見出し画像

「わが国株価指数と関連インデックス投資への留意点」について考えてみました

わが国株価指数と関連インデックス投資への留意点

年初に当たり、当面話題となりそうなわが国株価指数と関連インデックス投資について考えてみました。代表的な株価指数としては1950年9月に算出を開始した日経平均株価、1969年7月からスタートした東証株価指数(TOPIX)があります。こうした主要株価指数を中心に株式運用のパッシブ化が進む中で多くの関連インデックスファンドが組成されています。
なぜ今回取り上げてみたかというと、次の3点に要約できます。
①株価指数連動型投資商品は貯蓄から投資への流れを進めたい金融監督当局の意向にも合致し、「国策に売りなし」という相場格言があるように投資家サイドからも安心感を持てる投資先になる。
②日経平均株価など主要株価指数連動型ファンドへの投資は投資初心者にもなじみやすく、諸コストが安い等のメリットがあることから長期投資に向いている。
③東京証券取引所(東証)の市場再編でTOPIXの見直し議論が高まってくるとみられる。

まず、日経平均株価とTOPIXの相違点から見ていきます。大きな違いは計算方式、構成銘柄数、業種構成で、計算方式には特に注意が必要です。日経平均株価はNYダウ平均株価と同じ価格平均の指数で、時価総額加重平均方式のTOPIXとは異なります。米国S&P500やナスダック株価指数も時価総額加重平均方式です。世界的にみると後者の比率が圧倒的に高く価格平均の株価指数は少数派となっています。

日経平均株価は採用銘柄225社の価格平均として算出(みなし額面、除数調整後)されます。その中でも平均株価であるがゆえにファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、ファナックなどといった値嵩株の株価変動の影響を大きく受けます。個別銘柄で比重の高い上位10社で見ると、株価変動への影響が実に30%以上になりますのでやや特異な指数といえます。

このように日経平均株価は市場全体の動きを正確に反映しにくい側面を併せ持つため、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとして主要年金基金は、日経平均株価でなく配当込みのTOPIXをベンチマークとしています。一方で、外国人投資家はMSCI指数など海外の株価指数を比較対象とします。

次に、NT倍率の推移をみていくことにします。日経平均株価(N)をTOPIX(T)で割った数字で、両指数間の強弱を示す尺度になっています。日本株のインデックス連動型商品に投資するうえで商品選択に役立つうえに、裁定取引業者やヘッジファンドといった株式市場関係者からも注目されています。

このNT倍率はリーマンショック直後の2008年10月に10倍割れで大底を付けた後に2020年末には15.1倍まで上昇しました。過去10年間のチャートを見るとほぼ右肩上がりで、中央値の12倍近辺から上限として意識されやすい14倍を突き抜けた形状となっています。
日経平均株価の方が上昇した背景として以下の3つの要因を指摘できます。
①日経平均株価の上位構成銘柄にはグローバル展開している企業が相対的に多く、国内の主要機関投資家のみならず海外投資家の投資対象となりやすい。
②2018年7月までは日銀の日経平均連動型のETF(上場投信)購入による日経平均採用値嵩株に対するインパクトが大きかった。
③TOPIXではマイナス金利で株価の長期低迷している銀行株の構成比が相対的に高い。
今後のNT倍率見通しとすると、銀行株の行方に加えて値嵩株の株価に影響する海外投資家の売買動向が鍵を握るとみられますが、日経平均先物のポジション等から判断すると当面下がりそうにもなさそうです。

なお、日銀のETF購入に関しては昨年11月に作成したnote「日本株の需給見通し」で触れています。日銀は2018年の7月に購入方針を変更し、TOPIX連動型ETFを以降主に買い付けることにしました。さらに、2020年3月の日銀政策決定会合では年間購入額の上限を従来の6兆円から12兆円に引き上げました。ですが、上限を引き上げた直後を除くと月間購入額は目立って増えていません。

東証による市場再編によるTOPIX構成銘柄への影響も注目されています。東証は2022年4月に市場区分の再編を行う予定です。現在の4市場体制から3市場に括り直しを目指しています。東証は市場再編に合わせてTOPIX改革にも取り組みます。一定の基準を満たさない企業をTOPIXから除外。パッシブ投資家などへの影響を考慮し、新基準への移行は2025年1月までにかけ段階的に実施する方針です。

代表的な海外の株価指標とすると、米国NYダウ平均株価(30銘柄)とS&P500(500銘柄)に加えてドイツのDAX指数(30銘柄)、イギリスのFTSE100指数(100銘柄)が思い浮かびます。明かに、わが国の経済規模、株式時価総額等を勘案すれば、TOPIX構成銘柄は言うに及ばず日経平均採用銘柄でも多すぎです。TOPIXコア30という時価総額・流動性を勘案した株価指数は既にありますが、投資魅力ある指数にしてもらいたいものです。

話は長くなりましたが、最後に株価指数連動型投資商品の選定ポイント・留意点を整理し今回のnoteを終わりたいと思います。
①株価指数連動型投資商品は貯蓄から投資への流れに合致する。当面、日経平均株価がTOPIXに比べて強そうだが計算方式・違いをを理解したうえで投資すべきである。
②投資をする場合には、当然ながら信託報酬をはじめとする諸コストの低いファンドを選択した方がリターン面で優位になる。さらに、設定時期が新しい方がコスト面で有利になる傾向がみられる。投資初心者はもとより長期投資を目指す投資家に向いている。
③株価指数連動型ETF(上場投資信託)に投資するケースでは、売買高や売買代金が大きいファンドに投資した方がマーケットリスクを抑えられる。

参考書籍は「相場を大きく動かす『株価指数』の読み方・儲け方」(菊池正俊著、日本実業出版社)、「投資のプロはこうして先を読む」(金子治好者、日本経済新聞出版社)、「株がわかる!日経平均公式ガイドブック」(日本経済新聞出版社)、「敗者のゲーム」(チャールズ・エリス著、日本経済出版社)などです。「相場を大きく動かす『株価指数』の読み方・儲け方」は株価指数に関する知識を深めたい方には参考になります。

Malon, 6th. Jan. 2021

p.s. 次回、一本ワンコイン記事を書いてみようと思います。
少し長い記事を予定...
ステイホームのお供に宜しければ購読頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?