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吉本興業・大﨑洋会長の退社と『居場所。』

吉本興業の大﨑洋会長が、2023年6月29日をもって退社されるというニュースが流れました。大学を出てから吉本興業ひと筋の大﨑さん。ダウンタウンを見出し、松本さん、浜田さんと共に歩んだその日々はいかなるものだったのでしょうか。

ぼくが大﨑さんのご著書『居場所。』の編集担当をさせて頂くことが決まったのが、いまから約2年ほど前です。その後、のべ60時間以上の取材をさせて頂き、2年がかりで本が完成しました。

帯には松本人志さんの「一気に八回読んだ」の推薦文が。

『居場所。』は、「ここじゃないどこか」を探し求めて孤独な日々を過ごしている人に向けた、生きづらさの処方箋のような本です。壮絶な人生を歩まれてきた大﨑さんが、孤独をどうやって"うっちゃる"かを説きながら、読者を「大丈夫やで」と包み込んでくれる、あったかくて切ない本です。

”誰もが知る” 松本さんや浜田さん、そしてさんまさんとの "誰も知らない" エピソードがギュッと詰まっています。特に、松本さんとの絆は、あったかくて、独特で、感動的です。

この本の取材が始まったとき、大﨑さんは2023年に会社を退社するとはお考えになっていなかったように思います。しかし、「本を書く」ことを通して、ご自身の「これまで」や「これから」と向き合い、70歳を迎える今年、会社を離れて新しい一歩を踏み出す決意をされたのだと思います。

その決断と前を向かれる姿が、ぼくはとても眩しくて、コンテンツの世界の大先輩がこうして前を走ってくださっている様子に、大きな勇気をもらえます。

『居場所。』に込めた思い

ご著書『居場所。』は、松本さんをはじめ、多くの芸人さんやスタッフの「居場所」を作られてきた大﨑さんだからこそのタイトルですが、じつはもうひとつ、ドラマが隠されています。

ぼくが出版の世界に入ったのは1993年。その翌年、世間をあっと言わせたセンセーショナルなベストセラーが誕生します。松本人志さんの『遺書』(朝日新聞出版)です。

『週刊朝日』の「オフオフ・ダウンタウン」
という連載が一冊になったもの

もともとは『週刊朝日』の連載。これがまとまって本になると、瞬く間に 250万部を超えるベストセラーになりました。続刊『松本』も200万部のベストセラーとなり、95年の年間チャートの1位と2位を独占することになります。

『遺書』の中には、次のような記述があります。
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『週刊朝日』にコラムを書くことが
オレにとってメリットがあるのか?
初めにこの仕事の話を聞いたとき、
正直、疑問であった。(中略)ところが、
届いた感想文を読んでチョット気が変わった。
年齢層もやや高く、ミーハーな内容も
ほとんどなく、しっかりした意見で、
オレは少し感動してしまったぞ、このヤロー!
(中略)やっと、ファン層の幅が広がる
というメリットがわかった。
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松本さんに、お笑いだけではなく、「執筆」という「場」を作ったのが、ほかならぬ大﨑さんでした。その後も、松本さんの場づくりに人生を捧げたといっても過言ではないはずです。

94年に『遺書』が出版され、それから30年近く経って『居場所。』が発売されました。この間、松本さんと大﨑さんにはどんなドラマと絆があったのか。そんなことに思いを馳せ、お二人の「つながり」を本で表現したい。

そう思って、『遺 書』(いしょ)の間に「場」をいれて『居 場 所』(いばしょ)というタイトルにしました。

本を開いて最初にある色紙(見返し)は、『遺書』と『松本』と同じ金色の用紙を使用しました。この用紙はすでに生産停止になっていて、残っている在庫にも限りがありましたが、なんとか初版分だけ使うことができました。

『遺書』のゴールドグレイという色の見返し用紙
『居場所。』が完成したときに、
『遺書』『松本』と並べて写真を撮る大﨑さん。


そのエピソードをBSよしもとの『お茶とおっさん』という番組で、松本さんに直接お伝えすることができ、感無量でした。

BSよしもと『お茶とおっさん』#16.17

大﨑会長、みんなを笑顔にするお仕事、本当にお疲れさまでした。きっと、これからも新しい挑戦をしてご自身の「居場所」をおつくりになるのだと思います。その様子をこれからもお手本にしながら、ぼくも前に進んでいきたいと思います。

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