも烏口君だとばっかり思っていたし。わはは。おそらく昔の雑感文では『姑獲烏』『烏口君』って書いていると思う。お恥ずかしい」
「京極さんって文中に難しい感じがいっぱい出てくるじゃない。だから読むときにかまえちゃうんでしょうね。『鳥』じゃ漢字が優しすぎるから、きっと『烏』なんだろうと勝手にそう思ったんだじゃないかしら」
「実際には『烏』の方が横線一本少ないから、簡単な字なんだけどね」
「京極作品を読んでいると、漢字の読みに強くなるわよねぇ。ま、実際に役立つことはおそらくないと思うけど……。でも慣れるまでが大変。兎に角なんて、いまだに『うさぎにつの』って読んでるし(笑)」
「ちょっと脱線しました。……Mさんのアンケートに話を戻すよ。ってわけでMさんのコメントです。『「うぶめ・・・」はつい最近読んだのでベストに挙げましたが、宮部みゆきの「スナーク狩り」もおもしろかったです』とのこと」
「ああ、『スナーク狩り』もいいわねぇ」
「姫の話はまた後日。で、あらためて『姑獲鳥』を本棚から引っぱり出してみたけど、今見ると、すんげぇ薄い本でやんの(笑)」
「今、これくらいの厚さの本ならいっぱい出てるもんねぇ」
「ま、そんなわけで、今年、京極さんは『鉄鼠の檻』と『絡新婦の理』の二作を出しているわけですが、相変わらずというか、ますます人気が上昇してますよね」
「どこからの書店の売り上げベストではあの『猿岩石日記』を抜いて堂々の一位だったわよ」
「アンケートで『絡新婦の理』をベストに挙げた人も何人かいましたよ。TYさんやYさん。とくにYさんは長いコメントを寄せてくれています。『今年のベストミステリと言うことで,「家族狩り」と,どちらにしようかと迷いました。サスペンスと迫力というと,「家族狩り」のほうなのでしょうが,「絡新婦の理」の,緻密であって,いままでにないテンポの良さ(関口が出てこないせいでしょうか?)を勘案すると,やっぱりこっちかな,という結論になりました。「パワーオフ」も捨てがたいかな,と思いますが,「家族狩り」も「パワーオフ」も,どうも最後のところで腰砕け(?)のような感じがしないでもなく,その点,「絡新婦の理」のほうが,結末を冒頭に持ってくることで,最後の締めがうまくいっているように思います』とのこと」
「うんうん、『絡新婦』でラストまで読んだあと、思わず前に戻った人はたくさんいたはず。あたしも読み返しちゃった」
「あのね、僕、京極さんの作品って、世間が騒ぐほどにのめり込めないんだけど、でも『絡新婦の理』は確かに、これまで読んだ京極作品の中では一番面白かったと思ってます。まだ未読もあるから、今の時点では京極ベスト1ね」
「なんか噂によると、次回作は関口君がキーポイントとなるらしいわね。今回、関口君が事件に関わらなかったのは次作への布石なのかもしれないって」
「期待しましょう」
「ところで京極さんって、GLAYのボーカルにそっくりだと思わない? 思いっきり女装させてみたくなる顔よねぇ」
「あの……私も昔、京極に似ていると言われたことがあるんですが……」
「あんたは大和田獏よ」

解説

~姑獲鳥の夏~
 「姑獲鳥の夏」(京極夏彦*講談社ノベルス)
 京極夏彦デビュー作。妊娠二十ヶ月の女性という冒頭からぶっ飛んだ謎が登場する。今、思い返すと、やっぱりすごいミステリ小説だったような気がするなぁ。

~スナーク狩り~
 「スナーク狩り」(宮部みゆき*光文社)
 ドキドキハラハラの一昼夜を描いたサスペンス。ラストシーンなどは、映画でも見ているように迫力あったなぁ。

~鉄鼠の檻~
 「鉄鼠の檻」(京極夏彦*講談社ノベルス)
 坊さんがいっぱい殺される話らしい(そんな大雑把な(笑))。実はまだ未読。

~絡新婦の理~
 「絡新婦の理」(京極夏彦*講談社ノベルス)
 連続目潰し魔と切り裂き魔を操る蜘蛛の正体とは? 京極キャラ全員集合! って感じの豪華ミステリ。女子高生も出てきてウハウハ。

~家族狩り~
 「家族狩り」(天童荒太*新潮社)
 結構スプラッタ。でも深いテーマが流れていて、読み応えあり。怖いぞ、怖いぞ。子持ちの人はなおさら怖いぞ。

~パワー・オフ~
 「パワー・オフ」(井上夢人*集英社)
 コンピューターウィルスが人間を襲う? リアリティーばっちりのSFミステリ。


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