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アメリカの出版市場と「夢」への挑戦

サンマーク出版は50名ほどの少数精鋭ながら、海外でビッグヒットを飛ばしていることで知られています。

こんまりさんの『人生がときめく 片づけの魔法』、故・稲盛和夫先生の『生き方』、そして川口俊和さんの『コーヒーが冷めないうちに』などは、世界の出版市場で注目されてきました。

先日、ロンドンのブックフェアから帰ってきたばかりのある出版社の方とお会いした際、彼にこんなことを言われました。

「向こうのバイヤーさんたちは口々に、『コーヒーが冷めないうちに』のような日本の小説はないのか⁉︎と聞いてくるんですよ」

以前は欧米での成功が極めて稀だった「日本の小説」が、いまとても注目されているようです。

「Big5」が牛耳るアメリカ出版市場

ぼくは海外の出版市場について、会社の「国際ライツ部」の女性ふたりから教えてもらっています。世界を知り尽くした腕利きの「ライツ職人(本人曰く)」で、『片づけの魔法』『生き方』『コーヒーが冷めないうちに』などの成功は、彼女たちの存在なくしてありえませんでした。

ぼくたちサンマーク出版のみんなに「誇り」と「希望」を与えてくれている女神のような人たちです。

そんな彼女たちが、今日は「アメリカの出版市場」についてひとつの記事を紹介してくれました。

アメリカの出版市場は、日本のそれとは大きく違います。

・Penguin Random House
・Hachette
・HarperCollins
・McMillan
・Simon&Schuter

通称「Big5」と言われる大手5社の売上は、アメリカ出版業界全体の売上のなんと80%以上を占めています。ちなみに『コーヒーが冷めないうちに』のUS版は、HarperCollinsから発行されています。

この記事によると...

◎年間の新刊点数のうち10~20%がBig5から刊行される。

◎2021年、出版業界内の「書籍販売」のみに限定した場合、Big5の売上は120億ドル(約1兆6,785億5,644万円)を超える。

◎最大手はPenguin Random House(PRH)で全体の39%、続いてHachetteの25.4%。

◎Big5の営業利益は年間4.8%のペースで伸びている。2021年は9.92%UPだった。

◎2021年にPRHがSimon&Schusterを買収しようとしたが、米国司法省(DOJ)が反トラスト民事訴訟を提起し、PRHが敗訴して買収失敗。もしも、この買収が成立していたら、PRHグループが全体の50%以上の売上を占めることになった。

といった内容のようです。Big5は利益シェアの割に「出版点数」が少ない。一冊一冊をしっかり、丁寧にプロモーションしていくんですね(これには日本の出版社も見習うべき点が多いはずです)。

そのため、"ライツ職人"の彼女曰く、そこに入り込むのはアメリカ人著者でも「夢のまた夢」のようです。世界中の著者たちがそんな「針の穴」に通すことを狙っている中で、日本人著者がそこに入るというのは、とんでもない確率なんですね。

でも、だからこそ「夢」があって、コンテンツに人生を捧げるぼくらの活力になっています。

一方で、こうも思います。日本の出版市場はフェアでありがたいなあと。日本にもBig4の出版社があります。この大手4社は出版市場において大きな存在感を持っていますが、では、ぼくたちのような中小の出版社に活躍の場がないかというと、全くそんなことはありません。

数千人いる会社に、数十人の会社が、年間チャートで勝つようなことが起こるし、書店においても大手出版社の本だけがいい位置に並ぶ、などということはありません。そういった点で、日本の市場も、書店も、とてもフェアです。小さな版元にも大きなチャンスがある。

ぼくたちは、フェアな日本の市場でメガヒットを作り出し、アンフェア⁉︎なアメリカの市場にその翻訳版を送り込む。そんな未来を妄想しながら日々、コンテンツづくりに励んでいます。

ちなみに『コーヒーが冷めないうちに』は、いま世界で350万部。台湾、イタリア、フランスでベストセラーになり、イギリスではシリーズ100万部を超え、先日、人口3800万人のポーランドでも10万部を超えました。

全世界2000万部を目指し、これからもコーヒーの「冷めない」挑戦は続きます。

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