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67.ダラスマーベリックスのボルガリス問題をNBA素人の会社役員が考える

こんばんは、くろぎです。早いものであっという間に7月が終わってしまいましたね。熱中症と過度な日焼けに気をつけながら8月も元気に過ごしましょ〜〜🌞

本日のお題はこちら。

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急に毛色の違うお題ですが、そういうことです。前回の記事の実演といきましょう(?)。

実はこのお題、単なるバスケ界隈のスキャンダルではなく「組織」という大きなくくりに関わってくる話なので私みたいにNBAについて何も知らない人にとっても面白いかも。

はじめに:チーム・登場人物の紹介

いきなり本題に入ってしまうと置いてけぼりの読者がほとんどになってしまうと思うので、まずは今回のお題を検討するために必要となる基本情報をNBA初心者なりにまとめてみます。
解釈に間違いがあったらこっそり教えてください。

✔︎ダラスマーベリックス(略称:マブス)
NBA(アメリカの男子プロバスケリーグ)に所属するチームの一つ。
現在開催中のオリンピックの男子バスケでも日本選手はそっちのけでTwitterトレンドをかっさらった選手、ルカ・ドンチッチが看板選手として所属している。

会社組織で言い換えると、無論マブスが会社そのもので、選手が社員にあたる。

✔︎マーク・キューバン
実業家でありマブスのオーナー。
読んで字の如くマブスを所有している人。元からNBAの大ファン。

会社組織で言い換えると社長、もしくは大株主にあたる。

✔︎ドニー・ネルソン
マブスのゼネラルマネージャー(GM)を2005年〜2021年6月まで担っていた人物。1998年のアシスタントGM就任から起算し、24年に渡ってリーグ制覇やドンチッチなどの有力選手獲得などのチーム成長に寄与した功労者

GMとは一般的にチームの運営方針やコーチ・選手の人事権、予算といったチーム運営に関わる大半の決定権を持つ総責任者のような役職。

会社組織で言い換えると難しいが、その機能から役員・最高執行責任者(COO)か、もう少し細分化した見方をするのであれば経営企画部と人事部の部長を兼務しているような解釈ができる。

✔︎リック・カーライル
マブスのヘッドコーチ(HC)を2008年〜2021年6月まで担っていた人物。ヘッドコーチとしての戦績は指揮した試合の勝率で評価できるが、彼は勝率53.7%で現役3位という好戦績を収めている。

会社組織で言い換えれば人事部人材開発課の課長、といったところか。

✔︎ボルガリス(今回のお題のキーパーソン)
元スポーツギャンブルの分析専門家。かっこいい響きだが、つまり勝ちまくって儲けたギャンブラー
2013年にはとある取材に対し「ギャンブルで大勝ちするための分析や洞察といった全ての工程こそが、NBAリーグのGMよりも私の方が概ねより良いチーム編成を組むことを可能にすると信じている」といった旨の回答をしている。

2018年、彼のNBAに関する豊富な知識やリサーチ力をマーク・キューバンから評価され、マブスのフロントオフィスに定量的研究開発チームのディレクターという肩書きで加わる。

会社組織で言い換えると、いわば社長が外部から招聘してきた「アドバイザー・コンサルタント」であり、経営陣の一員として機能している存在と言える。

ボルガリスとドンチッチの不仲説が報じられたと思ったら今度はGMとHCがマブスを離れる!?

さてここからが本題です。サンフランシスコに本社を置くスポーツ報道社、The Athleticは2021年6月14日(現地)に下記の記事を公開しました。

記事タイトルを訳すると
「マブスのフロントオフィス内部──マーク・キューバン擁する影のGMが、ルカ・ドンチッチとの亀裂を引き起こしている」
と書かれています。

「影のGMって中二病チックな表現だけど誰のこと?」と思うかもしれませんが、これはボルガリスのことです。この記事の報道内容こそが今回のお題である「ボルガリス問題」が取り沙汰される発端となります。

かいつまんで報道内容を紹介すると、

・ボルガリスのマブスにおける実際の権限は肩書き以上のもので、特にドラフトやトレードなどでは他のフロントに相談することなく独断で獲得選手を決定したり、チームを優勝に導き権力を揺るぎないものにしていたHCのカーライルが決定したローテーションやラロスター構成などへの発言力も持つため、影のGMと呼ばれている
・しかし、マブスの戦績はボルガリス就任以前と変わらず、ドンチッチ頼みの状態。また、ボルガリスは負けそうな試合では最後まで試合を見届けることなく帰宅するなど、選手へのリスペクトに欠ける行動を取る
・そんな彼がドンチッチと今シーズン中に度重なる口論を繰り広げており、良好な関係が築けていないとされている
・ボルガリスをはじめとするマブスの幹部(フロントオフィス)とドンチッチの対立構造が続くと、ドンチッチがマブスを離れるのではないかと懸念

