プリーチャーズ:落日のアフターマス

■概要
 主要参加者人数:200氏族(氏族は男性の家長と妻、直近の部下である
数名の「家族」、その下の奴隷で構成)
 本拠地:St.ルイス近郊
 業務:村落の維持管理、農耕、宗教

■拡大家族の再誕――プリーチャーズとは何か
 プリーチャーズの原型を作ったのは、国内に多数存在していた「プレッパーズ(備える人々)」だ。何らかの原因で文明が崩壊し、既存の価値観が役に立たなくなる日が来ると考えていた人々がいた。彼らは体を鍛え、物資を貯蔵し、電源を確保し、シェルターを作ってその日に備えた
 そして世界は滅びた。恐らく、彼らが考えていたような崩壊ではなかったのかもしれない。ともかく、MEDEの襲来によって文明社会は過去のものとなり、《大空白》に住まう人々は自らの力で生きることを強いられた

 そこで強みを発揮したのが崩壊へと備えていたプレッパーズだ
 特に、長期のサバイバルを予見して農耕・牧畜などの知識を身に着けていた人々は人のいなくなった荒野で食物の栽培を始めた。飯あるところに人集まり、やがて集団を形成する。たった一人のサバイバルは古典的な農耕生活へと発展した


 やがて、プレッパーズ集団の中で頭角を現すものが現れた
 【アントニオ・ザッカリー】だ。彼は持ち前の指導力とカリスマ的な魅力で人を集め、己の理想である原始農耕社会を再現した集落と氏族集団を形成した。《プリーチャーズ》が誕生したのは、《大空白》成立から半年ほど経ってからのことだ

■プリーチャーズの組織図
 プリーチャーズは《大空白》東部の農耕に適した地形に広く分布している。一個の大集団を形成するのではなく、氏族と呼ばれる小単位がいくつも点在しているのだ。氏族同士の繋がりは緩く、たまの情報交換や物々交換でやり取りをかわす程度だ。しかし氏族長同志は『兄弟』と呼び合い、強い絆で結ばれているという
 氏族は「家長」と呼ばれる男性(すべて男性で、例外はない)を頂点とするピラミッド組織で、氏族内で行われるありとあらゆる事柄を決定する絶対権力者を擁する。一般的には補佐役として「夫人」と呼ばれる女性がつき、更にその下には会計、森番、倉庫番など部門単位のリーダーを務める「息子」が存在する。血縁関係は存在しない場合が多く、契約によって家族関係を構成する
 その下には実務に従事する一般住民、またの名を「奴隷」がいる。奴隷が上級役職に上がることは決してない。そして奴隷たちはその待遇に満足している。なにせ、プリーチャーズの集落にいれば少なくとも食うに困ることはない。自由と尊厳を天秤にかければ生死の方が重くなる、という人間は多い

■プリーチャーズの生活
 プリーチャーズの生活を端的に表現するなら「質素倹約」と「自給自足」の二つで事足りる
 プリーチャーズは村落が一体となって農業生産を行う。《大空白》成立から二年ほどしか経っていないが、彼らはその中で(順調に存続出来たものは)すでに二回の収穫を経験している
 彼らは農村での集団生活を営む。村総出で作付けを行い、その収穫物と森での採集と小規模な狩猟で必要な食料をほとんど賄っている。栽培作物はトウモロコシ、小麦、カブなど様々で、集落の住民が食べていく以上の量を作り出している。残った作物は保存食にしたり、他の集団との交易に使い外貨を獲得したりしている

 なお、彼らが作っている作物の種はどこかから手に入れたバイオ作物のものだ。病害虫に強く、荒れた土地でもよく育ち、更には自家増殖すら可能な作物がなければ、皮肉にもこの原始的な生活は成り立たないだろう
 日常生活においては、プリーチャーズはキリスト教をベースにした信仰形態とそれを基にした社会規範を頼って生活している。家族を愛し、隣人を愛し、欲を抑え、家長に従う。個人の意思決定などは重視されず、むしろ疎まれる傾向にある

