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ろんぐろんぐあごー

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デビュー以前に書いた素面では到底読めない作品をひっそりと公開。
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2024年2月の記事一覧

MAD LIFE 301

MAD LIFE 301

20.思いがけない再会(13)5(承前)

 顔がひどく熱い。
 中西は手のひらを頬にあてながら答えた。
「俺は……君に味噌汁を作ってほしい」
「今日だけでいいの?」
「……え?」
 ふたりの視線が絡み合う。
「今……なんていった?」
 真知の顔を凝視したまま訊く。
「ううん、なんでもない。ただの独り言」
 顔を赤く染めながら大きくかぶりを振ると、真知は家の中へと上がり込んだ。
「お邪魔します。台

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MAD LIFE 300

MAD LIFE 300

20.思いがけない再会(12)5(承前)

「ほっといてくれ!」
 布団の中から大声で叫ぶ。
「ほっといてくれっていっても……お客様がいらっしゃってるんだけど」
 ……客?
 中西は布団から顔を出した。
「誰?」
「キレイな女の人だよ。小崎さんってかた」
 小崎⁉
 布団から飛び出し、鏡の前で髪型を整える。
 パジャマの上からジャージを着て、玄関へと急いだ。
 まさかと思ったが、そこに立っていたの

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MAD LIFE 299

MAD LIFE 299

20.思いがけない再会(11)5(承前)

 真知に俺の気持を伝えよう。
 庭の様子をうかがいながら、中西はそう心に決めた。
 だが、どうやって真知に会う?
 そもそも、彼女はいるのだろうか?
 いたとして、なんといってこの門を通過すればいい?
 恐れ多くも、ここは社長の自宅なのだ。
 インタホンに伸ばした手が止まる。
 俺ってこんな臆病者だったっけ?
 最後の一歩がなかなか踏み出せない。
 ……

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MAD LIFE 298

MAD LIFE 298

20.思いがけない再会(10)4(承前)

 窓の外の木々が風に吹かれてざわざわと揺れる。
「私は今でも……あなたことを……」
「なにをいまさら」
 浩次は寝返りを打ち、江利子から視線をそらした。
「もう遅い」
 そういって、布団を頭までかぶる。
 江利子を憎む気持ちはもうどこにも存在しない。
 でも、元の関係に戻ることは不可能だ。
 ふたりの気持は大きく離れてしまっている。
「浩次さん……」

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MAD LIFE 297

MAD LIFE 297

20.思いがけない再会(9)4(承前)

 江利子の表情が変わった。
「死ぬつもりだったの?」
「ああ」
 浩次は窓の外を見たまま頷いた。
「郷田にやられて……このまま死ねるならまあいいかと思っていたのに……俺を助けたお節介者は誰だ?」
「私よ」
 江利子が答える。
「私、テレビのニュースであなたがパトカーから飛び降りて怪我したことを知って、慌ててこの病院へやってきたの。それが三日前。でも私、あな

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MAD LIFE 296

MAD LIFE 296

20.思いがけない再会(8)4(承前)

 浩次は叫び声をあげ、頭を抱え込んだ。
「やめろ! やめろ! やめてくれ!」
 ――浩次さん。
 苦しむ彼の耳元に、今度はやさしい響きの女性の声が聞こえた。
 誰だ?
 ――浩次さん。大丈夫?

 目を開ける。
 暑い。
 全身に汗をかいていた。
 俺は現実に引き戻されたのだ、と瞬時に理解する。
「気がついた?」
 浩次はベッドの上に寝かされていた。
 不

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MAD LIFE 295

MAD LIFE 295

20.思いがけない再会(7)3(承前)

 洋樹は激しく動揺した。
 というのも、突然、封印したはずの過去の記憶が鮮やかによみがえってきたからだ。
「友恵」
 洋樹はぼそりと呟いた。
 どうして急に、こんなことを思い出したのだろう?
 一定の回転速度を保ち回り続けているレコード盤に目をやる。
 流れている歌のタイトルは「追慕」。
「友恵」
 洋樹はもう一度、その名前を呼んだ。
 強く唇を噛む。
 