ボルガリスはこの報道内容を否定しており、ドンチッチも来季のリーグ開幕までにマブスとの契約延長を締結する見込みであると報じられているため、真偽のほどは定かではありません。

しかし、偶然か必然か、上記の報道から2日後の6月16日(現地)、マブス広報TwitterがマブスとGMのドニー・ネルソンの離別を発表しました。

さらに、その翌日である6月17日(現地)にはHCのリック・カーライルが辞任することも明らかになりました。

たった数日の間に長年チームに貢献してきた2人が離れる事態は、あまりにも不自然でしょう。この一連の流れはマブスを勝利に導いてくれるスター・フランチャイズ選手であるドンチッチに長く在籍してもらう上で懸念要素となるフロントオフィスの刷新に着手しているのではないか?という見方がされています。

何よりも、肝心のボルガリスも今季で契約満了となります。今回の報道以前より「就任前はGMより良いチームを組めるだの大口叩いてたくせに結果に繋がるような働きを全然してねーじゃん!」とファンからのヘイトも買っているボルガリスに対し、マブスがどのような対応を取るのか注目されています。

……ただし、ボルガリスにオファーを出した張本人であるマーク・キューバンは現在も彼の仕事を非常に評価しているようです。

この問題を会社に置き換えてみると?

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この話は組織編成の難しさを再認識させてくれますね。会社に置き換えて簡潔にこの事の顛末をあえて偏見ありきで表すのであれば

・社長が外部からうさんくさい似非コンサルタントを引っ張ってきた
・似非コンサルタントは我が物顔で経営を乗っ取った
・そのわりに業績は上がらないし社員へのリスペクトがなく、有能社員から反感を買った
・同時に、他の社員にも波及して社への不満を募らせる恐れも同時に高いと考えられる
・その影響で事実上権限を失った役員や責任者が会社を辞める(クビなのか、引責なのか、真実は謎)
・社長は似非コンサルタントがお気に入り(厄介)

ということですね。

ここからはこの問題の良くなかった点を検討してみようと思います。

ボルガリス問題の良くないポイント①素人の重用

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ボルガリスは確かにチームや選手の分析を精緻に行うことでギャンブルで勝ってきたのでしょう。その力を活かせばマブスが弱みとしていた選手獲得をカバーできるのでは、というマーク・キューバンの思惑で契約が締結されましたが、その決断が大きなミスだったと言えます。

言うまでもなく試合の勝敗を予想するために必要な能力があるからといって、勝てるチームにするための運営メンバーとしての素質もあるわけではない。つまり、フロントオフィスとしては全くのド素人でしかなかった人物を重用したことが全ての元凶でしょう。

フロントオフィスのオファーはオーナー1人で決めるのが普通なのかどうか、私には分からないですが少なくともチーム運営の中枢を担う可能性のある人物へのオファーとなるのであれば、強く秀でた一つの能力だけを見るのではなく、人格面含めて多角的に見て適性があるかどうかを慎重に検討すべきでしょう。

前例のない攻めの人事(に当てはまるのか?)を行うことで選手獲得の課題に突破口をあけたかったとしたら、それこそ権限をごく限定的に与える形でのコミットを徹底するのが契約に際して最低限必要な条件だったでしょうね。ですが、どうやらマーク・キューバンは彼のギャンブラーとしての実績を過大評価したきらいを感じましたね。

というか、この記事を書くために色々調べてて思ったんですが、このマーク・キューバン、人としては悪くないんでしょうし、選手に試合頑張って欲しい!みたいな気持ちはあるんだと思いますが、肝心なチーム運営の内部事情のような細かいところはあんまり分かっていないというか、興味がないんだろうなぁ……という印象を受けました。イニシアチブをとってチームをコントロールすることが得意ではないオーナー、という目で見ていくと後述するボルガリス問題の解釈もすっと筋が通りますね。

ボルガリス問題の良くないポイント②「対人」意識のない働き方

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ギャンブルとチーム運営。前者は1人で完結できますが、後者はそういうわけにはいきません。

フロントオフィスのメンバーはもちろん、選手それぞれとしかるべきコミュニケーションを図り、チーム全体として目指すべき到達点は何か、そのためにお互いに何をすべきなのかを共有・合意形成した上で自分に与えられた役割を全うすることが求められます。これは会社に限らずサークル単位の組織でも全く同じことが言えます。

