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Sとの会話

こんな夢を見た。
大崎駅から少し歩いた森の中に広いアートスペースがある。
これは、B社が運営する現代美術家のSの作品のみを展示する空間なのだ。
コンクリート造りの円盤のような形の建物が半分崖に突き刺さり、外に出ている円周の部分には窓ガラスがない。
 観客は靴を脱いで室内に入る。
 入ると内部には大きな蓮池が合って、Sは池の前に座り、長い竿のようなものを使って蓮の位置を調整している。池も彼の作品で、公開制作を行なっているのだ。皆、池の周りに座りながら、Sの話を聞いている。
 時折、観客からSに向かって質問が出る。
「この床に敷かれたカーペットの材質は何の材質なのですか?」
「これはね、アルミスポンジを敷いたものなんですよ。濡れてもすぐ拭けるように」
「Sさんにとって表現とは何ですか?」
「それは、未知の世界に到達することだね」
 建物の入口にはミュージアムショップがあって、ドーナツのように中心が空いているカウンターの上にSの画集など著作が置かれている。
Sがカウンターの中に入ってそうした作品を販売するのだ。
 名刺大の黒っぽい箱が置かれている。
私がそれを手に取ると、Sは言う。
「これは珍品、80年代にニューヨークの画廊で個展を開いた時に作ったものなんですよ」
箱を開けると折り畳まれた説明書のような紙の綴りがいくつか入っている。私が開いたのは京都の仏像を撮ったシリーズのものだった。
他にもジオラマを撮った作品や海を撮った作品も入っている。
値段を聞くと1000円だった。
Sは1000円札を受け取ると、「タダみたいな金額だよ」そう言って、何故か100円を私に返した。

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