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MAD LIFE 367

25.最後の嵐(2)

1(承前)

「確かに金は頂いたぜ」
 徹の前から立ち去ろうとした男に、
「中身を調べないのか?」
 徹は声をかけた。
「調べる必要はねえさ」
 男が答える。
「もし、このスーツケースの中身が金じゃなかったら、あんたの娘は死ぬ。それだけのことだ」
「……真知は無事なんだろうな?」
「ああ、今はまだ元気だよ。じゃあな」
 男は徹に左手を挙げた。

「今だ!」
 ふたりのやり取りを見ていた中部が無線機に向かって叫ぶ。
 息をひそめていた大勢の警察官がいっせいに飛び出し、スーツケースを持った男の周りを取り囲んだ。
 男の姿が眩しいライトに照らし出される。
「ちっ! やっぱりそういうことだったか!」
 舌打ちした男が拳銃を取り出した。
「間違いない! あれは郷田だ!」
 男を見て浩次がいう。
「俺があいつを説得する!」
 立ち上がった彼を、
「待て!」
 中部が押しとどめた。
「早まるな! 敵は拳銃を持っているんだぞ」
「あいつに俺が撃てるものか! 郷田は俺の部下だ」
「部下だったというのは昔の話だろう? 現におまえは昨晩、あいつにひどい目に遭わされたじゃないか。ここは我々に任せるんだ!」

(1986年8月14日執筆)

つづく

1行日記
昨日、腕時計を買ってもらいました。今度は失くさないようにしなくては……


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