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だるまさんがころんボ! 43

FILE.43 秒読みの殺人

 TVプロデューサーのケイ・フリーストーンは、上司であり恋人でもあったマークに見放されたことを知り、彼を殺害する。マークと恋仲であったことをひた隠しにするケイだったが、ひょんなことからコロンボに、その事実を見抜かれてしまい……。

「あなた、ホトケさんの夜の生活は知らないとおっしゃった。自分にはまったく関係ないって」
 ケイに詰め寄るコロンボ。
「……ええ。遅くまで仕事したときなど、食事くらいはしましたけど」
 二人が恋人同士だったことなどわかるはずがないとたかをくくり、平然と嘘をつくケイ。
「女友達とデートをしていたとか、あるいは同棲していた様子は?」
「おたがい、そういうことには触れませんでしたから」
「どうも困りましたなあ」
 ケイの回答に、コロンボは眉をひそめる。
「こんなことをいってはなんですが、こうなるとその……まずいんですよね」
 そういって、隣の部屋からスラックスとブレザーを持ってくるコロンボ。
「実は昨日、マークさんのお宅に行ってみたんですよ。そこでクリーニング屋からこのスラックスとブレザーを受け取り、あれ? と思ったんです。このブレザーね、ボタンの付けかたを見てくださればよくわかるでしょう? 襟が右前です。つまり、男物じゃなく女物だってことです」
「…………」
「仕立て屋のラベルがついていたので調べてみたら、あなたに仕立てたものでした。これ、あなたのブレザーでしょう? あなたがあのお宅からクリーニングを出していらしたということは、どう考えてもその……」
「よくわかりました」
 コロンボの言葉をさえぎるケイ。
「よくお調べになったこと。でも私、マークとは断じてそのような関係ではありません。マークが愛していたのは、私ではなくてそのブレザーだったんですから」
「へ? それは一体、どういうことでしょう?」
「あの人、衣服しか愛することのできない特殊な性癖の持ち主だったんです」
「はあ……」
「本人曰く、映写技師のウォルターから盗んだふんどしと三年前に結婚したのだとか」
「ウォルターさんって、ふんどしを穿いていらっしゃるんですか。いや、そんなことよりふんどしと結婚って……わけがわかりません」
「私にだって理解不能ですよ。そんな結婚、うまくいくはずがないでしょう? 周りが心配したとおり、最近はふんどしとの仲もあまりうまくいってなかったようです。彼、数週間前から私に色目を使うようになって……」
「ついに、まともな恋を知ったというわけですか」
「いいえ。マークが色目を使っていたのは私ではなく、私が着ていたそのブレザーでした。マークはふんどしの目を盗んで、私のブレザーとたびたびデートするようになったんです」
 一気にまくし立てるケイ。
「きっとマークは、嫉妬に怒り狂ったふんどしに殺されたんじゃないかしら?」
「気の短いふんどしですなあ。旦那さんのちょっとした気の迷いくらい許してあげればよかったのに」
 コロンボはそう口にすると、静かに鼻唄を歌い始めた。
♪三年目の上着くらい大目にみろよ~

▼ミステリ的にはイマイチな作品だけど、エレベーターのシーンはハラハラドキドキ。

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