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MAD LIFE 294

MAD LIFE 294

20.思いがけない再会(6)3(承前)

愛しい少女へ
パパとママの犯したあやまちをゆるしておくれ
愛しい少女へ
こんなパパとママをゆるしておくれ
でもこうするしかなかったんだ
こんなおろかなパパとママを
愛しい少女よ
愛しい少女よ
どうかどうかゆるしておくれ

 俊はその詩を読み終えると、二枚目の便箋を見た。
 そこには大きく乱雑な文字で〈春日友恵〉とだけ記されている。
 春日友恵……?
 俊は

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MAD LIFE 292

MAD LIFE 292

20.思いがけない再会(4)2

 お願い……早く受話器を置いて。
 瞳は電話の向こう側にいる顔の見えない相手に、強く念を送った。
 だが、ベルはいつまで経っても鳴りやまない。
 しばらくの間、瞳と電話との睨み合いは続いた。
 どうして受話器を置いてくれないの?
 ――どうして受話器を取らないの?
 ……え?
 瞳の心の中に突然、別の意識が流れ込んでくる。
 ――ねえ、教えて。どうして受話器を取っ

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MAD LIFE 291

MAD LIFE 291

20.思いがけない再会(3)2

 俺はどちらを愛しているのだろう?
 中西はベッドで仰向けになったまま、じっと天井を見つめていた。
 明日は瞳とのデートだが、どうしても憂鬱に感じてしまう。
 最近は瞳と一緒にいると、決まって気まずさのようなものが心につきまとった。
 原因はわかっている。
 真知の存在だ。
 わずか三日間だけ、ひとつ屋根の下で暮らした女。
 離して! と大声で叫ぶ彼女の口を、中西

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MAD LIFE 290

MAD LIFE 290

20.思いがけない再会(2)1(承前)

「……え?」
 男は浩次の顔を見て、一瞬ひるんだような表情を見せた。
「間瀬か?」
 野太い声には聞き覚えがあった。
 目をこすり、男の姿を確認する。
「おまえは……郷田」
 かつて立澤組の一員として、浩次に仕えていた人物だ。
 浩次と数名の幹部組員が逮捕され、立澤組は完全に崩壊した。
 今、郷田がなにをやっているのか、浩次は知らなかった。
「ちょうどよか

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MAD LIFE 289

MAD LIFE 289

20.思いがけない再会(1)1

 九月五日、深夜。
 今日も夜を忘れた街に大勢の人たちが集まってきた。
 彼らは皆、昼間は別の顔を持っており、また大なり小なりの悩みを抱えている。
 もちろん、浩次だって例外ではない。
「くっ……」
 浩次は痛みを堪えきれず、腹を押さえて呻いた。
 全身が熱い。
 溶けてしまいそうだ。
 もう一度、瞳に会って……それから死のう。
 そればかりを思いながら先を急ぐ。

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MAD LIFE 288

MAD LIFE 288

19.兄貴(16)5

 ノックを二回してから、
「間瀬さん」
 と声をかける。
 中から返事はない。
「夕食ですよ」
 担当の看護師はドアを開け、室内に入った。
 風が髪を撫でていく。
 開いた窓のそばで、カーテンがダンスを楽しんでいた。
 ベッドの上に間瀬浩次の姿はない。
「間瀬さん! どこですか?」
 看護師は大声をあげたが、返事があるはずもなかった。
 間瀬浩次は逃げたのだ。
 いや、でも

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MAD LIFE 287

MAD LIFE 287

19.兄貴(15)4(承前)

 瞳へ。
 おまえが結婚したとき、私たちはおまえにある事実を伝えようと思っている。
 だが、もしそれまで私たちが生きていなかったら、押入れあるに金庫を開けてみなさい。
 金庫の鍵はこのアルバムの最終ページに貼ってある写真の裏に隠してある。
 金庫のダイヤルは右へ5、左へ2、右へ4回せば簡単に開くはずだ。
 おまえが結婚するとき――おまえがこの家を去るとき、おまえは必

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