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病気

2008/08/23
(この記事は2008年のものです)


母はやっぱり「病気」なんだと、つくづく思う。

介護ホームの若い看護師さん、介護士さん、ヘルパーさん……どういう呼び名かはわからないけれど皆、実際にどこまでレビー小体病の患者を見てきただろうか。

「お母様はまだお若いですから、治す方向で私たちも…」と、一生懸命に力説してくださるのは嬉しい。「お母様も、治りたいというお気持ちはあるんです」とおっしゃる。そう、そのとおりなんです。

でもね。
母の病気は治ることはないのだ。
発症してだいたい7年で…、どんなに長くとも10年を超えて生きることはないといわれている病気だ。母の起立性低血圧などの症状が始まってから、すでに7年近く経っている。それがパーキンソン症状だとは判らなかっただけで。ましてやレビー小体病などという病気だとは、周りの医師の誰一人も判らなかった(正確には知識がなかった)だけで…。

母の自律神経はめちゃめちゃだ。昇圧剤のせいか、寝ている時の血圧はとても高い。今日は「頭が痛い」と言う。おそらく血圧が高いのだ。だけど座位にすると、たちまち血圧はどうしようもなく下がる。今日も午後のポータブルトイレへの移動をスタッフは諦めた。母の気分が悪いからだ。

母のお腹は信じがたいほど大きな音をたててぐ~ぐ~と鳴る。整腸剤と下剤を用いなければ、母は便が出ない。摂取した水分は、痰がからんだ状態で口から戻ってくる。食事もあまり食べられない。

美味しいご飯も素敵な明るいダイニングも、母には何の意味も為さない。病院と同じように、自室で食べさせてもらう。私たち娘から、もっと若い優しいスタッフに代わっただけだ。

もしかしたら案外早く、ホームから出なくてはいけなくなるのではないか、そんな予感もしている。入院が必要になるかもしれない。今まで入院していた病院で最期を迎えさせるのは、どうにも気の毒な気がする。母も嫌がっていたからだ。

それじゃあどうする? セカンドオピニオンをとって、どこか別の病院を? ブログで読んだあそこのクリニック? 等々、姉と電話でやりとりする。答えは出ない。

ここ3日ほど、母の顔は地の底を這うように、救いがたく、暗い。無表情で、ほんとうにもう、どうしようもなく、暗い。「首が痛い」と言う。「膝がまた痛み出した」と言う。「足先が固まってしまった」と言う。

ほんとうに、いっそ呆けてしまえばいいのにと、心から思う。

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