MAD LIFE 368
25.最後の嵐(3)
2
「春日さん」
後ろから軽く肩を叩かれる。
振り返ると長崎晃が立っていた。
「一体、なにがあったんです? 警察官がたくさん集まっているみたいですが」
「君こそどうしてここに?」
「ただ散歩をしていただけですけど――あ」
晃が驚いたように目を見開く。
彼の視線の先には瞳が立っていた。
「……晃君」
瞳は明らかに動揺している。
そのとき、銃声が轟いた。
「それ以上、近づくな」
警察官に銃を向けながら郷田が叫ぶ。
彼の撃った弾は警察官の頭上を越えて海に消えた。
「こっちには切り札があるんだからな」
彼は倉庫を指差した。
「俺たちの邪魔をしたら、こいつらの命はないぞ」
暗闇から別の声が聞こえてくる。
「いやっ! なにすんのよ!」
女性の悲鳴。
「真知!」
徹は闇に向かって叫んだ。
「真知なのか?」
「パパ!」
(1986年8月15日執筆)
つづく
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