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1996ベストミステリを語る 09

1996年マイベストミステリ(97 1/5)

「というわけで、長々とつまらないことを書いてきたこのページですが、年も変わったことですし、そろそろ終わりにしたいと思います」
「じゃ、最後にあたしたちの1996年ベストミステリを発表して締めくくりましょうよ」
「そうだね。今年読んだ本は113冊。このホームページには記してないけど、実は僕、本を読んだあとには『A+』から『C-』まで9段階でその作品の評価をしているんだよ」
「あ、そうなんだ」
「Aランクは45作品。Bランクは55作品。Cランクは13作品。Cランクの作品の少なさが、僕の気の弱さを物語ってるよね(笑)。あまり強くは悪口をいえない……」
「Cランクの13作品がなんなのか、その辺がすごく気になるわね」
「それは内緒。……で、1996年マイベストは、今年刊行された作品から選んでみたいと思うんだけど、そうなると数字が少し変わってくるんだよね。今年読んだ新刊は59冊。そのうちAランクは27作品。Bランクも27作品。Cランクは5作品」
「あああああ、Cランクの5作品が気になるぅぅぅぅ」
「さらにAランクの作品を3つに分けると、A+ランクが7作品。Aランクが9作品。A-ランクが11作品。というわけで、このあたりの作品からあらためて、今年のベスト10を選んでみたいと思いますです」
「Cランクが気になるけど……じゃ、第10位!」
「『パワー・オフ』。『すべてがFになる』を10位にするか、これを10位にするかすごく迷ったんだけれども、のめり込み度ってことでは圧倒的に『パワー・オフ』の方が上だったので……」
「ラストまで一気に読んじゃったもんねぇ。この本を読んだ日は、本の続きばかり気になって、まったく仕事にならなかったし(笑)」
「9位は『十三番目の人格-ISOLA-』。あんまり話題にならなかったけど、今年のホラー大賞佳作です。去年大賞を獲った『パラサイト・イヴ』よりも、こっちの方が好きだけどなぁ」
「続いて8位は?」
「『悪意』。正直言うと、もっと上位にしてもいいくらいの傑作です。この位置にしてしまったことには理由がありまして……詳しいことはあとで述べます」
「気になる言葉ね。じゃあ7位は?」
「またまた東野さんで『名探偵の呪縛』。これはファンにはたまらない1冊でしたよね。読了後、しんみりとしてしまった作品でした」
「さてさて第6位!」
「『人格転移の殺人』。昨年、マイベスト1に輝いた『七回死んだ男』ほどの驚愕はなかったものの、このアイデアにもう脱帽であります。次世代の本格ミステリを引っ張っていくのは西澤さんだと思っておりますです、はい」
「新年早々、新刊も出るし、今後もすごく楽しみよね」
「そして5位。『天使の屍』。この作品は感激しましたね。どこが『本格ミステリ』なんだ? と思いながら、ラストで明かされる大胆なトリック。期待して読んだわけではなかったので、とくに感激は大きかったです。思わぬ拾いモノをしたって感じかな」
「4位は?」
「『名探偵の掟』。またもや東野さんです。実はベスト10内に東野さんの作品が4つも入っちゃってるんですよ。だからね、『悪意』とか『名探偵の呪縛』とかも、それ1作だけなら、もっと上位に選びたいんだけれど、これだけたくさんあると、ついランクを下げてしまうんですよね」
「4作品ってことは、まだあと1つ、残っているってことね? ドキドキ。なにかしら? さあ、いよいよベスト3よ。まず第3位!」
「『奪取』。これは今年唯一の徹夜本ですな。寝る前に読み始めて、止まらなくなってしまった作品です。ラストのとんでもないオチもご愛敬(笑)」
「2位は?」
「ここで東野さん登場。『どちらかが彼女を殺した』。これは驚いた。ホント驚いた。そして悩んだ。この本の反響は大きかったと思いますよ。ニフティーでこの作品のネタばれホームパーティーを開いていたんだけど、いまだにそのログがほしいっていうメールが来るもん。……って、これは前にも書いたっけ」
「さぁてさてさて、いよいよ第1位よ! 今年のマイベスト1は?」
「『不夜城』! いやぁ、別に世間の評価を真似たわけじゃないんだけど、やっぱり僕もこれをベスト1に選んじゃうなぁ。僕の好きなジャンルでは決してない。それなのにここまでのめり込めたっていうのは……やっぱりすごい作品なんでしょう。まったく予想していなかったラストシーンには呆然としてしまったし」
「1997年も面白いミステリがたくさん読めるといいわね」
「うん。早くも1月は新刊目白押しだしね」
「そんなわけで、1997年もよろしくお願いします。……ところでCランクの5作品っていうのは?」
「『XXXXのXX』とか『XのX』とか……』

 そんなわけで、アンケートにご協力いただきました皆さま、どうもありがとうございました。ごく一部しか紹介できなくてごめんなさい。
 この博物館を利用してくれている皆さまのアンケートを元に「ミステリベスト10」を集計してみましょうよ、という声も何人かの方から頂きました。いつかそういう企画もやってみたいなと思っています。またそのときには協力してくださいね。
 それでは1997年もミステリがますます繁栄しますように……。

解説

~天使の屍~
 「天使の屍」(貫井徳郎*角川書店)
 次々に自殺する中学生たち。彼らはなぜ死に急ぐのか?

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