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職人さんとの出会い

 今日は楽器の話。

NYからの引越しをするにあたって、大変なのが荷物の移動。断捨離して結構ミニマリストまでいかないけど、それに近い暮らしをしていたけど、家族4人分ともなると結構な量のものになります。引越し屋を頼んでNYから荷物を運ぶと何千ドルにもなってしまうのです。しかも船便だと到着するのに3ヶ月くらいかかるのかしら?とりあえず、何千ドルもかけて蓋を開けてみたら「何このガラクタ?こんなガラクタに何千ドルもかけていたなんて〜!」となるらしいです。それを聞いて、我が家は段ボール5個だったか6個に抑えてあとはスーツケースに入るだけ詰め込んでの帰国。でも一番大変だったのが私たちの楽器。ダンボールに入りませんからね。夫婦揃ってミュージシャンだとギター3本、エレベ一本、アコベ(ウッドベース)一本。これでもだいぶ少ない方ですが。

 ウッドベースを運ぶのにこんなに大変なことになるとは思ってもいませんでした。今の時代、ツアーではレンタルの楽器を使うのが主流なので誰も持ち運んでいる人がいなくて、ケースにおよそ3千ドル+運送料に1、2千ドルは軽くかかります。友達がいなかったら自分の大切なベースを持って帰れませんでした。すごーくいろんな友達が動いてくれて、感謝です(涙)。この話を始めたらまた長くなるので、今日はこの辺で。

 ウッドベースは私たちより一足先に貨物用の飛行機に乗って出発していきました。でも問題が、貨物便。飛行機は上空1万メートルの高さを飛ぶのでもちろん空の上は極寒。そんな最悪なコンディションにデリケートな楽器が耐えられるのかが、物凄く心配でした。もちろん、ベースはブリッジの部分がちょこっと動いただけてセッティングが大きく変わってしまうし、その裏にはベースの心臓部分、魂柱があります。魂柱もブリッジも接着剤でくっついているわけではないので、なんかの拍子にカタン!と倒れてしまう可能性も。カタンとなったら随所に問題が生じてきます。更にベースは木製なので大きな気温差でヒビが入る可能性も。乾燥にも弱い楽器だからヒビが入るかも。それどころか運悪く楽器のことを全くわかっていないガサツな人(アメリカからだとかなりの確率)が楽器を扱ったら。。。

 でも無事に長旅を終えて、大変面倒臭い関税を通り抜けてベースちゃんがフォークリフトに乗って姿を現した成田での再会は感動的でした。でも心配なのは中身のベースの状態。開けてみたところ、クラックもないし、ネックも変わった様子はなさそうだし、ブリッジも、幸い大きな変化はありませんでした。ほっ。でもやはり気候の違いも影響してか、かなり弾きづらくなったので(前置きがかなり長くなりましたが)、楽器の調整をお願いしに行くことに。

 行ったお店は所沢市にある『絃バス屋』さん。この辺にベース屋さんあるらしいよ、今度行ってみよう!ってなんとなく噂で聞いて知っていたので、帰国してすぐに別件でのぞいてみたのが最初の出会い。線路沿いにあるお店の中には囲炉裏があって、アンティークの扇風機が回る雰囲気のいいお店。

オーナーは国産ベースメーカー、オリエンテで20年修行をされたのち、独立されたようで本当にいろんなことを研究されているし、いろんなことを教えてくださりました。楽器のことに疎い私は恥ずかしくなりました。今回は魂柱がやはりずれていたのでその調整とブリッジの調整をお願いしたのですが、まるで生まれ変わったかのような伸びのある、品がある音にしてくださいました。それがまるで魔法のようで。入念にベースを見てくれて音がどういう風に楽器を使って流れて、聞こえてくるのかをよく研究していて、新しい情報に「なるほど」と感心しっぱなしでした。

一番びっくりしたのが、ブリッジのセッティングの時。「ここから音を逃がしてあげたら音の伸びが長く、一定になる」と言って削ってもらうと、音がツーとすごく伸びやかでキレーに伸びるようになりました。それからさらにびっくりしたのが、最終セッティングの際に「もう少しここの音欲しい?」と聞かれて「はい」と答えると、カサカサカサと軽く紙やすりで削ってくれて「どう?」って言われ、弾いてみると音が全然変わるんです!!あの技はすごいです!まさに紙(神)技!いつも弾いている曲が美しく響くようになりました。弾いていてとても気持ちがいい。ベースも喜んでいるだろうな。

 こんなに楽器のことを知っている人はいるのでしょうか?私が出会ったことないだけなのか。音が出る原理をよく知っていて要望にも答えてくれる、素晴らしいまさにベース職人さんです。彼はまた、アンプやピックアップなどの電気系のことも詳しくてベーシストにはまさにありがたい存在です。私も愛用しているPhil Jones BassのBass Cubというベースアンプもご自分で改造したようで、試しに弾かしてもらってびっくり。アンプの特色は生かされ、あの小さなボディでかなりの音量が出る頼もしいスーパーCubに変身していました。私も機会があったら改造お願いしようと思っています。

 新しい地でこんなに頼もしいベース職人さんに出会えてとってもよかったです。テレビでも目にしますが、日本には素晴らしい職人さんがとてもたくさんいますね。アメリカはガサツでダイナミックであんまり小さなことはこだわらない感じですが(それはそれの良さもある)、日本の細かいロボットには到底できない職人さんの腕は本当に素晴らしいです。そんな彼らの期待に応えられるように私もいいプレイヤーになっていこうと思います。

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