性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案(211-13 LGBT理解増進法案)気になる点・素朴な疑問
各条文について気になる点を記載。結構な量となりました。参考情報として、一般個人のSNSを含め、なるべくリンクをつけています。なお、いわゆる公金チューチュー問題は、自分の中では優先度が高くないので入れていません。既存の予算(人権啓発や男女共同参画?)から差し繰りにすることで、真に必要な事業が削られないかは気がかりですが…。
■法案全文
■気になる点
【第一条:性の多様性に寛容な社会とは】
「性的少数者側も、マジョリティおよび自分以外の性的少数者の多様性を理解し受け入れる」という趣旨でよいのか?例えば女性自認者の中にはレズビアンに対し「女性として」受入を強く迫るケースがあり、レズビアンイベントに支障が発生しているとの話もある。
【第二条:性的指向・性同一性以前に性別の定義が必要ではないか】
性的指向の前に、時代の変化によりジェンダーとセックスが混在している「性別」という用語を定義した方が良いのではないか。例えば「出生時等に医学的に確認され、戸籍に続柄として記録された性別」など。
なお、英国では平等法2010における性別の定義を「生物学的性別」とする議論が始まっている。
【第二条:理解増進の対象となる「性的指向」】
・いわゆる「ヘテロセクシャル」も性的指向の多様性に含まれるか。
・性的指向の中には、人に対する性的指向がない人(アセクシャル・アロマンティック)も含まれているのか。この方々はある種の人間の「攻略欲」を刺激するようで、性暴力範疇を含むセクハラの標的になることがあり、同性愛同様に理解と配慮が必要と思われる。
【第二条2 理解増進の対象となる「性同一性」】
・「性同一性」は「性自認」と同じ意味か。
・「性同一性障害(生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているもの)」とは別なのか、同じなのか。
・「性同一性の有無あるいは程度に係る意識」とあるが、いわゆる「シスジェンダー」、また「ノンバイナリー」「ジェンダーフルイド」「Xジェンダー」等の性自認が揺れ動くタイプの方や、「性同一性障害の診断書を持っているが性別適合手術を受ける意向のない方」「診断書も手術意思もないが出生時性別とは別の性別で扱われたい方」までも包含されているのか。
【第三条:不当な差別/不当でない差別(合理的区別)の線引き】
非定型の性同一性や性的指向を有する方に対して不当な差別的取り扱いをしたり侮辱する等の行為は言語道断であるが、尊重と称して本人の要望通りにすることと誤認を招くことも避けなければならない。以下のような例が「不当な差別」にあたらないことを確認したい。
・女子大学の中には、お茶の水女子大のように未手術・未診断の女性自認者でも入学を認め実質共学化の道を進む女子大がある一方、女性の入学のみを認める大学もある。日本の女子大には「男女交際への懸念から、女子大であれば進学可とする家庭の女子」「性被害等の経験から極度の男性恐怖がある女子」への教育機会の提供という意義が未だ存在するものと考えられるが、大学の判断で女性自認者の受験資格を認めないことは「不当な差別」にはあたらない(区別である)認識でよいか。
・同様に、大学の女子寮で女性自認者の入寮を認めないことも「区別」と考えてよいか。最近ではワンルームマンションのような個室型学生寮も増えているが、国公立大学の自治寮等では風呂・トイレ共同が未だ多いと思われる。
・性被害を受けた女性への相談事業等を行う東京強姦救援センターのニュースレターでの発信がトランス女性排除的とされ、港区から補助金を打ち切られた。行政が一方的に「不当な差別を行う団体」と断定し、構成員に対し激しい叱責や非難を加える等の対応は適切ではないと考えるが、提出者の認識はどうか。
【第三条:ポリアモリー・いわゆる「妻子持ちトランス」等、限界事例の検討】
多様性尊重を目的化し、婚姻関係において不倫等の不当な行為をされた側(いわゆる「サレ妻/夫」)や子供の福祉・権利が侵害されてはならないことを確認したい。
・多様な性的指向の中には、複数の相手と同時に性的関係を持つ「ポリアモリー」が存在する。この方の配偶者が不倫による離婚を申し出た場合、性的マイノリティであることを理由に民法上の不法行為から除外されることはないと考えてよいか。(そういう主張をする不倫側弁護士は出てくるとは思うが)。
