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shumariにおけるポエム放出と研究者の言葉

シュマリ。
といえば、釣り人の間では聖地でもある朱鞠内湖なのです。
もう2年?3年?くらい前に、朱鞠内湖のブランドブックのライティングをしておりました。
ブランドブックはたぶんレイクハウスシュマリに行ったらあると思います。

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↓shumariウェブサイト
http://www.shumarinai.jp/

不均質さを保つ

東京の(その世界ではよく知られた)コンセプトディレクターが入ってたので、東京出張時に打ち合わせして、ああ、こういう、人を惹きつける魅力を持っていて、感覚的でありながら(たぶん)緻密で、人を巻き込んで、振り回して、「もう~っ!」ってみんなに言わせながら、そのくせ誰よりも人を大切にして細かなケアをしていく、ニクいプロデューサーって久しぶりだなーと。
彼に「黒井さん、どんな感じにしたい?」と聞かれて、なんか宇宙と時間と仏教の話をして、こういう、よくわかんない、哲学のような宗教のような通じる人にだけ通じるようなポエムを書きたいな~とお話ししたのでした。
(初対面でそういう話をさせる彼はすごいなーと。実績も経験もある編集者であり、自ら筆を執る優秀なライターでもありながら、おもしろがって「うんうん!いいね!」と耳を傾けてくれる姿勢は見習わなきゃなと)

そのブランドブックを作るための取材の旅で、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター雨龍研究林のセンター長、吉田俊也教授にお話しを伺いました。そのインタビューが、今読んでもよい記事だなーと(自画自賛)。ここに出てくる、

「不均質さを保つ」

っていう言葉が私の中でもとーーーーーっても心に響いて、なんでか背徳感やエロティックさも感じ、調和でもなく、均衡でもなく、破壊でもなく、創造でもなく、そしてなにより「多様性」ではなく「不均質」を保つ。
このキーワードについて、何度も何度も質問を繰り返したのです。
研究者の言葉は深い。
↓↓ぜひ読んでくださいませ
http://www.shumarinai.jp/lakeshumarinai/interviews/interview-yoshida/

このインタビューを受けて生まれたイメージを文章にし、ブランドブックに掲載したのですが、私の中で「これはおもしろいな・・・」と思ったものほど英文になってしまった(日本語と英語の、翻訳ではないそれぞれの文章がある冊子なのです)のです。なので、そういえばと思いだして、ついでにここで、英訳前の文章を掲載したいなと。

ポエム1

「自然界のすべての構成物は数から生じるハルモニア-調和-から成り立っている」

古代ギリシャでは、数学、幾何学、天文学と同等に「音楽」を世界の本質を知る最も重要な学問としていた。そしてすべての調和・秩序が保たれている状態を「コスモ」と呼び、哲学者でもあった数学者のピタゴラスは「宇宙」を表現するためにこの語を用いた最初の人物である。
天地が、宇宙が生まれる前、そこには「カオス-混沌-」があった。いや、「あった」と表現するのは正しくないのかもしれない。カオスはありとあらゆるものを含有し超越した、無限の状態を示すものだからだ。そしてその無限なる有から、コスモが産まれたのだという。
しかしこのコスモの中に立ち、思うのだ。ここはカオスでもありコスモでもあると。
一つひとつの微細な音が、常に無秩序に在り、常に調和して在る。

そして私は気づいた。彼らは孤高のようにふるまっていながら、実のところ、そのふくよかな音楽を誰かに聴かせたいのだ。
だから、その美しい姿で私たちを魅了するのだ。
もう一度目を瞑り、耳を澄まそう。風が首筋をやさしくなでてくれる。

ポエム2(こちらはブランドブックに既出)

私たちは、もの言わぬ何物かから、何かを託されている。
飢え、凍えながらこの厳しい地を切り拓いた先人たちが、
心の奥底で、言葉にならない想いを語りかけてくるのだ。
おまえたちは、この土地をどう生きるのか。
おまえたちは、何を成すのか。
おまえたちが、現代と自然をつなぐ、媒介者だ。
つなぐものはより大きく、つなぐ先はより遠い。

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これは私が地元にUターンするときに「なぜ帰るのか」という問いを繰り返した結果生まれてきた感覚で、これが不思議なもので、北海道で地域活性に関わる人にはよく共感されるけど、道外の人には「へー、そんな感覚ないなぁ」って感じなんですよね。

吉田林長のインタビューで掲載されている写真は、北海道開拓前の、なんなら1,000年前の風景。私はこの森には2回ほどご案内いただきましたが、行くたびに、息を飲むんです。
この森を切り拓き、厳しい寒さを乗り越え、人を根付かせたというのは筆舌しがたい苦労があったはず。
そんな思いから生まれたポエムですね。

ポエム3

幸せとはなにか。この問いは、人類の永遠の問いの一つでもあるかもしれない。宗教に始まり、哲学、倫理、科学、社会学、様々なアプローチで人はこの問いに応えようとしている。近年の幸福学の研究によると、人は「日常の中にある小さな変化」に気づけると、幸せを感じやすくなるという結果がでた。大きな変化ではなく、ずっと同じでもなく、小さな変化が「幸せ」の感覚を生み出す。
そんな絶妙な変化、しかも恒常的に続く変化はいったいどこにあるのか。そう、自然の中にあるのだ。毎日、カヌーにのり川を見つめ、守る人がいる。彼は毎日眺める周りの木や山が、1日として同じことはないのだと語った。必ず、昨日と違う。「変化し続ける」という不変が彼を豊かにしている。自然を相手にしている人は、深い眉間の皺の奥に、あたたかな笑顔を持っている。それは、自然が彼らに変化を提供し、また、彼ら自身も自然の小さな変化に気づく達人だからだ

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英文になったので、最後まで言葉の精査と作り込みをしなかったため若干、間が抜けてますが、まあいい文章だなと。

ウラ話

吉田林長のインタビューは実は私が書く予定ではなかったのですが、そのインタビューの前夜に朝まで飲み続けた結果(私は途中で寝ました)、お話しを聞くはずの人が若干機能せず(笑)、サポート的に、書く想定のないまま、場をつなぐようなフワっとした質問を繰り出していたので、その後、急きょ書くことになった時にライティングにけっこう苦労しました・・・。
なんかそんなに意識してないけど、やっぱりインタビューするときって、文章をゆるやかに構成しながら質問してるんだなーと自己認識した次第です。

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