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ワンランク上の演奏動画を撮影するために(アングル編)

今の時代において音楽コンテンツは映像とセットになっていると言っても過言ではありません。一人で撮ったり、バンドで撮ったり、この10年ほどで様々な形式の演奏動画を撮影してきた上で、毎回ここには気をつけているというポイントをいくつかご紹介致します。多くの場合は固定カメラでの撮影となるので、MV撮影などの映像作品とはまた少し違ったコツが必要になります。

何を映して何を映さないのか

まずは画角編。演奏動画なので楽器が映れば良いと思いがちなのですが、意外なものがあったりなかったりする事によって演奏以外の部分が目立ってしまいます。撮ってるときには気づかず、のちの編集段階で気づく事が非常に多いです。カメラに搭載されている小さい画面(あるいはスマホ画面)とPCの大画面では感じ方が異なるのも原因の一つです。しかし予め傾向を把握しておけば事前に対策をする事が可能になります。

顔を出すのか出さないのか

人によっては「恥ずかしい」「個人特定されたくない」という理由で隠したいという方もいると思いますが、それを抜きにしても顔という部位は映像としてとても存在感が大きいです。見せるなら見せる、見せないなら見せない、ここの線引きをしっかり決める事が重要です。

顔を映さないことで人間味を減らし、視聴者を楽器と演奏のみに集中させることも出来ますし、しっかり映すことでセミナーやデモンストレーションとして説得力を感じさせることも出来ます。

あとから観ると意外と気になる

例えばギターの演奏動画でアゴだけわずかに見切れている映像があったとします。個人情報として顔を出したく無いという意味では、アゴが少し見切れているくらいはなんら問題はないのですが、演奏動画においては時折チラチラ映る顔の一部に人間味を感じ、「本来見せたくないものが映ってしまった」という印象を与えてしまいます。

経験上、カメラをセットした時には顔が見切れない位置だったが、演奏に集中するあまり下を向いてしまい、やっとの思いでOKテイクが録れたのに顔の一部が見切れてしまったケースも多いです。あらかじめどういった姿勢で実際の演奏をするのか予測しておく必要があります。

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例えばこのアングル。ピントが楽器に合ってるのでまだマシですが、何かを語りたそうな口が気になります。なんとか後がけのボカシエフェクトを口元に追加することで少し回避しました。静止画だとそんなに気にしなくてもと思うかもしれませんが、動画ではかなり気になりました。カメラが固定で、顔がフレームインアウトを頻繁に繰り返すのが気になる原因とも言えます。

背景に何を映すのか

背景に何も映さないようにすれば視聴者の注目は楽器にしか行かないので、余計な心配をする必要はありません。

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しかし普通の部屋で撮る場合はなかなかそういうわけにもいかないので、映り込む前提として何がどこに写り込みば邪魔にならないのか計算しておく必要があります。

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ごちゃついている背景を椅子で隠すなども一案ですね。ミラーレス系のカメラを使えば背景が良い感じにぼけてくれるので、強調したいところとの境目をはっきりさせることが出来ます。

ドラムのアングルは難しい

前後左右に物体の多いドラムの場合は、アングルを決めるのが他の楽器より難しいです。意外とアングルのバリエーションにも限りがあるのが現実です。

ドラムで顔を隠したい場合は後ろや頭上からなどアングルが限られます。ただし正面からのアングルが一番迫力のある美味しいアングルとも言えるので、それらを両立したい場合はお面やマスクを被るしかないでしょう。

シンバルなどが顔に被る事もあります。こちらもカメラセット時には問題なくとも、演奏中にシンバルは大きく揺れますので、その分も計算した上でのアングル決めが重要です。

スネアとハイハットは必ず映したい

パーツがたくさんあるのでどこに重点を置いて映したら良いのか判断が難しいのがドラムですが、楽曲中の9割は通常のビートを刻んでいる事が多いのが事実です。つまりハイハットとスネアが完全に隠れてしまっているとドラマーは途端に地味な動きに見えてしまいます。ジャズ系のジャンルなどではハットよりライドシンバルの方が重要なパーツになるかもしれません。

顔とスネアとハイハット(もしくはライド)。この3点がしっかり映るように意識すると自ずとアングルの選択肢は限られてくるはずです。

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例えばこのアングル。顔もハットもスネアも隠れてしまっています。このように人物とドラムセット全体が入ってればいても、残念アングルになってしまうことは多々あります。カメラを置いた後にドラムやマイクを移動する事も十分にあり得ますので要注意。

俯瞰カメラは思ってるより真上気味に

頭上にカメラを置く場合は頭がスネアに被りがちです。こちらも演奏に熱中すると前かがみになったりもするので、思いの外ドラマーの頭の真上(あるいはやや手前気味)に置く必要があります。カメラスタンドをドラマーの背面に置くのでブームができるスタンドが望ましいです。

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こちらはスネアの真上くらいにセットされたGoProです。これ以上後ろにセットすると頭がスネアに被ってしまいます。足元もしっかり映っている成功例です。ドラム全体を入れるにはGoPro系、あるいはそれ並みのかなり広角なレンズが必要です。

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鍵盤も上からのアングルと相性が良いです。しかしながら立って演奏する場合はドラム以上に前かがみになり頭がかぶりやすいので要注意です。上記のショットの場合は頭の影が被っているのが気になるところでもあります。ただし常に影が動いていたので、この静止画で見るほど気にはなりませんでした。

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場合によってはやや左側に避けるのも一案です。真上ほどの美しいアングルではないものの、左足の動き、ペダルの使い分けも見る事が出来るます。ドラマーはデフォルトで左側に体が向いている事が多いので、このあたりも考慮した配置をしましょう。この場合は譜面台があったので割と顔が見える時が多いです。逆に右手側に置いていたら後頭部オンリーだったかもしれません。

足元は意外と地味

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このような足元アングルもドラムならではですが、動画で見ると意外と細かい動きがメインで、ダイナミックな動きが少ないアングルです。ツーバス連打時には使いたいアングルですが、長時間このアングルを使うことは少ないのが現実です。

足元も椅子や足そのもので打面が隠れてしまったりするのでベストポジションを狙うのが難しいアングルです。椅子を動かす事もありますし、飲み物を置いてカメラが遮られてしまう可能性もあります。また多くの場合、足元は暗いので何かしら照明を使うことをお勧めします。

偶然が面白い効果を生むことも

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ライドのあたりからGoProで覗かせたアングルです。遠近感がありとてもダイナミックなアングルですが、残念ながらクラッシュに被って顔が少し隠れてしまいました。

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しかし右手側のクラッシュを叩くと...

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顔が見える、という面白い効果が生まれました。これはなかなか狙って作れる演出ではないのでこういった偶然を生かしたアングル切り替えするように心がけています。

ドラムの振動を生かす

GoPro系のアクションカメラを独立したスタンドに取り付けるとドラムの振動を回避する事が出来ます。しかしあえてシンバルスタンドなどに取り付けることによって、より臨場感のある画を作る事もできます。

こういったDjentyな曲では定番の重ねシンバルやチャイナシンバルのスタンドなどに取り付けると、叩かれるたびにグワングワン揺れる派手な映像が撮れます。この場合には前述の「顔、ハイハット、スネア」が入るようにすることを忘れないようにしましょう。

以上の経験を踏まえて撮った演奏動画をYouTubeにたくさん投稿しているので、時系列を見ながら進化の過程も楽しんでいただけましたら幸いです。

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