・性同一性の多様性についても、長年出生時の性別で生活し結婚生活をも継続してきたところ、突如としてカミングアウトするケースが報じられている。報じられている事例の多くでは婚姻生活が継続されたり特に係争なく離婚に至っているので美談としてとらえられているが、仮に離婚訴訟や慰謝料請求に至った場合も、本人の苦悩が配偶者や子供への責任を減免するものではないという認識で良いか。
【第五条:自治体における行き過ぎた「性の多様性(性自認)尊重」】
次項に記載するLGBT研修講師等の影響や事なかれ主義により、性自認尊重を最優先とする対応ガイドが自治体職員向けに作られている。
社会通念上、女性用トイレに女性装をした男性のような人がいるとの訴えを受ければ警察への通報等の必要な対応をすることが適切と考えられるが、「性自認の尊重」を絶対とし、訴える側を「丸め込む」対応を行政が標準化することは、犯罪機会を増やし、傍観者効果を高め、悲惨な性犯罪リスクを高めるのではないか。また、そもそも事件と考えず通報しない(警察側も被害届を受理しなくなるかもしれない)のであれば、犯罪としての認知度も低くなるのではないか。
このようなルールは「行き過ぎた多様性尊重」と考えるが、この法律で是正されるのか。
【第六条:事業主による行き過ぎた「理解増進」への懸念】
企業や自治体へLGBT研修を行う講師の中には、性自認に合った設備利用を訴える職員の希望を尊重することが最優先で、異を唱える女性職員は研修・面談対象である(当然、人事評価に影響する可能性もある)との話をしている方もいる。受け入れが妥当かどうかは本人の移行状態等により一概に判断できず、異を唱える職員、非管理職の実務リーダー、職場内の衛生委員会等も巻き込んだ意見の傾聴や丁寧な調整が必要となるものと思われる。
【第六条2・第十条3:性の多様性教育の前に尊厳を守る性教育を】
性の多様性よりも「プライベートゾーン」「No Means No」「性被害に遭っても被害者は悪くない」等の汎用的な内容を教えることが優先されるのではないか。
なお、国際セクシュアリティ教育ガイダンス等に準拠した子供向け書籍でも、海外での生体臓器移植と同様の人権侵害性が指摘されている代理出産の利用を無批判に取り上げるなど問題があり、こちらも学校教育として教える場合には精査が必要。
【第九条:学術研究】
市井のトランスジェンダー当事者である千石杏香氏は、例えば以下のような点について国内外の各種データを上げて考察している。こういった内容も調査研究の対象に入れながら、性同一性障害当事者が長年要望してきたホルモン治療保険適用等の実現に繋げてほしい。
また、性同一性障害当事者やトランスジェンダーの間で批判的に語られている、性善説で簡易に診断書を出す「一日診断クリニック」(実在するクリニックの名称も出ている)についても、厚労省等主導で、実態調査をお願いしたい。
・性別不合と発達障害との併発の多さ。
・未成年へのジェンダー肯定医療(ホルモン剤・思春期ブロッカー投与・性別適合手術)の危険性。
・性的少数者にメンタルヘルスの不調が多い、自殺企図が多い等の「定説」への疑問。
【第十一条:性的指向・性同一性理解増進連絡会議について】
・外部委員に依存せず、行政機関職員をもって構成されていることは評価できる。「その他の関係行政機関」の中に、警察庁も含まれていることを確認したい。現場レベルでの認識違いによる「配慮」により、不審者侵入の被害届を受け付けない等の事態も懸念されるため、認識を共有してほしい。
・総務省を通してとなると思うが、全国知事会や市区町村会との連携も密にしてほしい。
【附則第二条:三年以内に「手術要件合憲性裁判」等の結果が出た場合も見直しが必要】
違憲判断が出る可能性は低いとの話も出ているが、何かしらの少数意見がつけばそれを違憲と認められたかの如く誇大に訴求するのが政治目的の裁判闘争の常である(経産省トイレ訴訟も同様)。また、仮に違憲・違憲状態の判断が出れば、性別の定義について抜本的見直しが必要となる。附則に追加した方が良いのではないか。
【附則第二条:目まぐるしく変わる海外の状況、提出者議員の善意と責任感頼みではフォロー不能。フォローアップ体制や責任の所在も明確にすべき】
本法案は閣法ではなく議員立法だが、第203国会での臓器移植法に関連する質疑で、議員立法は成立後のフォローアップがなされにくいとの指摘があった。現在海外での不適切な臓器移植の斡旋が問題視されていることは報道の通りであり、本法律について責任の所在を明確化すべき(生殖補助医療法等、特に人間の生存権や根源的尊厳に影響する他の議員立法も同様)。
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