自分と向き合う練習

　練習、練習。ミュージシャンは練習が仕事のようなものです。（細かく言えば、楽器の移動や搬入、ライブの企画や集客、スケジュール組みなどありますが）ライブはご褒美と感じるのは私だけでしょうか？でも練習も楽しいものです。毎日電車に揺られ通勤して、週5日で働くよりも全然楽しい仕事です。

　皆さんはどんな練習をしていますか？練習にも色々あります。でも練習しているのならみんな向上したいというのが、共通の思いなのではないでしょうか？

　最近、ありがたいことに生徒さんが増えたので改めて練習について考える機会が増えました。いくら練習しても上手くならないな、と思う方も少なくはないのではないでしょうか？

　私も実際、学生時代はたくさんの時間を練習に費やしていました。夜の12時近くまで練習室にこもっていた日も多かったです。でもその間にめちゃくちゃ上手くなったかといえばそうではありません。私の場合、練習時間が長ければ長いほどいいと思ったらそうではありませんでした。何を練習していたかというと、ひたすら弓でシマンドルというコントラバスのエチュードを弾いていました。でもふと気がつくと弾きながらぼーっと何か別のことを考えているではありませんか。もう、ずっと弾きすぎて手を自動的に動かしている状態。これでは時間がもったいないですね。

　その頃の私を大きく成長させてくれたのは、間違いなく、たくさんの上手いプレイヤーと演奏してきたからだと思います。長時間の練習ではなかったのです。特に初めの頃は自分よりもレベルが高いミュージシャンに勇気を出して声をかけて一緒にセッションしてもらっていました。あの頃の衝撃を味わえたのが大きな成長につながったのではないかと思います。

　NYに移ってからはさらにモンスター級のプレイヤーがウヨウヨする環境にいましたから、刺激の嵐でした。あんな憧れの人がジャムセッションのホストしてるの？！NYってすごい！！という感じ。もちろん、実践でもかなり鍛えられました。

　でもその後、もっとギュ〜ン！と成長した時期がありました。それはなんと、一人目の子供を産んだ後。素晴らしいコーチで出会えて、週一でレッスンをとりつつ、オーケストラで週2日のリハにつき一ペースでコンサート。毎月新しい曲を３曲ほどこなしていた時でした。

　そんなありがたい環境に自分の身を置けたことももちろんですが、その時は絶賛子育て中でもあったので時間は今までのようにあったわけではありません。本番までに今までに出会ったことがないくらい大変な曲を弾けるようになるためにはどうしたらいいのか。その間も赤ん坊は「おかあさ〜ん！！」と泣いています。でも限られた時間の中でもこんなに大きく成長できる理由があったのです。

　それは、意味のある練習。目的のある練習。左手のことをしっかり習得したかったら、とりあえず右手のピッキングのことは考えない。左手のフィンガリングやシフティングに集中する。逆に右手のことをしっかりおさえたかったら左手はそこまで意識はしない。一つのことに集中して練習を始めました。するとどうでしょう。着実に結果が出るではありませんか。

　私はベーシストなので、課題もたくさんあります。ベーシストなので一番大切にしているのは、ベースライン作りとグルーヴ。コンピング（伴奏）ですね。もちろん、ウッドベースという楽器は大きいし、フレットがないものだから操るのが本当に大変です。弦をおさえている手が少しでもずれると音程が狂ってしまうし、力というか、コツもいる楽器です。楽器の弾き方を習得できるようになるにはかなりの時間を要すると思います。そこで必要なのが、クラシックなどのエチュードを弾く。目的を持って。例えば、今はボウイングのことは置いておいて、左手のシフティングをしっかりおさえよう、とか。それをゆっくり、ゆっくりのペースで。

　グルーヴ感はめちゃくちゃグルーヴィーなバンドや自分の好きなレコードに合わせて自分がそのバンドの一員になったつもりで演奏する。一人でもグルーヴできるように今度はメトロノームを使った練習。メトロノームをスイングさせるつもりで、など色々こちらもありますね。音の並べ方の研究もできるし。

　そのあとはソロの練習。こちらも奥が深いです。こちらは書くと長くなるのでまた次回のお楽しみということで。

自分の個性を伸ばしてくれる、自分に合ったコーチを探してみる。

練習はなんとなくやらない。

費やした時間があなたを上手くさせてくれるわけではない。

一つ一つのことを意識して、一つづつ丁寧に。

必ずゆっくりから。

成功した！「やった〜！」で練習を終える。

ということが、長年私が音楽と向き合ってきて大事だなと思うことです。

質問やレッスンのお問い合わせなどございましたら、

よろしくお願いします。

kurikotsugawa@gmail.com