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アイコスイルマワン

2024.01.18 132
毎日note、俺は年々肩身の狭い想いをする喫煙者だ。
こんなものを吸い続けてもう何十年になるのか分からない。
時にはやめようと思って禁煙したこともある。
飲み会がある度にその封印はあっさりと破られた。
そう、俺は意思が非常に弱い人間でもある。。。

働き始めた頃、とある業界にいた俺は、徹夜作業が続くとほとんど咥えたばこをしたまま眠気と必死で戦っていた。
実際その頃はチェーンスモーカーだったと思う。
何よりも仕事をやり遂げた後のたばこがやけに美味く感じられ、今も何かの作業が終わる度に電子タバコの電源を押す。

電子タバコに切り替えたのはもう何年前だろうか。
最初はアイコスを吸っていたのだが、匂いがあまったるかったのと、吸い込んだ際に喉に引っかかる印象を受けて半年も経たないうちに後輩にあげてしまった。
その後、gloに切り替えた。
何と言ってもデバイスが安かったから。
次第に電子タバコのブームは到来し、会社で吸う連中もどんどん紙から電子へと変わっていった。
新しいフレーバーが出る度にみんなで吸ったりもしていた。

今の会社の営業は俺含めて3名。
全員が喫煙者だ。
部長と先輩は紙たばこがメインだが、営業車は紙たばこ禁止というお触れが出ているらしい。
gloを吸っている俺だけ勝ち組だが、上司と先輩を差し置いて吸えるわけがない。
そんな矢先、先輩がアイコスを入手した。
だから遠慮せずに車の中で吸おうと言ってくれた。
風向きが変わったのは、部長と遠出をした際に立ち寄った高速道路のPAだった。
喫煙所に行くと、アイコスの試し吸いが出来ますよということで、部長が早速くいつき、3本ほど色々吸わせて貰った後に「これください」ってその場で購入することとなった。

部長も先輩も「クリンくん、いつアイコスにするの?」という本気なのか冗談なのか分からないことを毎朝言われていじられている。
そして今日の帰りのこと。
先輩が途中の駅まで送ってくれると言い出した。
愚痴だったり、部長抜きで話したいことがあったらこうやって声をかけてくれるのが先輩のやり方。
先輩の住んでいる最寄の駅まで送って貰う直前、先輩が「この間競馬で勝ったからさ、はいこれ」と箱を渡してきた。
アイコスイルマワンだった。
上司も先輩も持っているデバイスだった。
「なんかさ、みんなで同じ形のものを持っているのもいいよね?」
と照れくさそうにしている。
おお、なんて可愛いことするんだこのおっさん。
「明日さ、二人で部長の前で何気ない顔して吸おうよ」
いたずらっぽく笑う先輩。
先輩の吸っている銘柄3個ほど買って渡してあげようと心に誓ったのであった。