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20歳の時に知っておくべき年金の話

前期(春学期)の講義がオンライン対応となる大学が多い中、学校の授業だけでなく、普段の生活や将来の進路等に対する不安を抱えている学生さんが多いのではないでしょうか。目先の生活については、国や大学が出している支援制度を漏れなく活用することが大切ですが、一方で忘れてはいけないのが20歳からかかわってくる公的年金制度です。今回は、20歳になった時に知っておきたい公的年金のお話をお伝えします。

■20歳になるとお知らせが届く

国民年金は「日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人」が加入する制度で、「加入するかしないかを自分で選ぶ」ものではありません。2019年10月までは、20歳になると「国民年金に加入するための手続きの案内」が届いていましたが、現在は日本年金機構から「加入のお知らせ」が届きます

※すでに働いて厚生年金に加入している人には届きません。なお、20歳になって2週間ほど経っても加入のお知らせが届かない場合は、自分自身で手続きをする必要があります。

手元に届くのは「国民年金加入のお知らせ」「国民年金保険料納付書」「国民年金の加入と保険料のご案内(パンフレット)」「保険料の納付猶予制度と学生納付特例制度の申請書」「返信用封筒」です。

こうした書類について学校で教えてもらう機会がないため、書類を受取った20歳の子は「いったいどうしたらいいの?」と戸惑ケースが一般的ではないでしょうか。

■お知らせが届いたらやるべき手続き

まず、会社などに勤めていて、既に勤務先で厚生年金に加入しているのであれば、改めて手続きを行う必要はありませんし、厚生年金加入者に扶養されている配偶者(=会社員や公務員等の夫や妻に扶養されている人)も、夫や妻の勤務先に言えば必要な手続きを進めてくれます。

それ以外の人は、送られてきた納付書で国民年金保険料を支払うか、保険料の納付猶予制度・学生納付特例制度の申請書を提出するかのどちらかを選択します。2020年度の国民年金保険料は月額16,540円と、それなりの負担ですから「こんなの払えるわけない」と放置しがちですが、その場合は必ず「申請書」を提出しましょう。

■支払総額と受取総額

そもそも国民年金は、20歳から60歳までの40年間掛金(保険料)を支払うことで、老後生活を支える収入源となる老齢基礎年金を65歳から受け取れる制度です。
保険料は毎年少しずつ変化しますが、2020年度は月額16,540円。前納したり、口座振替を利用した場合の割引制度も用意されています。そして、前述のように「保険料の納付猶予」や「学生の納付特例」が用意されているため、支払うのが厳しい人は申請することで、保険料の納付を一定期間猶予してもらえます(その他に免除制度などもあります)。

仮に、今の保険料が変化しないとしたら、40年間(480ヶ月)の支払い合計は7,939,200円。これに対して、原則65歳から受け取れる毎年の年金額は、年によって多少の変化があるものの約78万円です(2020年度は781700円)。強制加入の保険制度である公的年金を損得論で考えるのはそもそもおかしいとはいえ、単純計算しても10年と少しで支払った掛金分以上を受け取れます。日本人の平均寿命は男女差がありますが、約85歳と考えても受取総額は約1,560万円。これほどの金融商品は他にありません。

将来の年金受取開始年齢が引き上げられるとか、財政破綻するんじゃないかという心配は、「確実に無い」ことが証明できない以上、ゼロにすることはできませんが、「年金なんて掛けても意味が無い」「掛けるだけ損する」というイメージとはほど遠いことはご理解いただけるのではないでしょうか。

■障害年金と遺族年金も用意されている

しかも日本の公的年金は、老後に受け取る年金(=老齢年金)だけではありません。自分が所定の障害状態になった時には障害年金がもらえますし、
亡くなった時には、遺された所定の家族に対して遺族年金が払われるので、
老後の資金準備と同時に、イザという時の保障もセットになっているありがたい制度なのです。
20歳になった時、よくわからないからといって何も手続をしなければ、こうした制度の恩恵を3つすべて放棄することになってしまいます。

■学生特例や納付猶予・免除制度の活用

先に紹介した「学生納付特例制度」「納税猶予制度」「保険料免除制度」は、単純にいうと、「私は収入が一定額以下しかないから、保険料の支払いを待ってください(免除してください)」という宣言です。

保険料の支払いが厳しい場合、これらの届け出を同時に行っておけば、「年金制度に加入している状態」で保険料の支払いを待ってくれます。
もちろん、保険料を全額納めている人と比べた不利益はあります。例えば、
20歳から22歳までの2年間保険料の猶予を受け、社会人となった22歳から保険料を掛け始めた場合、60歳までの期間が38年間となるため、その分、将来受け取る年金額が少なくなります。

ただし、社会人になってお金にゆとりが出れば、猶予してもらっていた期間の保険料を後から納めることができますし、そうでなくとも、届出をして62歳まで掛金を払うことにすれば、40年間の支払いを達成できます。

■まとめ

今回お伝えした話は、公的年金制度の一部分でしかありませんが、こうした基本的な知識さえ、年金に加入すべき年齢になっても知らない人が多いというのは、決して好ましい状況とはいえません。

社会人からはもちろん、FP資格のための試験勉強をする中でも「年金はややこしくてよくわからない」という声をよく聞きますが、幹の部分はシンプルな仕組みですし、何より自分に直接関わりのある大切な制度ですから、しっかりと理解しておきたいものです。

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