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「国内中小型株投資に勝機があるのか」について考えてみました

国内中小型株投資に勝機があるのか

最近、マスコミでは国内中小型株投資の魅力が紹介されているのをよくみかけます。その背景は、次の3点に要約できます。
①2000年前後を境として大型株優位の時代が終焉し成長力のある中小型株式の時代が到来した。
②中小型株にはカバーするアナリストが少ないこと等に起因する大型株対比の情報格差が明らかに存在する。その分だけ株価がディスカウントされる傾向にあるために、投資チャンスは大きい。
③10月半ばに東証マザーズ指数が14年ぶりの高値を更新した。
そこで、今回のnoteではほんとうに国内中小型株投資で勝機を見出せるのか、また、投資する場合の注目点及び留意点等を考えてみました。

国内中小型株に投資する投資商品とすれば、中小型株投信が代表的な投資商品になります。中小型株投信に関する一般的な定義はありませんが、時価総額が2000億円以下の企業が投資対象で東証マザーズ、ジャスダック市場といった新興市場に公開する銘柄だけでなく東証1部、同2部上場企業も投資対象とする投資信託になります。

まず、運用成績が注目されている幾つかの代表的な国内中小型株ファンドの運用成績をみると9月までの過去5年間で50-60%前後のリターンといったところで、東証大型株インデックスの上昇率を大きく上回ります。こうした中小型株ファンドの中でも純資産残高が比較的大きく、運用が安定している投資信託に見られる特色として対象市場を新興市場だけに限定せず幅広く銘柄選択していることを指摘することが出来ます。換言すると、中小型株投資といっても安定的に超過リターン(アルファ)を挙げるためには東証1部、同2部まで幅広く投資対象とした方が運用成果を挙げやすいのは明らかです。

ところで、11月初旬に放映されたテレ東の人気番組「モーサテ」では、国内中小型株投信のリターンを紹介しています。今年9月末時点で過去5年間のパフォーマンス上位3投信のリターンは160~280%強にも達したそうです。同期間の東証小型株インデックスの上昇率が20%台半ばですからリターンの高さには目を見張るものがあります。

最も運用成績が良かったファンドの組み入れ銘柄をみると、在宅需要を享受できるITや医療関連といったコロナウイルス禍でも力を発揮できそうな東証マザーズ上場の企業のウエイトが高く、こうした銘柄群が運用向上に寄与していることを確認できます。新興市場では、2-3月のコロナショック以降の短期間で株価が3-5倍に上昇する企業も散見されています。高パフォーマンスに関しては、幸運にも恵まれ実力以上の結果を残せたとも言えそうです。

ところが、足元の新興市場では主要銘柄の株価に割高感が意識され始めています。さらに、東証1部銘柄の業績回復に対する期待感が少しづつ高まりつつあります。こうした事実は、昨年同様に株価の下落局面では売りたくても売れない新興市場の流動性リスクに備える時期が迫っていることを示すサインではないでしょうか。

次に、国内中小型株に投資する際には日銀によるETF買付と東証1部の市場区分の見直しに注意が必要です。日銀のETF購入は2010年にスタートし10年になります。金融市場や経済の安定を目的とし、この間順次購入額が引き上げられました。今年3月の日銀政策決定会合では年間購入額の上限が従来の6兆円から12兆円にも引き上げられています。直近の保有残高はというと35兆円、東証1部時価総額の6%にも及んでいます。主にTOPIX連動型のETF(上場投資信託)を購入する結果、東証1部中小型株の株価形成に絶大な影響を及ぼしています。東証1部の時価総額対比で10%程度までは買い続けるという見方もあるため、当面東証1部上場銘柄の株価下支え要因とみてよさそうです。

一方で、東証は2022年4月をメドに現在4つに分かれている市場区分を「プライム」、「スタンダード」、「グロース」(いずれも仮称)の3市場体制にくくり直します。その際、投資家に大きく影響するのがTOPIX構成銘柄の見直しになります。新TOPIXでは流動性やガバナンスなどの状況を基準に採用銘柄が見直されるとみられます。現在のTOPIX構成銘柄は2100社を超えており、資本効率の悪い会社も多く含まれています。米国S&P500指数のように500銘柄程度に絞りこめば、投資先として優良な企業が残り指数としての投資魅力を取り戻すことにつながると考えます。

この市場区分の見直しは短期的には、東証1部上場の中小型株の株価には逆風になります。ですが、少し長い時間軸で見れば、オーナー経営者が多い中小型株式のガバナンスのレベルアップや資本効率の改善、分配方針の適正化を通じて企業価値の向上に作用するプラスの側面も見逃せません。

最後に、今回の国内中小型株投資に関する結論を記して今回のメモを終わりたいと思います。国内中小型株に投資するのは、投資家サイドから見ると当然のことながら魅力的にみえます。ですが、エントリー時期はもちろん関連投信の選択が難しいという課題が常に付きまといます。エントリータイミングでは中小型株投信の設定が相次いでいる時節、言い換えると中小型株が人気化している時期を避けるべきという点は重要な経験則です。

最も大事な国内中小型投信のファンド選びでは、以下の4点がポイントと考えます。
①5年程度のトラックレコードが確認でき、モーニングスター等の評価機関から評価の高いファンドを選択する。
②純資産残高が少なくても100億円以上である。
③FM(ファンドマネージャー)の銘型選択スタイルが共感でき、リスクリターンから見て妥当な運用となっている。
④投資対象市場を限定していない。
個人的には、価格変動が大きく多くの銘柄に対処する必要があるために中小型株専門の助言会社を使っていた方が少数のFMで運用するよりも運用が安定して超過リターンを叩きだしているように思えます。

今回のnoteの参考文献は、代表的な国内中小型株投信の月報・目論見書、「『すごい会社』の見つけ方~ずば抜けた結果の投資のプロだけが気づいていること」(苦瓜達郎著、幻冬舎新書)、「中小型株投資のすすめ」(太田忠著、日本経済新聞社)などです。「『すごい会社』の見つけ方」は興味深い中小型株投資のための新書です。購読をお勧めします。

Malon, 11. 17. 2020

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