知らない駅では旅人のきぶん〜東急線さんぽ2/27〜

いつか行こう。
そう寝かせておいた東急線ワンデーパスの期限が今月末に迫っていた。本当は先週使うつもりでいたが、天気が思わしくなかったりして先延ばしになった。
２月も残りわずか。
今年は閏年だから１日得した気分になるけれど、元来2月は日数が少ない。
去る月、逃げる月。あれよあれよという間に過ぎてゆく。

そんなわけで強風吹きすさぶ中、おでかけを決行。まっすぐな青い空が眩しいけれど、時折目も開けられないほどの風が吹いている。
でも、行かなきゃ。
最寄り駅から電車に乗り込んだ。下る。

①綱島

食堂たんと

ひとりで食べるお昼ご飯は適当になる。
パンとコーヒーで簡単に済ませたり、残り物をかっこんだり。人の目がないと行儀も悪くなる。
ゆっくり食事をしよう。
これが目標だった。チェーン店でもファストフードでもないお店。栄養バランスも考えておきたい。
綱島駅は何度も利用したことがある。駅周辺には飲食店が点在し、食事処には困らなそう。近隣に大学もあるから学生が好みそうなお店もある。

「食堂たんと」は駅から歩いて10分くらい。
横断歩道を渡って更に奥に進んでいく。ビルの1階に佇むお店。
引き戸を開けて入店。1人なのでカウンターを案内された。
開店間もない時刻。私の他には誰もいない。カウンターに並ぶ酒瓶を眺めたり、作業する大将を盗見たりして待った。
日替わりランチプレート1200円。
ご飯にお味噌汁、メインは鶏の唐揚げ。小さなお皿に野菜の副菜が載っている。冷奴の上は赤いトマト。色鮮やかで見た目も楽しい。
順繰りに箸を進めながら味わった。お喋り相手がいないから食事に集中する。冷えた体は徐々に暖まってきた。
レジ横にクッキーの小袋が90円で売られていたので手を伸ばす。しめて、お会計は1290円。心の贅沢だ。

②雪が谷大塚

hari

大人になってから好きになったミントとスパイス。このお店は噂に聞いて、前々から行きたいと思っていた。
とはいえ、行列必至だし店休日も多い。タイミングが難しかった。
インスタで開店時間をチェック。土曜日は予約可能らしいが平日は不可。14時開店なので早めに行くことにする。

綱島〜自由が丘〜旗の台〜雪が谷大塚
最寄り駅は雪が谷大塚だが、住所表記は田園調布。13時半ごろ到着したら既に8人並んでいる。風に煽られながら文庫本を読んで待った。寒い…。
ようやく店内へ。シナモンロール専門店だがバリエーション豊富。皆さん何個も箱に詰めてもらっている。1つ550円。待っている間に品切れになったのもあった。
初回なのでプレーン・マサラチャイ・ラムフルーツをセレクト。箱を提げてほくほくと駅に戻る。キューブ型のシナモンロールはどんな味だろう。

③池上

池上本門寺

たしか短大の友達が池上に1人暮しをしていたっけ。遊びに行ったような記憶はある。でも池上本門寺は未踏だった。

今時期なら梅だろう。てっきり境内に梅が咲いていると思ったら池上梅園は別だった。

本堂までは上り階段。ふもとの小学校には河津桜が咲き誇っていた。

仁王像を通るとき「あ、うん」と唱えてしまう。阿形は始まり、吽形は終わり。始まれば終わる。これは必然。歩みを進めながら対になる言葉をいくつか思い浮かべた。

神社仏閣は独特の空気がある。
本堂に入ると肩の力がすっと抜け、芯が通る。未完のまま納められたという天井絵の竜を見上げて手を合わせた。

④洗足池

もう元は取れた。
帰ってもいいのだが、何となく水辺が見たくて洗足池で下車。

強風のためボートは中止。
さざめく水面。とても水辺に佇む状況じゃなかった。髪の毛が顔に貼り付いてめちゃくちゃになっている私を横目に、白鳥のボートたちはお行儀よく整列している。
駅向こうの商店街のカフェは閉まっていたので、池の並びにあったハワイアンカフェに入る。コーヒーとマラサダを注文。他に誰もいなかった。カウンターからミルの音がする。もしかして挽きたて淹れたて？
キャラメルビスケットが添えられた熱いコーヒーは格別だった。
文庫本の続きを読んでいたら常連さんらしき男性がやって来た。これを飲んだら帰ろうか。夕方だし。夕飯作らなきゃだし。

かくして向かい風の東急線さんぽは幕を閉じたのだった。