ここからは多分に私の憶測で語りますが、彼の仕事のやり方は「自分の持つ仮説を実証する」ことこそがチームにとって最善であると思い込んで越権行為を働いているようにも見えます。ギャンブルで賭ける時の思考フローをおそらくそのままチーム運営の現場でもベースとして適用してしまっているがゆえに、ひとりよがりとなってしまっているんです。

しかし、マーク・キューバンにボルガリス自身の声が届きやすく、しかもそれを評価されているという一点でその歪なパワーバランスが通用してしまっていることがしんどいポイントですね。

自分以外のメンバーや選手の働きを軽んじていると言うか、リスペクトの念がないからこそ「影のGM」と揶揄されるような振る舞いができてしまうんだろうなぁと思いました。

根本的には先日の記事で私がプレイヤーとして働く時と役員として働く時に求められる価値が異なると話したのと同じことです。スポーツギャンブルの分析家からフロントオフィスの一員と立場が変わったのであれば、「良し」とされる仕事の仕方はその両者間で異なっているはずなのに、そこのアップデートを彼は怠っているということです。

ボルガリス問題の良くないポイント③ボルガリスを制止する存在・機能の不在

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既存のフロントオフィスメンバーは彼のそのような動きを制止するというか、グリップすることはできなかったんですかね……あれ、もしかしてオーナーにとどまらずフロントオフィス陣営は全員ボルガリスの動きを評価している説ありますか???そんなことある???ないよね??

そう思ってしまうくらい運営体制内でのストッパー不在を感じてしまった。彼の暗躍に対する言及がタブーとされるような空気感がフロントオフィス内にあったんだとしたら、惨状ですね。

それこそ、会社に置き換えればフロントオフィスは経営陣にあたる組織だと思います。そして、みなさんご存知の通り株式会社の場合は役員の動きを監視・評価する機能としての役員会や株主総会が存在しており、それによって健全な運営を促している部分があります。

しかし、マブスのフロントオフィスではそれらに値する機能が不全だったと言わざるを得ないでしょう。自浄作用のない組織は腐敗する一途を辿るしかないのでそれだけは避けたいところですね。

ボルガリス問題の良くないポイント④功労者が組織を去ってしまう

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これに関しては私がNBA無知ということも響いてきそうなので捉え方が間違っている説もあるので優しく教えて欲しいんですが、なんでボルガリスではなくドニー・ネルソンとリック・カーライルがチームを離れることが「フロントオフィスの刷新」になるのかよくわからん。

カーライルに関しては元々のコーチングのスタイルでドンチッチ含めチームの主要選手との摩擦を生んでいたこともあったという意味では、まぁ確かに刷新になるのか?と一瞬考えもしたものの、ボルガリスの指示によって試合で起用する選手も決めていたという背景を考慮すると、

この一連の流れはマブスを勝利に導いてくれるスター・フランチャイズ選手であるドンチッチに長く在籍してもらう上で懸念要素となるフロントオフィスの刷新に着手しているのではないか?という見方がされています。

ってニュース概要をまとめた章で記載したものの、ボルガリス派閥のメンバーが多数派じゃないとこの表現は正しくないのでは。え、やっぱ多数派なのかやっぱり???(困惑)

今までの流れを汲んでまとめれば、素人が暴走して組織をかき乱すと、有能な人ほど組織に見切りをつけて早々に離脱してしまうという悲しい事案としてくろぎは解釈しています。

刷新と表現すれば聞こえはいいが、権力をボルガリスに乗っ取られたことで思うような責務を果たすことができないと嘆き憂いた功労者がマブスの内部事情を報道されてしまったことで踏ん切りがついて、チームを去っていったようにしか見えないんですけど、どうなんですかねこれ???

ボルガリスも今季で契約満了となります。(中略)マブスがどのような対応を取るのか注目されています。

「再びオファーはしない方向だ」という報道もある一方、「何らかの形でボルガリスがフロントオフィスに残る可能性もある」と指摘されているので結局どうなるのか誰にもわからんというのが現状だと思いますが、これでボルガリスを切らなかった時のチームの行く末がとても心配です(こなみ)

お互いを尊重しあう姿勢を持って人と何かを成し遂げたいですね!

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長々と書きましたが、究極的にはこれですね。優しい世界。

人が集って組織となり、何らかの目的達成のために協働するのであれば自分の能力や価値観に驕り高ぶることなく、尊重と信頼をしあって役割の棲み分けをしないと簡単に混沌と化してしまうなぁとこの一件で学びました。

個人的には適材適所、マネジメントの大切さを痛感してお腹が痛い。マネジメント難しいよね〜〜〜〜〜〜

以上です!

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