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面談

2006年7月17日(月)

今日は朝から土砂降りの雨。
一体、梅雨明けはいつ頃になるんでしょーか?
カラッと晴れた夏空が待ち遠しい今日この頃。
とはいえ、梅雨が明けたらすぐに宇宙医学実験へと突入してしまうわけで、今年はあまり夏を感じられそうにありません。

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6月12日。
名古屋大学を訪ね、実験に関する詳しい説明を受けてきました。
訪問前は、そりゃもう不安でたまりませんでしたよ。
名古屋大学や愛知医科大学で実施され、しかも新聞の1面に記事が載ったわけですから、怪しい仕事でないことはわかっています。でも、それでもほんのちょっぴりは、「実は、国家ぐるみの極秘プロジェクトなのでは?」と、よからぬ妄想を抱いてしまったり(苦笑)。
お会いした担当のA先生は、名古屋大学総合保健体育科学センターの助教授かつ宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究員という肩書きを持つおかたでした。でも、ぱっと見は高校の体育教師のようで、とても気さくな印象を受けましたです。
この段階で、不安の大半は吹き飛んでいきましたね。もし出会ったそのかたが、いかにも学者風な人物だったら、「うわあ。このまま実験材料にされちゃうのかな?」と、ますます不安を募らせていたと思います。しかし、A先生と会話を交わしていると、なんだか運動部の合宿に参加するよーな気分になってきちゃって。
ま、要するに、僕はひどく単純だってことです。

「かなりつらい仕事になります。ただ寝ているだけで30万円もらえるからという安易な気持ちで参加を決意したのなら、ご遠慮ください」

まず、そのようにいわれました。
仕事なんですからつらくないはずはありません。覚悟はしていましたし、なによりも「宇宙開発の仕事に、ほんのわずかでも関われる」という部分に最大の魅力を感じていたわけで、僕ははっきりとその旨を伝えました。
ついでに、不安に思っていたことに関して質問。
「つらい仕事になりますといわれましたが、それは肉体的苦痛ですか? それとも精神的苦痛ですか?」
最近は毎日3キロほど泳いでいますし、冬にはスキーのインストラクターをやっていますし、体力にはそれなりの自信があるつもりです。
でも、なんといっても37歳。若い人と較べたら、まるで勝負にならないでしょう。
もし肉体的苦痛を伴うなら、それはちょとつらいかも、と思ったんですが……。
「肉体的苦痛はほとんどありません。前回の実験では、頭が重いと感じたり、腰が痛くなったりする人もいたようですが、それも最初の3日ほどで治まったそうです。問題は精神的な苦痛ですね」
との返答。
精神的苦痛であれば、なんとか我慢できると思いました。
もともと、本があればいくらでも時間を潰せる人間ですし、一人きりでいることにさほど苦しみを感じたことはありませんし。
寝るのは大好き。1日15時間くらいなら、たぶん平気で眠れます。「ベッドに入ったけど、ちっとも眠れない」という経験は、これまでほとんどありません(大イベントの前日にわくわくして眠れなくなることは、よくあったけど)。
これなら、なんとか20日間を乗り越えられそうです。
僕のその判断が正しかったか甘かったかは、実際に体験してみないとわかりませんけどね。
ちなみに前回の実験では、1人が途中でリタイアしたとのこと。
つまり、ほとんどの人は20日間我慢できたわけで、その事実がさらに僕を勇気づけてくれました。
「実験終了後の自分の身体が心配だったりもするんですが……」
もっとも知りたかったその疑問に、A先生は過去のデータを提示して、わかりやすく説明してくださいました。
「実験終了後、20日ぶりにベッドから起き上がると、めまいを感じたり、すぐに立てなかったりすることもあると思いますが、それもすぐに治まります。また、筋肉量は1ヵ月ほどでもとの状態に戻るはずです」
詳細は少し違っているかもしれませんが、確かこのような感じの言葉が返ってきたと記憶しています(なにしろ1ヵ月以上も前の出来事なので、うろ覚え……)。要するに、多少時間はかかるけれども、必ず実験前の状態に戻るということです。これを聞いて、ほっと胸を撫で下ろしました。

絶対に参加したい!

この時点で、僕の意志は完全に固まりました。

さらに、知りたかったことをいくつか質問。

「排泄の方法を具体的に教えてください」
これはぜひとも事前に知っておきたい事柄です。
写真を見せてもらいましたが、おしっこは漏斗のような形の器具に出すそーな。その器具からはチューブが伸びていて、放出した尿がちゃんと流れていく仕組み。
大便のほうは一人で行なうのは不可能なので、スタッフの手を借りて世話をしてもらうとのこと。ううううう、ちょっぴり恥ずかしいけど仕方がないか。

「パソコンは使用OK?」
OKだそうです。ネット環境も整っているとのこと。
さらに、「執筆活動を続けてもかまいませんか?」と訊いたところ、「問題なし」という回答が。これは嬉しい。実験期間中も、普段と変わらぬペースで仕事を続けられそうです。いや、むしろほかに誘惑がない分、いつも以上に作業がはかどるかも。まあ、これも実際のところはどうなるかわかりませんけどね。

この続きはまた明日。

……旅立ちの日まであと14日。

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