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だるまさんがころんボ! 15

FILE.15 溶ける糸

 名声を独占したい外科医メイフィールドは、共同研究者ハイデマンの心臓手術に溶ける糸を使用し、自然死に見せかけて殺害することを計画する。しかし、メイフィールドの謀略に気づいた看護師シャロンを撲殺したことで、コロンボから疑いの目を向けられて……。

「仮に、誰かが永久に残る糸を使って縫うべきところを、溶ける糸を使ったとしてみましょう。新しい弁をつけたところにね。そうしたらその糸は数日で溶けてしまい、先生は死んじまうんでしょう?」
 メイフィールドの計画を、確実に暴き立てていくコロンボ。
「そうなるね」
 この薄汚れた刑事が、私を疑っていることは確実だ。だが、決して動揺を悟られてはならない。メイフィールドは平静を装う。
「そこで死んでも、誰もミスだとは思わない。死因は心臓発作だと思うでしょうね」
 笑い出すメイフィールド。
「なにがおかしいんです?」
 コロンボは、露骨にしかめっ面を見せる。
「いや、どうも失礼。あまり君が大真面目なんでね。まさか本気でいっておられるんじゃないでしょうな?」
 強く机を叩くコロンボ。その表情は、怒りに満ちている。
「あたしゃね、あんたがシャロンを殺したと思ってる。そして、ハイデマン先生をも殺そうとしていると」
「君は立派な刑事だ。知性もあり、勘も鋭く、そして粘り強い。ただ、証拠がないのが惜しいなあ」
「ハイデマン先生の面倒をよくみることだ。もし死んだら、当然我々は検死解剖を要求する。そして単なる心臓発作による死亡なのか、糸のためなのかを確認するからな」
 いつになく感情的なコロンボ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
 彼の怒りに、メイフィールドはうろたえる。
「信じてほしい。私は普通の糸を使って、手術を行なった。それは間違いない。しかし、なんらかの要因で糸の性質が変化し、溶けてしまう可能性だってある」
「そんな話、聞いたことありませんな。どうして普通の糸が、急に溶けたりするんですか?」
「たとえば、ハイデマン先生の体内に小さな化け物が忍び込んで、こっそり心臓の糸を溶かしてしまうとか」
「なんですか、そりゃ? そんな化け物が実在すると、あんたは本気で信じてるんですか?」
「ああ。そういうこともないとはいいきれない。世の中には不思議なことがあふれかえっているからな」
「ふーん、そうですか。だったらあんたは、バルカン人と地球人のハーフで、宇宙戦艦の乗組員かもしれませんな」
「ぎくっ。どうしてそれを……」
「とにかく化け物が糸を溶かしてしまうなんて、そんな戯言は信じられませんよ。大体その化け物は、どういう目的があって体内の糸を溶かすんです? なにか理由があるはずでしょう?」
「そりゃあ、たぶん……」
 冷静に答えるメイフィールド。
妖怪だから、溶解が趣味なんでしょうな

▼細かいことをいってしまえば、タイトルがややネタバレ。「手術の糸で、どのように人殺しができるのか?」という点も謎のひとつになっていたと思うので、そのあたり、最初から検討がついてしまったのは残念(といいつつ、僕も思いきりネタばれしているわけですが)。
▼『スター・トレック』のミスター・スポックが犯人役。この人って、素でも宇宙人顔してるんですね。
▼作戦だったとはいえ、珍しく犯人に対して怒りを露わにするコロンボ。彼のこのような表情は滅多に見ることができないので、それだけでも見る価値のある一作です。

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