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転職1年

高エネルギー加速器研究機構を辞めて1年が経ちました。春夏秋冬メーカー研究所を経験して思うことを書きます。

研究所は事業所とは別の会社とっても良いぐらい

他のメーカーは知りませんが,うちらの研究所は各グループ会社や事業部が研究開発の依頼を有償で受けることで経営が成り立っています。つまり「研究の依頼がない」=「商品が売れない」のと同じなので研究員の人件費を維持できなくなります。維持できなくなれば,グループ会社や事業部など別に人員を吸収できるところに異動になります。研究が打ち切られた担当者が異動になるのか,全体で調整するのかその辺は私もまだ良く分かっていません。逆に自分の研究が進展して事業部からの研究依頼が増えたりするとこれは売上に相当しますから評価が上がります。

この辺のシステムに対して私の受け取り方は,ポジティブでもネガティブでもありません。私は研究が唯一の仕事だとは思っていませんので,異動になっても構いません。今回の転職でバックオフィス系,営業系,芸能界,スポーツ選手や芸術家にならなかったのではなく,実力,実績不足でなれなかっただけです。むしろ,営業(セールス)が仕事の花形だと思っています。(セールスの仕事があるならいつでもスカウト待ってますよ。大幅に給与が下がる場合は副業を認めてくださいね。)

また,高エネルギー加速器研究機構の加速器研究施設は,大学とは違い,加速器ユーザーのニーズを満たす研究開発をしており,かつユーザーが同じ敷地内にいるという面ではお客さん対応をしていたんだなと思います。その意味で,いざとなった時のプレッシャーは前職の方が厳しいです。一方,現職はお客さん対応は事業部経由ですが,研究報告書や特許などノルマが地味に負荷ではあります。また,前職ではユーザーの要求を満たすためにやることは,研究でも設計でも作業でも,研究職員という肩書きは関係なく必要であればやるのが正義ですが,うちらの研究所では「これは研究と言えるのか」という部分はかなり厳しく問われます。

分野変更のコツ

私はアカデミックにいた時から分野を結構変えていました。職としては「素粒子(学生)→加速器(前職)→パワエレ(現職)」なのですが,加速器にいた10年間でもデジタル回路→パワエレ→数値計算(HPC)と数年ずつメインの仕事を変えていました。その中でわかってきたことがあります。

知識は専門家(それをずっとやっている人)に敵わないので聞いた方が良い

自分の能力を信じるのは良いことだとは思いますが,だからこそ専門家のレビューを受けた方が良いです。現職でもそうですが,前職でもビームのシミュレーターを作り始めた時は,別組織の著名な研究者に時間をとってもらって,自分の考え方が合っているか聞きに行きました。専門家の話を聞くと無視して良い部分を気にしていたり,必要なことが抜けていることがわかるので,仕事が早く進みます。

たまに,さまざまな理由である専門家を外して,予算を取ったり,その上層の人を説得したりして,似たようなアクティビティを別の場所で始めたりする人がいますが,リソースの無駄ですし,実は大したレベルまで行ってないとか,リスクが大きいので辞めた方がいいです。その専門家を含めることで自分のアクティビティが牛耳られるぐらいなら大したアクティビティじゃないということです。

とはいえ,ある程度のボリュームは自分で作らないと活躍はできない

専門家に素直に聞くことができれば,それだけで組織でやっていくことはできると思います。しかし,人より活躍したければ,聞けばわかることを聞いたあとは,ある程度は自分で作ったほうがいいと思っています。これはなかなか同意されませんが,特に私のように後から分野に参入する人がその分野で活躍したい場合には必要だと思っています。なぜかは上手く言えません。なんとなく,荒削りでもとんでもないボリュームのもの(理論,ソフト,ハード,設計図など)を作ってきた人に対しては人はなかなか無視できないのかもしれません。

前職のこと

 実は前職でプロジェクトリーダーをやっていた装置群が実はまだちゃんと動いていません。正直,これがずっと気になっています。もちろん頻繁に前職のグループとやり取りをしているようなことはないので,現職に差し支えることはないです。
 11月末から本格始動の予定ということでなんとか頑張って欲しいところです。これが動いても私の業績になることはありませんが,動かないと私が何十億かけてゴミを作ってをそれを押し付けて逃げたことになるので。ゴミは押し付けてないという自負はありますが,ユーザーにとっては動かなきゃゴミですからね。

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