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【書評】atmos 本明社長 著書 “SHOE LIFE”は必読!「400億円のスニーカーショップを作った男」

日本を代表するスニーカーショップ”atmos”を創設し、今や400億円企業に育て上げた本明秀文社長が、「商品としてのスニーカー」という観点から、その半生を著した”SHOE LIFE“を発売しました。

私はもともと本明社長のフッ軽ズバズバものを言うキャラクターが好きだったので、発売日に天神のジュンク堂で購入し、その面白さのあまり2日間で読破してしまいました(ジュンク堂超ヘビーユーザーです)。
ネタバレに注意しつつ、”SHOE LIFE”のおすすめの点をご紹介したいと思います。


本明秀文氏について

引用元:GOETHE

本明 秀文(Hidehumi Honmyo)
テクストトレーディングカンパニー代表。1969年生まれ。アメリカの大学を卒業後、商社勤務を経て、1996年に原宿のジャンクヤードにスニーカーショップ「チャプター」をオープン。1997年、「テクストトレーディングカンパニー」設立。2000年、「アトモス」をオープン。2013年、「スポーツ ラボ バイ アトモス」をオープンし、現在、グループショップを含め31店舗を展開。2021 年、米スニーカー小売最大手のフットロッカー社に、3 億 6 千万ドル(約 400 億円)で会社を売却。
現在はフットロッカーアトモスジャパン合同会社のCEO兼チーフクリエイティブオフィサーとして、引き続きアトモスなどの経営を行う。

Contents

この本は序章と全4章で構成されています。
序章「起業前夜-サラリーマン人生を変えた副業」
第1章「価値を見つける-レアスニーカーを集めた2.7坪の店」
第2章「価値を創る-原宿を代表するスニーカーショップへ」
第3章「価値を文化に-世界化した原宿のスニーカー文化」
第4章「貨幣になるスニーカー-バブル、コロナ禍、そして会社の売却」

*手取り 14 万 8 千円のサラリーマンだった著者が、家族から集めた 300 万円を元手に、いかにして「スニーカードリーム」を掴んだのか?
*世界中に点在するレアスニーカーをいかにして集めて売り出したのか?
*日本の小さな小売店が、なぜ「世界初」のナイキコラボを実現できたのか?
*「並行輸入」と「正規品販売」という異なる業態どちらでも成功できたのはなぜなのか?
*どうすれば米国の大企業相手に、巨額の会社売却を成立させられるのか?
*なぜ今、「スニーカー」が世界的な熱狂を作り出しているのか? ……

型破りな生き様を通じて、スニーカーマーケット、そして商売の本質が見えてくる一冊です。

どういった本なのか

この本はスニーカーヘッズ向けに書かれたものではないと思います。

あくまで本明秀文氏という実業家が、スニーカーという商材を通して見てきた世界や、今後のスニーカー業界これまでの経験をもとに展望している、経営・商売(スニーカー分野)の本です。

こう聞くと少しハードルが高い本のように感じるかもしれません。しかし、スニーカー好きの方であれば、他の分野の経営本よりも断然読みやすいし、面白いと思います。みなさんのおなじみのエアマックスなどを通して、経営の視点が勉強できると思います。

後に400億円企業となるチャプターやアトモスが作り上げられていく過程も面白いのですが、アトモスがナイキとの別注モデルを開発できたその背景や、繰り返すスニーカーブームの波に試行錯誤する様子など、とても泥臭くそしてかっこいいコンテンツがたくさんありました。
ものの価値はどうやって決まっていくのか、お客さんは何を欲しているのか。
本明社長の弛まぬ努力が他者の共感を呼び、世界を巻き込んでいくストーリーは、非常に読み応えがあるものでした。

学んだ点

私はこの本は、「もの(=スニーカー)の価値」というものを考えるきっかけを与えてくれると思います。
特に印象深い表現が2つあります。

印象深い言葉1つ目

『商売における「値段」は株と同じで、「暫定」だということを学んだ』

本著より引用

スニーカーもそうですが、私たちは「定価」に目がいきます。
しかしモデルによっては、定価販売後にプレミア価格がついたり、定価割れするものもあります。また、お店にずっと在庫が残っていたりしてそのままアウトレットに流れるものもあります。

つまり、定価は販売時の暫定価格であり、真の価格(=ものの価値)は、その後の相場で定まっていくと解釈できます。

私はこの言葉に非常に共感しました。ものの価値は、定価という1つの要素だけではなく、需要や在庫状況、販売方法などあらゆる要素の影響を受けて決まっていくものなのでしょう。スニーカーの転売がよく話題になりますが、この視点で考えると、転売価格が実はその商品の適正価格になりうるのかもしれません。

印象深い言葉2つ目

『野生の雉(きじ)は十歩ごとに餌を食べ、百歩ごとに水を飲む苦労をしなければ生きていけない。だが、彼らは鳥かごで飼われようとは決して思わない』

本著より引用

これは中国の思想家、荘子の言葉で、本明社長が大事にしている言葉のようです。
自分で稼ぎ、苦労し、自由を得ているか?と問いかけている言葉です。

私はしがない会社員です。自分で稼ぐというよりは、会社からもらう給料で生活し、会社という鳥かごに飼われているのかもしれません。もちろん、サラリーマンは基本全てそうなのではと思いますが、自分が主体的に人生を歩んでいるか、はっとさせられる言葉でした。
みなさんは、自分の人生と照らし合わせて、この言葉をどう受け止めるでしょうか。

本を読み終えて考えたこと

私は非営利の仕事をしているので、商材を取り扱ったり時価総額を気にするというようなことに慣れていません。
しかし、スニーカーに興味を持ってからというもの、モデルによってはプレミアがつく世界に直に触れ、ものの価値を深く考えることが増えたような気がします。
そのタイミングでこの本を読んだため、特に内容が刺さったのかもしれません。

本明社長について、YouTubeで見たり、今回の本で彼の考え方や生き様を知れたことは私にとって刺激になっています。彼の自由なキャラクターやずばっとものを言える能力、業界を見るセンスなど、多く学ぶことがあります。

ここまで、本明社長や本についてめちゃくちゃ誉めており、案件かと思われるかもしれませんが、もちろんそうではありません。atmosがどうとか、本明社長へのヘイトをすべて取っ払ってでも、私はこの本をお勧めします。

ぜひ読んでもらって、あなたなりの「ものの価値」を考えてみてほしいなと思います。

それでは、楽しいスニーカーライフを!



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