2022年3月 18きっぷの旅1 上諏訪から飯田線
春は18きっぷ。本当は、いつもやってる仙台と郡山の行きつけの居酒屋巡りへ出かけるつもりだった。が、直前に久々の大地震。余震も怖いが、何より列車がダイヤ通りに走ってくれないと、行くに行かれず。結局、それぞれのお店と宿には、お見舞いがてら、また日を改める旨の連絡を入れた。と、そちらは大丈夫でしたかと思いもよらぬ心遣い。参ったなあ。必ず、近いうちに行きますから。
ということで、急遽、中央線を西へ向かうことにした。高尾から小淵沢行き。たいがいロングシートなのが寂しい。
この日は全国的にぐっと冷え込んだ。東京から神奈川へさしかかると雪が降り出した。
昼は軽めに。高尾駅で買ったハムカマ。ハムとカマンベールチーズを挟み込んだパン。
神奈川から山梨へ入ると、雪は消えた。どころか、勝沼まで行くと、桜の花が咲き始めているではないか。
小淵沢で、乗り換え待ちの間に、駅前の酒店へ。日本酒とワインの品揃えが素晴らしい店だった。これから旅が始まるので、車中のお供に小さなワインと缶入りハイボールだけ買った。どちらも山梨県産。
駅前の喫茶店でコーヒーでも、と思ったら、皆さん考えることは同じようで、満員だった。駅の待合室で温かい甘酒を飲んだ。
14時半過ぎ、今日の投宿地、上諏訪着。駅の足湯に浸かる人たちがいた。
今年は御柱の年、駅構内にこのようなものも展示されている。まもなく里曳きも始まる。前々回の御柱は、勇壮な木落としを間近で観た。木遣りの美声が忘れられない。
表は雪が降り続けている。スノーブーツを履いてきて良かった。宿は4年前の冬に初めて泊まって好印象だった、民宿すわ湖。勝手知ったるで、裏口から入ってしまった。
長髪のお兄さんが迎えてくれたが、彼のことは覚えている。彼は当然おぼえてやしないが。2階の部屋に案内される。
部屋は風呂もトイレもついていないが、その分格安。早速、露天風呂へ。他の人が入っていなければ貸切で利用できる仕組み。露天といっても屋根がついているので、雪が降っていても平気。いい湯加減。赤い和傘に降り積もる白い雪を見ながらの温泉はサイコー。
帰りがけ、内湯もハシゴ風呂。
風呂上がりは大相撲を見ながら、ビールタイム。地元柏出身の力士たち、琴勝峰も隆の勝もどちらも勝った。ま、隆の勝は今場所は絶不調だけど。18時半、夕食は大広間で。今日はお客は7名かな、全員一人客。食卓の間はアクリル板で仕切られている。卓上には、塩焼きの海老、そして名物、すき焼きのセット。まずはビール。安い料金なのに、食事は一度に全部並べず、席に着いてから、まずはホタルイカとマグロ刺身を運んでくれた。次に、熱々の茶碗蒸し。これはチーズをトッピングして洋風アレンジ。そうこうしてる間に、セルフですき焼きを始める。牛肉は赤身をたっぷり。これで、四分の一ぐらいかな。
おっと、揚げたて天ぷらが運ばれた。リンゴが入ってるから、注意してねとお兄さん。中には嫌がる人もいるとか。えー、こりゃ洒落てるのに。
お酒をもらいましょうか。もちろん、真澄。ご飯と味噌汁はセルフで、好きなときに温かい状態でいただけるのも好ましい。
風呂上がり、一服した後、再び露天風呂へ。よく温まってから、羽毛布団の上に毛布を重ねたホカホカお布団で眠った。
翌朝は快晴。朝風呂。外は冷え込みが厳しそう。朝食もあらかじめセットされたものの他に、焼きたてのサバとヨーグルトを持ってきてくれる。
チェックアウト後、諏訪湖を眺めに湖畔へ。
今年は御神渡りは現れなかったようだ。最後は4年前とのこと。ただ、1月の数日間は全面結氷はしたそうな。
駅前の昭和の香り漂う喫茶店、談話室サスナカで、BGMのジャズを聴きながらコーヒーをいただいた。
さあ、今日はちょいと長時間乗車になる。上諏訪9時22分発、飯田線経由豊橋行き。7時間ちかく同じ鈍行列車に乗り続けることになる。
鉄道マニアの皆さんは、一気に乗り通すのはもったいないとばかりに、本数が極めて少ない飯田線を、途中のいわゆる秘境駅に降り立つために、上り線、下り線を行ったり来たりを繰り返す、通称「箱ダイヤ」で丸々1日費やすという。まあそこまでは付き合いきれません。列車は3両編成、ロングシートではなく、クロスシート。前の北海道鉄道旅行の際に用意したエアクッションが今回も活躍。さほど混み合ってはいないが、鉄ちゃんらしき姿もちらほら。彼らの正体はすぐばれる。途中駅に停車すると、すぐにホームに出て写真を撮ろうとするから。車内アナウンスで車掌は何度も、停車時間が短いので外へ出ないでと放送していた。
小さな駅でも少しずつ乗り降りはある。
こちらは駅より、山が気になる。左手に座ったのは、南アルプスを見たいから。お、甲斐駒のアタマが左に、右に仙丈ヶ岳が見えるぞ。
左手には中央アルプスだあ。
早めにランチタイムとするか。昨日、小淵沢で買ったモンデ酒造の白ワイン。けっこういける。
上諏訪駅には正式な駅弁はない。が、キオスクに近くの料理店が作るお弁当が置かれていて、それを手に入れてきた。諏訪弁 ほいじゃねェ。諏訪の美味しいものを詰め合わせてある。鯉の甘酢あん、諏訪ギョウザ、御柱巻きという凍み豆腐煮、信州ポーク味噌焼などなど。もちろん野沢菜も入ってる。呑兵衛、大喜びだわ。
ワインだけじゃ収まらず、同じく小淵沢で買った、ハイボールも開けた。富士北麓蒸留所という富士河口湖町で醸造するウィスキーのようだ。これもいいねえ。左車窓には南アルプスの南部の峰々、吞んだり食べたり眺めたり、忙しい忙しい。このあたりまで南下すると、雪は気配すらない。
車窓には天竜川。そろそろ、秘境駅が続々登場するようだ。外に出るな、のアナウンスがまたまた繰り返される。
そして、伊那小沢という駅に着くと、ホーム脇の桜が満開近い。へえ、すごいねえ。鉄ちゃんらはこういうのはどうでもいいみたい。すれ違った車両のドア部に立っていた鉄のおっちゃんは、こちらの車両の鉄を見つけると、イヨッと手を上げ、連帯を求めていた。あちゃー。
三河川合駅から、可愛らしい女性がひとり乗り込んできた。と、ホームにいるお祖母ちゃんかな、窓辺に寄ってきて名残惜しそうに手を振っている。こういうのはいいな。
いつのまにやら、駅名も伊那○○というのから三河○○に変わっていて、愛知県に入っていた。三河大野駅は大きな製材所が隣接している。
豊橋が近づくにつれ、乗客も増えてきた。定刻、16時16分、豊橋駅到着。ああ、疲れた。