パースのための画角の話
ひとつ上の段階の「マンガパース術」
「画角」は、主にカメラなどで使われる言葉です。
背景を描くために必須の知識…ではありませんし、ちょっと難しいかもしれません(実際、「かんたん! マンガパース術」では、画角の細かい理屈の説明は省いて、画角という用語は使わず、考え方のポイントだけを書きました)。
が、理屈を理解できればパースの知識がより深くなります。
興味のある方はお読みいただければと思います。
人間の目はどれくらいの範囲が見えるか
画角の話の前に、まず人間の目で見える範囲の話から。
人間の視界(視野角)は、およそ横200度、縦125度(個人差あり)。
「そんなに広いの?」と疑問に思う方には、簡単に確かめる方法があります。両耳を手で抑えて、少しずつ離して見て下さい。真横にある筈の手の小指辺りが、なんとなく見える筈です。
視野角全部を描こうとすると…
200度の範囲が見えるという事は、一つの道の両端(二つの消失点)が両方同時に見えるという事です。絵の中に無理矢理納めると、こんな感じ。
これはいわゆる、「魚眼パース」の絵ですね。おそらく、ふだんこんな景色を見ているとは感じないでしょう。
その理由の一つとして、「人間の意識は視界の中心にある」ことが挙げられます。200度全部をはっきりとは見ていないのです。
人の目では実際には、中心以外の形や色は鮮明に見えていません。視覚ではぼんやりとみえている筈の荒い情報は、脳が補完しているので、意識としては違和感を感じないのです。
この鮮明に見える部分、これが視野角の中で「人間が自然な形と感じる」範囲です。
画角とは「画面がうつる範囲」の角度
視野角をふまえて、いよいよ画角の話です。
通常、写真を撮ると、現在見えている風景全ては写らないですよね。これは、人間が見える範囲(視野角)と、標準レンズの範囲(画角)に差があるためです。
下の図の、フレーム(レンズ)から覗いた緑の部分の角度、これが「画角」です。
大体40~45度(※1)が標準的な画角のレンズとされます。
人間の視野角とくらべるとだいぶ狭く感じますが、切り取られた風景の画角としては、これぐらいが自然に見える範囲なのです。
つまりこの標準レンズの画角は、そのまま「肉眼に近い絵の画角」の基準として考えて良いでしょう。
広角、望遠の画角
観察者からフレームを前後に動かす事で、画角が変化します。
観察者に近づけると広角の画角(60度以上)になり、遠ざけると望遠(30度以下)になるのです。※2
(上図で、画角が変化しても、フレームの大きさは変わらず、距離だけが変化する事に注目しましょう。この距離の違いが、レンズで言う「焦点距離」の違いです)
では、画角の知識をパースに生かしてみましょう
画角と消失点の数の関係
「かんたん! マンガパース術」で「基本的に立方体の消失点は、画面に一つだけ」というルールを紹介しました。
これについて、ここまで読んでピンときた方もいるでしょう。
画角45度を自然な絵の標準として考えると、必然的に消失点は一つしか入りません。
絵に消失点が二つ以上入るためには、画角は90度以上必要です。これはレンズで言えば超広角相当で、絵としては特殊な画角になります。
画面と消失点の位置の話
これも「かんたん!~」で書きましたが、消失点の位置はまずラフを描いて、そこから決めるべきです。「コマ(フレーム)からこれくらい離れて…」といった決め方は、あまりよくありません。
…が、そこをあえてコマ(フレーム)から自然な消失点の位置を考えてみると、大体したの様になります。図は消失点とコマ(フレーム)の関係がわかりやすい様、斜め45度から見た対象の構図です。
大雑把に言うと、消失点とコマ(フレーム)の位置関係は、コマが縦長か横長か、で変わります。
コマが縦長でも横長でも、自然に見えるためには消失点同士が同程度に離れている必要があります。
縦長のコマは、消失点はフレームからかなり離れます(いわば横の画角が狭いわけです)。
横長のコマは、消失点はフレームに近づきます(横の画角が広い)。
真ん中のコマの絵を拡張してさらに横長のコマにしたい場合は、消失点を外側に動かす必要があります。(多分わからないと思いますが、下の絵はパースに合わせて、真ん中の絵の線を引き直しています)
※これらはあくまで基本ルールです。ディフォルメなどの絵の表現として、あえて消失点が二つ入っている構図を描く等は自由です。
必ずしも覚えなくても良いです
絵は、「見て手で描いて理解するタイプの人」と、「理屈で理解するタイプの人」がいると思います。(両方兼ねているのが理想かもしれませんが)
最初に書きましたが、絵を描くにあたって、「画角」は必ずしも必須の知識ではありません。が、理屈で理解するタイプの人は、画角がわかるとパースのいろいろな疑問点の解決に役立つと思います。
望遠、広角の使い分けについてはこちらをお読みください。
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