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KUROKEN's Short Story 27

国語の教科書に載っていた星新一の「おーい でてこーい」にいたく感動した中学生のころ。ちょうど〈ショートショートランド〉という雑誌が発刊されたことも重なって、当時の僕はショートショートばかり読みあさっていました。ついには自分でも書きたくなり、高校時代から大学時代にかけて、ノートに書き殴った物語は100編以上。しょせん子供の落書きなので、とても人様に見せられるようなシロモノではないのですが、このまま埋もれさせるのももったいなく思い、なんとかギリギリ小説として成り立っている作品を不定期で(毎日読むのはさすがにつらいと思うので)ご紹介させていただきます。
※中学生のときに書いた作品をいくつか発見しましたので、本日はそちらをご紹介。そのままではまともに読めないシロモノなので、文章にちょっとだけ手を加えております。

外的宇宙

 吉田さん、おはようございます。あら、ずいぶんと咳きこまれて……どうされました? 風邪ですか? 今、流行ってますからねえ。お大事になさってください。

 緊急連絡。
 大型宇宙船〈ミノタウロス号〉がシリウスα星付近で小惑星と衝突し、動力装置破損。操縦不能となり現在、漂流中。
 至急、助けを求む。

 俺は目を覚ました。
 身体を起こし、あたりを見回す。
 なにも存在しない真っ白な空間がどこまでも広がっていた。
 ここは……どこだ?
 ズキズキと痛む頭を押さえ、必死で記憶を探る。
 そうだ……俺はアンドロメダ星雲からの帰還途中、ブラックホールへ吸いこまれてしまったのだ。宇宙船は重力に耐え切れず木っ端微塵となり、俺は船外へ放り出されて……。
 え? ということは……。
 俺は顔を上げた。
 まさか、俺はブラックホールを通り抜けたのか?

 西暦五✕✕✕年。
 宇宙を探索し尽くした人類が、次に興味を抱いたのは宇宙の外側だった。
 各国の科学者が研究を続けた結果、驚くべき事実が判明した。
 ブラックホールは宇宙の内側と外側を繋ぐパイプのようなものであり、ブラックホールを通過すれば、宇宙の外に到達できることがわかったのだ。
 人類はブラックホール内へ探索船を次々と送りこんだが、想像を絶する重力に耐え切れず、どの船も爆発。いまだブラックホールの向こう側にたどり着けた者はいなかった。
 最新のコンピューターが計算したところによると、〈ブラックホールを通過できる確率は三千二百那由他分の一〉ということだった。

 どうやら、三千二百那由他分の一という奇跡のような確率で、俺はブラックホールを通り抜けてしまったらしい。
 つまり俺は、宇宙の外へたどり着いた最初の人類というわけだ。
 興奮しながら、胸ポケットに入っていたハンディーコンピューターを取り出す。
「コンピューター、至急この世界を分析してくれ。座標軸は? 地球との通信は可能か? ここは安全なのか? 宇宙服を脱いでも大丈夫か? 俺は立っている? それとも宙に浮かんでいるのか?」
〈でーたガ不足シテイテワカリマセン。タダ、巨大な生命体ガアチラコチラ二存在シテイルコトハ確実デス〉
「……巨大な生命体?」
〈至近距離二存在スル生命体ヲすきゃんシマシタ。62.4パーセントのコスモ物質、12.5パーセントのブラック化合体、4.7パーセントのドグマストーン……私二いんぷっとサレタでーたト照合シタ結果、コノ生命体二最モ近イ存在ハ宇宙ダト判明シマシタ〉
「宇宙? 宇宙が生き物だというのか?」
〈ソウデス。ココハ宇宙ノ生息スル世界……〉
「だが、なにも見えないぞ」
〈原子ノ大キサガ、我々ノ世界トハアマリニモ異ナッテイルタメ、認識デキナイノデショウ〉
「だとしたら、俺の通り抜けたブラックホールはなんだったんだ?」
〈宇宙の呼吸器官デハナイカト推測サレマス〉
「にわかには信じがたいな。おまえのいうことが本当だとしたら、宇宙の中で生活している俺たちはなんなんだ?」
〈宇宙ヲ蝕ムうぃるすノヨウナ存在ナノデハナイカト〉

 漂流を続けていた大型宇宙船〈ミノタウロス号〉は、操縦不能のまま超巨星に激突した。
 宇宙船は爆発し、真っ赤な超巨星はどくどくと不気味な音を立てながら、赤い液体をあたりにまき散らした。

 吉田さんの旦那さん、お亡くなりになったそうよ。今朝は少し咳きこんでいたくらいで、全然元気そうだったのに。いきなり心臓の血管が破裂したんですって。怖いわねえ。あたしも気をつけなくっちゃ。

(1983年12月執筆)

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