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MAD LIFE 355

24.それぞれの行動(6)

3(承前)

「……家出?」
 中部が目をぱちくりと動かす。
「由利子。おまえはもう一度警察に行って、家出人捜索の手続きをしてもらってほしい」
 洋樹は由利子にいった。
「あなたは?」
「俺は社長の自宅に行ってみるよ」
「え。でも、ご迷惑になるんじゃ――」
 洋樹は由利子がすべていい終わらぬうちに、その場を離れてしまった。
「私も行かないと」
 洋樹のあとを追うように、中部も走り出す。
 なんだか大変なことになりそうだ。
 ひとり残された由利子は小さくため息をついた。

「うわっ!」
 突如、目の前に現れた人影に、中西は正面から思いきりぶつかった。
 相手はそのまま勢いよく弾き飛ばされる。
「大丈夫ですか?」
 慌てて男に駆け寄ると、
「……中西君」
 それは洋樹だった。
「春日さん、すみません。慌てていたものですから」
「いや、こっちこそすまない」
 洋樹は腰をさすりながらゆっくりと立ち上がった。
「なにをそんなに慌てていたんだ?」
「いえ、ちょっと……」
 社長の娘に頭を下げにいく途中だったなんて、恥ずかしくてとてもいえない。
「春日さんはどこへ?」
 返答はせず、逆に質問を返した。

 (1986年8月2日執筆)

つづく

1行日記
今日で課外授業は終わりデス


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