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黒田研二
2024年1月31日 08:50
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(16)4(承前) 都会は一日に一度だけ 素顔を見せてくれる 私は好きなの 夜明け前のブルーグレイの横顔 あなたも疲れて悲しそう 大きな都市 Mr.メトロポリス けれど新しい陽が昇れば あなたはまたスーパースター 輝き始めた窓ごとに 名もない命が目を覚ます そして聞こえだす 今日のシンフォニー そうね 私はひとりじゃない ああ 素晴ら
2024年1月30日 08:30
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(15)4 翌日。 まだ夜が明けきっていない頃。 なぜか目が覚めてしまった洋樹は、布団を抜け出して外へ出た。 東の空がぼんやりと明るい。 洋樹は大きく息を吸い込み、ため息とも安堵ともわからぬものを吐き出した。 早起きの人々を乗せた電車が雄叫びをあげる。 その音を聞いた途端、この夜明け前の街を無性に走りたくなった。 ……これで終わったんだ
2024年1月29日 08:28
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(14)3(承前)「今日をもって〈フェザータッチオペレーション〉は解散する」 グラスを手にした中部がそう宣言する。 五つの手が四方から伸び、活気ある「乾杯!」の声があたりに響き渡った。 グラス同士の重なり合う音が耳に心地よく飛びこんでくる。 誰もが幸せそうな笑みを浮かべていた。「警部、今まで協力をありがとう」 中部は金井に右手を差し出して
2024年1月28日 08:29
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(13)3(承前)「パパの会社に中西さんっているでしょう」「中西?」 思いがけない質問に戸惑いを覚える。「中西……営業部の中西望か?」.「そうそう、その人」 真知は嬉しそうにいった。「そいつがどうした?」 首をひねりながら娘に尋ねる。「どんな人?」 真知は徹の身体にすり寄ると、甘えた声を出した。 高いものをおねだりするときによく使
2024年1月27日 06:34
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(12)3(承前)「望」 母の声が聞こえたが、中西は返事をしなかった。「早くしないと朝ご飯が冷めるわよ」 早口で母がいう。「ああ……今、行くよ」 中西は活気のない言葉を返すと、もぞもぞと布団から抜け出した。 今もまだ真知がそばにいるような気がしてあたりを見回す。 だが、当然ながら彼女はどこにもいない。 中西は大きなため息をついた。
2024年1月26日 09:43
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(11)2(承前)「間瀬!」 金井は車を停車させると、すぐに外へ飛び出した。 目の前の光景に絶句する。 道路の真ん中には浩次が血まみれになって倒れていた。3(終章へのプロローグ)「瞳……」 東京へ向から列車の中。 晃は瞳に声をかけたものの、そのあとに続ける言葉が見つからず困っていた。「私……馬鹿よね.」 俯いたまま、瞳がぼそりと
2024年1月25日 08:36
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(10)2(承前)「お前は死ぬんだ!」 俺は引き金を引いた。 そのときの光景が、別の景色とダブる。 五年前、突然自宅に戻ってきた兄――立澤栄。 おまえに渡す金はない! と怒鳴る父。 どうしても貸さねえっていうのか? と父を睨む兄。 ――当たり前だ! どうして貴様に金など! 親父は怒鳴った。 次の瞬間、兄貴はバットで両親を殴り殺していた
2024年1月24日 08:06
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(9)1(承前)「だから俺はあのとき、『これ以上、〈フェザータッチオペレーション〉について調べるのはやめろ』と君たちに忠告したんだ。真実を知れば、瞳君は苦しむことになるからな」 瞳は唇を一文字に結び、黙り込んだままだ。「それからあとのことは、君たちも知っているだろう?」 中部はさらに続けた。「我々は立澤組に麻薬を卸していた須藤仁に目をつけ、ま
2024年1月23日 09:32
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(8)1(承前)「君に頼みがある」「俺に?」 黒川は浩次にとてつもない恐怖を感じたのではないだろうか? 理由はわからない。 たぶん、野性の勘のようなものだ。 逆らったらきっと、とんでもないことになる。 そんな思いが頭をよぎったのかもしれない。「頼みって……なんだ?」 彼は恐る恐る浩次に尋ねた。「なに、簡単なことさ」 浩次が笑う。
2024年1月22日 09:40
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(7)1(承前)「だけど、それはべつに難しいことじゃなかった。こちらには西龍組の組長がいる。裏の世界にデマを流すのは簡単だ。〈フェザータッチオペレーション〉の噂は瞬く間に広まった」「あの……」 それまで黙って話を聞いていた晃が遠慮がちに口を挟んだ。「親父はどうして殺されたんです?」「親父?」 中部は怪訝そうに晃の顔を見た。「彼は長崎の息子
2024年1月21日 08:48
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(6)1(承前)「後悔しているのか?」 中部が訊く。「わからない。でも、ときどき不安になるんだ。俺はこのままでいいんだろうか? どうして、俺はこうなっちまったんだろう? どこで俺の人生は狂っちまったんだろう? ってな」 感情が昂り、とめどなく言葉があふれ出してくる。「たぶん、どこかで一本、道を間違えたんだろうな。そして俺はそれに気づかずに――
2024年1月20日 07:52
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(5)1(承前)「俺の協力って……どういうことだ?」「おまえのいうとおり、架空の麻薬組織を作ったとしても、その存在を立澤組に報せ、信用させるのは容易なことじゃない。しかし、その組織に元立澤組のおまえがいたとしたら?」「信用するかもしれないな」 長崎は口元を緩めた。「おまえは立澤組の内部事情にも詳しいだろう? おまえが組織の一員になってくれば百
2024年1月19日 04:23
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(4)1(承前)「立澤組を憎んでいるのか?」 中部は長崎に尋ねた。「ああ、もちろんさ」 すぐに答えが返ってくる。「だったら、我々の手伝いをしてみないか?」 中部は立ち上がると、長崎の顔を真正面から見据えていった。「……手伝い?」 長崎はきょとんとした表情で中部を見上げる。「どういうことだ?」「立澤組を一網打尽にしてやろう」「……潰
2024年1月18日 10:08
18.〈フェザータッチオペレーション〉の正体(3)1(承前)「……麻薬撲滅の秘密組織?」 洋樹はしゃっくりに似た声をあげた。「でたらめをいうな。西龍組の組長も組織の一員だったじゃないか」「西龍統治は麻薬をひどく憎んでいる。警察に協力してでも、麻薬を撲滅させたいと思っていたんだよ」「まさか……ヤクザなのに?」「あいつは一本スジの通った男だからな」「…………」 中部の言葉はまんざら嘘