固定種やF1品種とは何か?
「固定種から改良された新品種とF1はどこが違うのでしょうか?」この質問の答えを理解するには、前提知識として新品種の作出方法を理解する必要があります。バイオテク技術を除いた場合、固定品種から新品種を作出する方法には大きく3つあります。
【突然変異育種】
イネ科やマメ科などの自家受粉性の作物の場合、突然変異遺伝子が顕在化(ホモ化)しやすいです。例えば粳米品種→糯米品種、赤花エンドウ豆→白花エンドウ豆など。したがって変異個体を発見したら、それがそのまま新品種となりえます。
【選抜育種】
他家受粉性の強い作物の場合は、集団(品種)の中に遺伝的なバラつきが多く、例えば大根の場合は何百本も育てると細長い・丸い・色違いなどの個体差が生じやすい。
したがって青首大根の固定品種の中から、特性の似た個体として『丸い大根』を選抜して自家採種を繰り返すと、元の青首大根とは異なった特性の集団(丸く育つ遺伝子を高頻度で持つ集団)が生じる。このようにして作られた、元の品種と異なる遺伝子頻度の集団が新品種です
【交配育種(交雑育種)】
集団の遺伝子の組成を改変することを目的に、他品種や野生種などと交配します。
大根などの他家受粉性の作物の場合、雑種強勢を利用することを主な目的にすることもあり、その場合は交配した1代目しか利用しません。この「交配した1代目しか利用しない」というのが、いわゆるF1品種のことです。
しかしそうではない場合、つまり交配によって得られた種子(F1品種)から10回程度の選抜&自家採種を繰り返すことによって、新たな固定品種を作出できます。ここで言う「自家採種を繰り返す」とは選抜育種と同じ意味です。
つまり選抜育種とは「バラツキのある集団から選抜によって集団のもつ遺伝子の頻度を改変する作業」であり、交配育種とは「その選抜対象の集団に対して、遺伝的なバラツキ(変異の幅を増幅する)を与えることを目的とした操作」と言い換えることができます。
したがって「固定種から改良された新品種とF1はどこが違うのでしょうか?」の答えですが。 『新品種の作出方法には大きく突然変異育種・選抜育種・交配育種の3つがあり、その中でも交配育種で得られた種子の利用を「1代目限りで止めるもの(雑種強勢の利用を目的とするもの)」をF1品種と呼ぶ』という定義が答えになると思います。
別の言い方をすれば「固定品種の開発 ≒ F1品種から自家採種する」ということなのです。
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