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MAD LIFE 361

24.それぞれの行動(12)

5(承前)

「そこまでだな」
 俊の背後で男の声がした。
 ゆっくりと振り返る。
「なんだ。ガキじゃねえか」
 背の高い男は驚いた表情を見せたあと、彼の後ろで小さくなっているもうひとりに、
「おまえはこんなガキに怯えてたのか?」
 と冷たく吐き捨てた。
 逃げなければ。
 そう思うのだが、目の前の男の鋭い視線に圧倒されて身体が動かない。
「さて、坊主」
 男は口元に笑みを浮かべながら、俊に顔を寄せてきた。
「おまえの話を聞かせてもらおうか」
 煙草くさい息が吹きかかる。
「おまえは何者だ?」
 恐ろしいくらいの迫力。
 男の問いかけに、俊はなにも答えることができなかった。

 午前零時。
 新しい一日が始まる。
 徹はまぶたをこすった。
 少し身体がだるい。
「大丈夫ですか? 小崎さん」
 中部の問いかけに、徹はなにも答えず、ただ頷いた。
「落ち着いて行動してくださいよ」
「ええ……」
 徹はそれだけいうと、八千万円の入ったスーツケースを右手に持ち、愛車に乗り込んだ。

  (1986年8月8日執筆)

つづく

1行日記
今日からクラブキャンプ! 思いきり遊びます。


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