私がモテて当然だ
突然こんなことを言うのも非常に気が引けるのですが、僕はモテます。
女子にモテモテです。
もはや「モテモテ」だけではその凄まじさが表現しきれていないのではないかと心配になり夜も眠れなくなってしまった為、最近では「モテモテモテモテ」と自らを称しております。単純に二回繰り返すことで効果も二倍になると信じてそうしておりますが、どうやらそれですらまだ足りないということでして、最近では国連が動き始めていると風の噂で聞きました。僕の所為でお騒がせして本当に申し訳ございません。
モテ過ぎて恐縮です。逆佐亭 裕らくと申します。今日は名前だけでも覚えて帰ってください。
「まーた嘘ばっか吐きやがって、このグロメンデブがよォ」
とお思いの方もいらっしゃるかと存じますが、それはあまりにも心外ですし、あまりにも口が悪いと思います。スラム街育ちか何かですか?やめてください。やめてほしい理由は、すごく嫌だからです。
嘘ではありません。真実です。
何故なら僕にはモテない要素がないのです。
まず高身長、高収入であることが言えます。身長は185cmから190cmほどありまして、調子の良い日や良く晴れた日なんかは最大193cmまでいきます。いけるはずなんです。また月収はあまりここでハッキリとは言えないのですが、わかりやすく言うと外食に行った先で、ご飯大盛りを注文したのに並盛で持ってこられ、しかし伝票ではしっかりと大盛りの料金を取られているといった状況であったとしても
「えっ」
と一瞬だけなりますが、その直後には
「店員さん忙しそうだし……まぁいいか」
とそのまま食べて文句ひとつ言わずにお会計を済ませて帰れるくらいの非常に経済的に豊かな生活を送っております。ちょっとだけモヤっとしますが全然平気です。大丈夫です。
また、モテる人は得てして余裕があります。勿論僕も余裕があるなんてレベルではなく、もう体の奥底から溢れて染み出てくるほどの余裕がシャツやズボンの袖口から常にドロドロと流れ出てきております。まるで祟り神みたいです。
すべてにおいて余裕を持っていてモテモテモテモテなので、既婚者でありながら週8で不倫していますし、コソコソしない大胆さが素敵なので週8で文春に写真を撮られております。もうカメラマンともなあなあです。一緒にそのまま三人でご飯食べに行ったりします。プリクラ撮ったりします。
またその都度、謝罪会見もしておりますが、僕は夢を与えているだけということで世間も許してくれています。そんな調子ですので、世界中に僕の子供がいます。こないだもコスタリカで一人産まれました。コスタリカが世界地図のどの辺りにあるかもよくわかっていませんが、本当です。信じてください。
女子がピンチのときには颯爽と現れます。
気分が乗っているときなんかは高いところから薔薇を一輪ほどダーツの要領で思いきり投げたりもします。地面がアスファルトだろうがコンクリートだろうが先端が「ストッ」と刺さりまして「誰だっ!?」ってなります。
僕です。薔薇を投げたのは僕なんです。だから「僕です」って言います。すると「そうですか」って言われますので「そうです」って言います。大体そんな感じです。
基本的にはあまり寝てないってのがかっこいいので、昨日も三時間しか寝てません。テスト勉強も全然してません。遅れて登場するのもかっこいいので飲み会とかも三十分から一時間くらいは平気で遅刻します。みんな既にけっこう楽しそうだし、席ごとにグループみたいなのが出来てて輪に入りづらいし、唐揚げとか全部食べられててちょっとだけ嫌な気持ちになりますが、僕はモテモテモテモテなので余裕です。余裕が溢れ出ているからです。
さっきもそう言ったじゃないですか。
二度も同じことを言わせないでください。
もう一度言います。
二度も同じことを言わせないでください。
ファッションセンスも抜群です。オシャレ番長を通り越してオシャレ組長です。僕が服を着るのではなく、服が僕に着てもらいたがっているし、僕もそういった服しか選びません。アパレル界隈では僕のことをシャークと呼んでいるそうです。ただこの直訳してサメは、オシャレとは一切関係ないので、なんでそう呼ばれているのかはわかりません。わからないけどそのままにしています。これが余裕というものです。シャークってなんかかっこいいですし。
