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【追悼 2023年】 松本零士さんの葬儀 ーファンが向き合える最後の場ー

今年も数々の有名人が亡くなり、様々なカタチのお別れがありました。
関係者が集まり「お別れの会」などを盛大に執り行われる方もいますが、
近年は、近親者など故人のごく近しい方々のみで送り出す
「家族葬」の形も増えています。

花やバルーンで銀河鉄道999の世界観を表現…約3000人が訪れた松本零士さんの「銀河葬」

そんな中、注目されたのが、2023年2月13日に急性心不全のため
85歳で逝去した漫画家・松本零士さんの「銀河葬」
です。

2023年6月3日、会場となった東京国際フォーラムには、
親友のちばてつやさんをはじめとする親交のある漫画家や
声優、ファンなど約3000人が訪れ、花を手向けました。

会場に設けられた花祭壇は、16,000本もの花や星をイメージした
バルーンなどで彩られ、松本さんが愛猫を抱く写真の周りに
『銀河鉄道999』の鉄郎とメーテルが寄り添い、
999号に乗って地球から宇宙へと飛び立つシーンを表現していました。

さらに会場には、松本さんの在りし日を振り返る写真などのパネルや、
実際に使っていた帽子や眼鏡、筆記具などの愛用品の展示だけでなく、
会の参加者たちが松本さんへお手紙を出せるコーナーや
999号の機関室を再現したフォトブースも用意していました。

ファンの”グリーフ状態”を癒す「お別れの会」の意義

近年は、有名人の葬儀であっても、近親者のみで
執り行われる密葬や家族葬が増え、ファンが参列する
「お別れの会」や「偲ぶ会」が執り行われないケースも増えています。

そのため、残されたファンの方々からは「寂しい」
「別れの言葉を贈りたかった」という声も聞かれます。

後追い自殺が増えていることに国も注意喚起

決してあってはならないことですが、有名人の訃報を聞き、
突然のお別れに折り合いがつけられないファンの中には、
そのあとを追ってしまう方もいます。

実際、厚生労働省が作成した2023年版の「自殺対策白書」では
有名人の自殺報道が他の人の自殺を誘発する「ウェルテル効果」の
影響が考えられると指摘。自殺報道後、2~3週間にわたって
自殺者数が増加したという分析結果が盛り込まれ、注意を促しています。

「お別れの会」はグリーフケアの大切な機会の1つ

ファンが自らの命を断つ決断を下すのは、
一種の「グリーフ状態」にあるためだと、私は考えます。

グリーフとは、「深い悲しみ」「悲嘆」といった意味の言葉で、
大切な人を失った体験によって起こる心理的・身体的変化のことです。

グリーフケアをする上で最も大切なことは「感情を素直に表に出す」こと。
悲しみに向き合うことで、幸せな記憶を思い出すことにも繋がり、
自分を励ますきっかけにもなるのです。

そこで、大切な人が亡くなった現実を受け入れるために
重要な役割を果たすのが、葬儀などのセレモニーなのです。

私は、有名人が「お別れの会」を開くことの意義は
そこにあるのではないかと思います。

ファンが有名人との思い出に浸りながら、故人の世界観に触れ、同じ思いの方と悲しみを共有し、少しずつ癒し、現実を受け入れていく場を用意したという意味で、松本零士さんの「銀河葬」は、有名人の葬儀の理想形とも言えます。

葬儀の模様が報じられることの重要性

2023年1月29日に死去したロックバンド「シーナ&ロケッツ」の
鮎川誠さん(享年74)は、2月4日に「ロック葬」を開き、
最寄駅まで約4000人が長蛇の列を成した
といいます。

そして、広島一筋で19年間プレーし、球団最多の通算213勝を挙げた
北別府学さん(享年65)の葬儀は、祭壇から棺まで「カープ仕様」の
葬儀
で話題となりました。

有名人の家族の方も、最後くらいは近しい方々だけで
静かに送りたいというお気持ちもあるかと思います。
ただ、このように葬儀の模様が報じられることも、
ファンにとっては重要なグリーフケアのプロセスとなる
のです。

大切な人がこの世を去り、グリーフ状態となることは自然なことです。
もし自分が辛い状況にあるなら、心に蓋をすることなく、悲しみを打ち明け、ご自身の気持ちに向き合いながら、少しずつ整理していきましょう。

2023年に亡くなった主な著名人

1月11日 ミュージシャン 高橋幸宏(70)
1月13日 作家 加賀乙彦(93)
1月24日 野球選手 門田博光(74)
1月29日 ミュージシャン 鮎川誠(74)
2月5日 声優 貴家堂子(87)
2月13日 漫画家 松本零士(85)
2月14日  実業家 豊田章一郎(97)
2月14日 ミュージシャン 恒岡章(51)
2月15日 声優 飯塚昭三(89)
2月22日 タレント 笑福亭笑瓶(66)
2月25日 声優 千田光男(82)
3月3日 小説家 大江健三郎(88)
3月9日 政治家 扇千景(89)
3月9日 タレント 菅原初代(59)
3月11日 料理人 陳建一(67)
3月22日 俳優 団時朗(74)
3月23日 俳優 奈良岡朋子(93)
3月28日 ミュージシャン 坂本龍一(71)
4月5日 作家 畑正憲(87)
4月15日 歌舞伎役者 市川左團次(82)
5月19日 元タレント 上岡龍太郎(81)
6月9日 小説家 平岩弓枝(91)
6月16日 野球選手 北別府学(65)
6月16日 ダンサー 坂見誠二(65)
6月21日 振付師 夏まゆみ(61)
7月6日 格闘家 増井侑輝(29)
7月7日 ミュージシャン PANTA(73)
7月12日 タレント りゅうちぇる (27)
7月16日 女優 ジェーン・バーキン (76)
7月24日 小説家 森村誠一 (90)
8月5日 漫画家 佐野菜見(36)
8月10日 喜劇俳優 桑原和男(87)
8月22日 漫才師 おかゆうた(61)
8月23日 プロレスラー テリー・ファンク(79)
8月--日 音楽家 石田桃子(72)
9月8日 漫画家 寺沢武一(68)
9月13日 歌舞伎役者 市川猿翁(83)
9月15日 漫画家 土田よしこ(75)
9月28日 俳優 マイケル・ガンボン(82)
10月8日 落語家 古今亭志ん橋(79)
10月8日 歌手 谷村新司(74)
10月14日 俳優 財津一郎(89)
10月18日 歌手 もんたよしのり(72)
10月19日 ミュージシャン 櫻井敦司(57)
     ※()内は逝去した時の年齢


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