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MAD LIFE 233

16.姉弟と兄妹(6)

3(承前)

「それで? ブツはどれだけほしいんだ?」
 いや、あるいは無能なフリをしているだけなのかもしれない。
 中部は慎重に尋ねた。
『……あんたたちは本当に信用できるんだろな?』
 Mがいう。
「信用できると思ったから、こうやって電話をかけてきたんだろう?」
『ああ。あんたたちの噂は大阪にまで届いている』
「そりゃ、どうも」
 電話の相手に気づかれぬよう、中部はほくそ笑んだ。
 順調に事は進んでいる。
 だが、油断してはいけない。
 あくまでも慎重に……慎重に……。
「じゃあ、明日の朝五時に大阪駅前で取り引きを行なうことにしよう」
『ああ……わかった』
「我々は〈フェザータッチオベレーション〉と記されたバッヂを胸につけているから、すぐにわかるはずだ」
『須藤みたいにすっぽかすなよ』
 Mの言葉に、中部は笑って答えた。
「我々はそんなドジなど踏まないさ」

「親父はなにをしてるんだろうな?」
 晃はティーカップに触れながらそういった。
 瞳は彼の顔から視線を逸らす。
「いや、親父のことなんてどうでもいいいんだけどさ。たぶん、あいつはお袋にかくまってもらっているんだろうし」
「……晃君」
 やはり話すべきだろう。
 愛する人を失い、子供たちはそろって行方不明のままで……今、晃の母親は寂しさに打ちのめされているはずだ。
 私は長崎典和が死んだことを彼に伝えなければならない。
「あのね……」
「なんだよ、神妙な顔つきで」
 晃は怪訝そうに眉をひそめた。

 (1986年4月2日執筆)

つづく

この日の1行日記はナシ


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