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ろんぐろんぐあごー

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デビュー以前に書いた素面では到底読めない作品をひっそりと公開。
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2024年1月の記事一覧

MAD LIFE 272

MAD LIFE 272

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(16)4(承前)

 都会は一日に一度だけ 素顔を見せてくれる
 私は好きなの 夜明け前のブルーグレイの横顔
 あなたも疲れて悲しそう 大きな都市 Mr.メトロポリス
 けれど新しい陽が昇れば
 あなたはまたスーパースター
 輝き始めた窓ごとに 名もない命が目を覚ます
 そして聞こえだす 今日のシンフォニー
 そうね 私はひとりじゃない
 ああ 素晴ら

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MAD LIFE 271

MAD LIFE 271

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(15)4

 翌日。
 まだ夜が明けきっていない頃。
 なぜか目が覚めてしまった洋樹は、布団を抜け出して外へ出た。
 東の空がぼんやりと明るい。
 洋樹は大きく息を吸い込み、ため息とも安堵ともわからぬものを吐き出した。
 早起きの人々を乗せた電車が雄叫びをあげる。
 その音を聞いた途端、この夜明け前の街を無性に走りたくなった。
 ……これで終わったんだ

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MAD LIFE 270

MAD LIFE 270

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(14)3(承前)

「今日をもって〈フェザータッチオペレーション〉は解散する」
 グラスを手にした中部がそう宣言する。
 五つの手が四方から伸び、活気ある「乾杯!」の声があたりに響き渡った。
 グラス同士の重なり合う音が耳に心地よく飛びこんでくる。
 誰もが幸せそうな笑みを浮かべていた。
「警部、今まで協力をありがとう」
 中部は金井に右手を差し出して

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MAD LIFE 269

MAD LIFE 269

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(13)3(承前)

「パパの会社に中西さんっているでしょう」
「中西?」
 思いがけない質問に戸惑いを覚える。
「中西……営業部の中西望か?」.
「そうそう、その人」
 真知は嬉しそうにいった。
「そいつがどうした?」
 首をひねりながら娘に尋ねる。
「どんな人?」
 真知は徹の身体にすり寄ると、甘えた声を出した。
 高いものをおねだりするときによく使

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MAD LIFE 268

MAD LIFE 268

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(12)3(承前)

「望」
 母の声が聞こえたが、中西は返事をしなかった。
「早くしないと朝ご飯が冷めるわよ」
 早口で母がいう。
「ああ……今、行くよ」
 中西は活気のない言葉を返すと、もぞもぞと布団から抜け出した。
 今もまだ真知がそばにいるような気がしてあたりを見回す。
 だが、当然ながら彼女はどこにもいない。
 中西は大きなため息をついた。
 

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MAD LIFE 267

MAD LIFE 267

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(11)2(承前)

「間瀬!」
 金井は車を停車させると、すぐに外へ飛び出した。
 目の前の光景に絶句する。
 道路の真ん中には浩次が血まみれになって倒れていた。

3(終章へのプロローグ)

「瞳……」
 東京へ向から列車の中。
 晃は瞳に声をかけたものの、そのあとに続ける言葉が見つからず困っていた。
「私……馬鹿よね.」
 俯いたまま、瞳がぼそりと

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MAD LIFE 266

MAD LIFE 266

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(10)2(承前)

「お前は死ぬんだ!」
 俺は引き金を引いた。
 そのときの光景が、別の景色とダブる。
 五年前、突然自宅に戻ってきた兄――立澤栄。
 おまえに渡す金はない! と怒鳴る父。
 どうしても貸さねえっていうのか? と父を睨む兄。
 ――当たり前だ! どうして貴様に金など!
 親父は怒鳴った。
 次の瞬間、兄貴はバットで両親を殴り殺していた

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MAD LIFE 265

MAD LIFE 265

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(9)1(承前)

「だから俺はあのとき、『これ以上、〈フェザータッチオペレーション〉について調べるのはやめろ』と君たちに忠告したんだ。真実を知れば、瞳君は苦しむことになるからな」
 瞳は唇を一文字に結び、黙り込んだままだ。
「それからあとのことは、君たちも知っているだろう?」
 中部はさらに続けた。
「我々は立澤組に麻薬を卸していた須藤仁に目をつけ、ま

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MAD LIFE 264

MAD LIFE 264

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(8)1(承前)

「君に頼みがある」
「俺に?」
 黒川は浩次にとてつもない恐怖を感じたのではないだろうか?
 理由はわからない。
 たぶん、野性の勘のようなものだ。
 逆らったらきっと、とんでもないことになる。
 そんな思いが頭をよぎったのかもしれない。
「頼みって……なんだ?」
 彼は恐る恐る浩次に尋ねた。
「なに、簡単なことさ」
 浩次が笑う。

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MAD LIFE 263

MAD LIFE 263

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(7)1(承前)

「だけど、それはべつに難しいことじゃなかった。こちらには西龍組の組長がいる。裏の世界にデマを流すのは簡単だ。〈フェザータッチオペレーション〉の噂は瞬く間に広まった」
「あの……」
 それまで黙って話を聞いていた晃が遠慮がちに口を挟んだ。
「親父はどうして殺されたんです?」
「親父?」
 中部は怪訝そうに晃の顔を見た。
「彼は長崎の息子

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MAD LIFE 262

MAD LIFE 262

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(6)1(承前)

「後悔しているのか?」
 中部が訊く。
「わからない。でも、ときどき不安になるんだ。俺はこのままでいいんだろうか? どうして、俺はこうなっちまったんだろう? どこで俺の人生は狂っちまったんだろう? ってな」
 感情が昂り、とめどなく言葉があふれ出してくる。
「たぶん、どこかで一本、道を間違えたんだろうな。そして俺はそれに気づかずに――

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MAD LIFE 261

MAD LIFE 261

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(5)1(承前)

「俺の協力って……どういうことだ?」
「おまえのいうとおり、架空の麻薬組織を作ったとしても、その存在を立澤組に報せ、信用させるのは容易なことじゃない。しかし、その組織に元立澤組のおまえがいたとしたら?」
「信用するかもしれないな」
 長崎は口元を緩めた。
「おまえは立澤組の内部事情にも詳しいだろう? おまえが組織の一員になってくれば百

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MAD LIFE 260

MAD LIFE 260

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(4)1(承前)

「立澤組を憎んでいるのか?」
 中部は長崎に尋ねた。
「ああ、もちろんさ」
 すぐに答えが返ってくる。
「だったら、我々の手伝いをしてみないか?」
 中部は立ち上がると、長崎の顔を真正面から見据えていった。
「……手伝い?」
 長崎はきょとんとした表情で中部を見上げる。
「どういうことだ?」
「立澤組を一網打尽にしてやろう」
「……潰

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MAD LIFE 259

MAD LIFE 259

18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(3)1(承前)

「……麻薬撲滅の秘密組織?」
 洋樹はしゃっくりに似た声をあげた。
「でたらめをいうな。西龍組の組長も組織の一員だったじゃないか」
「西龍統治は麻薬をひどく憎んでいる。警察に協力してでも、麻薬を撲滅させたいと思っていたんだよ」
「まさか……ヤクザなのに?」
「あいつは一本スジの通った男だからな」
「…………」
 中部の言葉はまんざら嘘

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