とにかくオシャレなのでズボンのこともボトムスとか言います。パンツとも言いたいんですけど、恥ずかしいので言えません。パンツだなんて、そんなエッチな単語。勘違いされたらモテなくなるじゃないですか。あと「あれ?さっきズボンって普通に言ってなかったっけ?」なんて感じている方はとても不粋です。粋ではないということです。僕は余裕があるのでそんなことはいちいち気にしません。そういうところだと思います。
ただ容姿が良いだけではモテません。僕なんかは女心もしっかりと把握、理解しております。学生時代には“ときめきメモリアル2”を攻略本なしで全員クリアしたという実績もあります。三人いた隠しキャラはさすがに攻略本を見ましたが、それ以外はガチです。恋愛小説や少女漫画なんかも読みながらヤキモキしております。それは女心が手に取るようにわかるが故の苦悩なのです。まぁ、ふきだしとかに書いてますからね。文字でしっかりと。そりゃわかりますよね。
モテる人というのは立ち振舞いもまた絵になります。僕なんかもそうです。一枚岩ではないのです。
基本的には女子の発言において、敢えて一回目は聞き逃します。
「あんたっていつもそうよね!!もう!!……そういうところが好きなんだけど……」
とか言われると
「ん?なんか言ったか?」
と言います。例え聞こえていたとしてもそう言います。すると「なっ、なんでもないわよ!」と頬を赤らめて言われます。言われるに決まっているのです。そういうシステムなんです。当たり前です。昔読んでたラノベなんかではよく見ましたもの。この世の理です。違うんですか?この世の理じゃないんですか?じゃあラノベが嘘を書いているとでも言うのですか?似たり寄ったりのやたら長ぇタイトルばっかつけやがってとでも言いたいのですか?角川スニーカー文庫や電撃文庫に喧嘩を売ってるんですか?僕にはそんなおそろしいことはできません。あなたすごいですね。かっこいいです。モテモテモテモテの僕が認めているのです。もっと誇っていいと思います。
さて。
世の中にはそんな僕のようにモテモテモテモテな人もいれば、まったくもってモテない、もう箸にも棒にも引っ掛からないような人もいます。モテモテモテモテな僕がこんなことを言っても説得力なんかないかもしれませんが、別にモテなくても全然いいのです。人生なんてそんなもんがすべてじゃありません。いいじゃないですか。モテなくたって。
そこそこ混んでる電車で自分の隣だけ一向に誰も座らなくてもいいじゃないですか。
女子と会話していて温泉の話になったから「今度泊まりで行っちゃう?(笑)」なんて言ったら「みんなでね!」と即答されてもいいじゃないですか。その間0.02秒とかでもいいじゃないですか。
こちらから告白はおろか、特に意識もしていない女子から「あたし、別に佐藤くんのこと全然好きじゃないよ?」なんて突然言われてもいいじゃないですか。佐藤くんって誰なんですかね。
個性が重視される時代です。みんな違って当たり前だし、だからこそおもしろいんです。人間なんてデコボコな生き物なんですよ。引っ込んでるところもあれば突き出ているところもあって然るべきじゃないですか。それでいいんです。
「そうやって言いますけどもね、所詮モテモテモテモテなあなたには我々の気持ちなんてわかるはずないですよ」
なんて言う人もいるかもしれません。
そんなことはありません。わかりますよ。僕にはあなたたちの気持ちは痛いほどよくわかる。モテモテモテモテなのに何故かわかるんです。どうしてだろう。でも、わかるんです。
女子がどうとかだけの話ではありません。
なんならそんなもんはどうだっていいのです。
あなたが輝ける場所はどこかに必ずあります。
もし今不満を感じているのなら、今が、此処が“それ”じゃないだけです。場所を変えましょう。目先を変えましょう。それはけっして逃げなんかではありません。
今日もどこかであなたを必要としている人がいます。どんなに少なくたって一人はいるんです。人ってそういうもんです。
胸を張っていきましょう。
おっと。こんなことを書いてしまうとまたモテてしまいますね。参ったな。でも仕方ないか。
何故なら僕はモテモテモテモテですからね。ええ。
ていうかね、さっきからそう言ってるじゃないですか。しつこいですね。あなたも。
何度も同じことを言わせないでくださいよ。
何度だって言ってやりますよ。
何度も同じことを言わせないでくださいよ。
御後が宜しい様で。
お金は好きです。