■集落の防衛
 デスパレードな盗賊と危険なMEDEが跋扈する《大空白》の荒野において、非暴力という手段は取り得ない。プリーチャーズは暴力を好まない集団だが、自衛のために武力を持たざるを得なくなっている
 プリーチャーズの矛にして盾である武力は「聖騎士」と呼ばれ、森番の上位に位置する。基本的には息子の中から選ばれる聖騎士は装甲歩兵(彼ら風に言うなら「天の戦車」(メルカバ))乗りで、集落防衛の要となる。文明の毒を克服出来るのは優れた意志力を持ったものだけで、選定は厳格だ
 また、森番の中から「守護戦士」と呼ばれる対MEDE、対装甲歩兵兵士が選ばれる。彼らは特に屈強で、勇敢で、集落防衛のため携行型の対戦車ロケット砲を持ち、危険な戦闘に果敢に挑んでいくという

■プリーチャーズの真実
 アントニオ・ザッカリーは南米系麻薬カルテルのドンだ。休暇中にMEDE独立に巻き込まれたザッカリーは、逃避行を続ける中でプレッパーズの女性【マリーナ・メシェル】と出会い、意気投合する。近代文明と自由主義こそが現代社会のゆがみを統べて生み出している、という共通の考えを二人は持っていた。そして、政府の目が届かなくなった《大空白》に理想の世界を建立しようとした
 プレッパーズは上位階級である家族と下位階級である奴隷の間に絶対的な差が存在している。それを可能としているのがザッカリーの精製する麻薬だ。肉体的依存と被害は最小限に、精神的依存を最大限にするよう調整されたドラッグを使い、何も知らない人々を縛り、奴隷に堕させるのだ
 家長となるのはザッカリーが外部から呼び込んだドラッグ・カルテルのメンバーであり、家族になるのは彼らの行いを知り、尚も賛同する人間たちだ。家長に従えば安全が保障され、食料の心配をする必要もなくなる。奴隷相手に様々な『特典』をも得る。非道なプリーチャーズの理念に賛同する人間は意外なほど多い
 プリーチャーズにとって最大の懸念事項はMEDEの存在である。箱庭の楽園を、機械の怪物たちは何のためらいもなく破壊するであろうことは明白だからだ
 そのため、プリーチャーズは表向き文明を否定しながらもGOHやトレイダーズといった他勢力と接触を図っている。食料、金銭、ないしはドラッグを対価に集落の防衛を依頼しているのだ
 嗜好品としてのドラッグは《大空白》の中で意外と需要があり、現在のところ共生関係は上手くいっている

■プリーチャーズのパーソナリティ
・アントニオ=ザッカリー
 ロール:コマンダー 年齢:47 性別:男性 身長/体重:168/83
 プリーチャーズ最大氏族の家長を務める男性。丸々と太ったダルマめいた体格をしており、禿げあがった頭と柔和な笑みが特徴。人当たりがよく、氏族の全員から慕われている
 しかし、これは偽りの姿だ。ザッカリーは南米麻薬カルテルのドンであり、ドラッグとカリスマ、そして暴力を用いて自身の理想世界を《大空白》に現出させようとしている危険な人物だ。冷徹で酷薄な計算を常に頭の中で働かせており、不穏分子あれば自らの手で処分することを厭わない
 危険な戦闘用サイバネティクスをいくつもインストールしており、見た目に似合わず高い戦闘能力を誇る。プリーチャーズの危険に気付き、暗殺を試みた人間は多くいるが、そのすべてが返り討ちにあっている

・“マダム・マリーナ”マリーナ=メシェル
 ロール:プリエステス 年齢:36 性別:女性 身長/体重:177/56
 ザッカリーの妻を務める女性。普段は家の中に籠り、住民を慰撫する時以外は決して外に出てこない。《大空白》の過酷な世界において、自慢とする白い肌と金色の髪のコンディションを保つためだ
 マリーナは男性が絶対的な権力を担う家父長制を支持し、ザッカリーの方針を支持している。彼女は最大の権力者であるザッカリーの裏に立つことで、最高の安全を手にしたのだ。目論み通り


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