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私の愛したキャラクター

早乙女ボンド之介&金大事包助

 SF作家横田順彌が生み出した名探偵、早乙女ボンド之介と金大事包助。
 ふざけているのは名前だけじゃない。
 早乙女ボンド之介は早乙女主水之介とジェームズ・ボンドの血を受け継ぐ男。父親は皮革用ボンドという名の諜報部員で、00711(ダブリュオーセブンイレブン) のコードナンバーを持ち、セブンイレブンの店員に姿を変え任務を遂行している。
 一方の金大事包助はあの金田一耕助とはなんの関係もなく、「睾丸は大切だから包んで助けよう」との思いからつけられた名前。
 人物設定からしてすでに本を叩きつけたくなるようなバカバカしさだが、事件もろくなものじゃない。ただひたすらダジャレと下ネタのオンパレード。最後には論理的とは到底言い難い、強引な結果が用意されている。
 事件が解決するたび、「くだらねえ」と叫ぶこと必至だが、だからこそインパクトも絶大だ。「外人二十面相」の正体などは、いまだ夢に見てうなされるほど。

 歴史に残る大トリックほど、「すげえ」と「くだらねえ」の境界線ギリギリに存在することが多い。
 名探偵によって論理的に導き出される真相も、よくよく考えてみれば、かなり強引だったりする。
 なんたらとなんたらは紙一重。僕にとって早乙女&金大事の二人は、クイーンやポアロに勝るとも劣らない名探偵だ。だって読了後、「こんなバカでも精一杯生きてるんだから、オレも頑張らなくちゃ」と勇気づけてくれる名探偵なんてそうはいないぞ。


〈ジャーロ〉2009年秋号 掲載

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