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友だち100人?できらあっ!『ひとりぼっちの○○生活』

いわゆる「日常系漫画」と縁遠い人生を送ってきたものだ……なんてことは別に全然ないのですが、考えてみると日常系って不思議な立ち位置ですよね。

出てくるキャラクターはほとんどが女性で、にもかかわらず男性の読者層が多い。明確なストーリーはなく、何かしらの要素を軸とした主要人物のゆるい日常が描かれる……うーん、そもそも説明が難しいぞ。合ってるのかな?

日常系の代名詞と言えば、やはりきららでしょう。何を隠そう、私が深夜アニメにハマったきっかけが『がっこうぐらし!』なんですが、あれはきららにしてきららにあらずな作風ですよね。最初にハマったきららがまさかのイレギュラーだったとは(笑)

だからなのかは分かりませんが、ごちうさやきんモザといった「これぞ日常系!」な作品にはそれほどハマった記憶がありません。

で、今回読んだ『ひとりぼっちの○○生活』はどうなのか? 日常系じゃないのか? これがまた絶妙な立ち位置なんですよね。

『がっこうぐらし!』ほど尖っているわけではないものの、日常系と言うにはしっかりとした目標とストーリーが用意されています。

この塩梅が個人的に気に入ってまして、最後まで楽しく読むことができました。

今回はそんな『ひとりぼっちの○○生活』の魅力を紹介します。

ひとりぼっちダメ!禁止!

今作はカツヲ先生による漫画作品。さっきまできららきららと言っていましたが、今作のレーベルは電撃コミックスNEXTです。私はこのnoteを書き始めるまできららだと思ってました。

でも思い返せば、同作者の『三ツ星カラーズ』もきららじゃないんですよね。納得。

あらすじ。主人公の一里ぼっちは、その名が表す通り極度の人見知り。そんな彼女は中学校入学早々、唯一の親友であるかいちゃんに絶好を言い渡されます。

かいちゃんが仲直りのために与えた条件は、「中学校卒業までにクラス全員と仲良くなること」でした。どうするぼっちちゃん! 彼女の友だち作り生活がスタートします。

……ぼっちちゃんぼっちちゃんって、某バンド漫画の主人公と同じ呼び名なのがややこしいですが、それは置いといて。

今作の特徴は、キャラクターの名前の分かりやすさ。
主人公の名前が一里ぼっち(ひとりぼっち)なのはまあいいとして。最初に友達になる子が砂尾なこ(素直な子)で、不登校の子は布藤香(ふとうこう)……だからそのまんまやないかい!

カツヲ先生の作品の特徴なのか? と最初は思っていたんですが、『三ツ星カラーズ』に関しては別にそんなことないんですよね。なんなんだ一体。

キャラクターの成長と魅力

主人公は名前の通り極度の人見知りなので、最初は友達を作るどころか、思うように喋ることすらままなりません。自己紹介をしようとするとテンパって吐きますし、慣れないことをすれば挙動不審で自爆します。ですが、それでも勇気を振りしぼり、少しずつ、本当に少しずつ友だちを増やしていきます。

健気なぼっちちゃんの姿に感化されて、やがて周りにも人が集まってくるようになります。一番最初に友達になるのは、先述の砂尾なこ。ぼっちの前の席の子で、その名の通り素直ないい子です。最初の友達が彼女だったのは、彼女にとってどんなに大きかったか。

その後も、クラスの副委員長(重要)の本庄アル(ほんしょうある)、海外からやってきたソトカ・ラキター、風紀委員の倉井佳子(くらいかこ)と、少しずつ交友関係が広がっていきます。

先ほど、キャラクターの名前がそのまんますぎると話しました。実は、ただ分かりやすいだけではなく、そこにはある種の「含み」があります。

例えば、「本庄アル」って名前だけ聞いたら、どう思いますか? 「いや絶対腹黒キャラじゃねえか!」って思いますよね。私もそう思ってました。

もし同じことを考えていたら、ぜひ読んでみてください。良い意味で予想を裏切るキャラクター性に心を射抜かれるはずです。


『ひとりぼっちの○○生活』1巻より
「こいつ絶対腹黒キャラだろ」→「アルちゃん……しゅき……」

同じことは倉井佳子(くらいかこ)にも言えます。
彼女は一人で強くなろうと考えていて、なかなかぼっちちゃんと友達になろうとしてくれません。しかし、ぼっちちゃんたちと過ごす内に、少しずつ心を開いていきます。

彼女が一人にこだわるのは、名前の通り自身の過去に由来します。読者としては気になるじゃないですか。でも、佳子は結構頑固なところがあって、なかなか明かしてくれません。

そんな彼女もついに過去を明かす時が来るのですが、それは本当になんてことのない、学校生活の中の一瞬なんですよね。

彼女が心を開いたのは、ぼっちちゃんが健気に努力する姿に感化されたからこそ。それが読者にもちゃんと伝わってくるので、グッとくるんです。

『ひとりぼっちの○○生活』6巻より
友達作りを通して、ぼっちちゃんは他者の心を少しずつ開いていきます。

要するに、今作の「あまりにも分かりやすすぎる名前」は、ただの一発ネタではなく、物語やキャラクターを彩るギミックとしてしっかり機能しているのです。これにはシンプルながらもよくできてきて、感心させられました。

あえて言おうぞ惜しい点

まとめると、今作はぼっちちゃんの成長と魅力的なキャラクターが見どころの作品です。

とってもいい漫画なのですが、あえて「もっとこうしてほしかった」を挙げるとするなら、男性キャラの扱いでしょうか。

今作の舞台は共学校なので、クラスには男子もいるのですが、彼らの出番がほとんどないんですよ。ようやく出てきたかと思えば、全員まとめて友達になって終了ですし。とにかく出番が少ないんです。

いや、分かってはいるんですよ。こういう日常系漫画で男性キャラが求められていないってことくらい。『がっこうぐらし!』でも男性キャラはみんな酷い目にあってたからな!
でもね、私はあえて言いたい。クラス全員と友達になる作品だからこそ、男性にも女性にも平等にフォーカスしてほしかった!

男子に関しては野球関係の名前が多いので、せめて野球回で活躍している姿を見せてほしかったな……と思ってしまうわけです。

まあ、こういう風に思っている人の方がレアなのは分かってるんですけどね(笑)

最後に苦言を呈してしまいましたが、めちゃくちゃいい漫画なのは間違いないので、機会があったらぜひ読んでみてください。アニメも配信されていますよ。

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